SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランナーの栄養学② 水を飲めばいいわけじゃない。脱水・脚攣り・補給ミスの話

COACH MIKE — ランナーの栄養学|②/04

マラソン後半で脚が攣る。暑い日に急に動けなくなる。水を飲んでいるのに脱水っぽい。ランナーの補給トラブルは、単純な「水不足」だけでは説明できません。水分、塩分、糖質、そして“吸収できなくなる身体”について整理します。

「水を飲んでいるのに攣る」はなぜ起きるのか

マラソン後半で脚が攣る。

ロングランの終盤で急に動けなくなる。

暑い日に頭がぼーっとする。

これは、多くのランナーが経験します。

すると、多くの人はこう考えます。

「水分不足かな」

もちろん、それも一つの原因です。

ただ実際には、ランナーの補給トラブルはもっと複雑です。

水分だけではありません。

塩分。糖質。発汗量。胃腸の吸収能力。気温。練習不足。オーバーペース。筋疲労。

いくつもの要素が重なります。

特に市民ランナーは、「喉が渇いたら飲む」という感覚で走っていることが多いです。

でも、マラソンや長時間運動では、それでは遅れることがあります。

なぜなら、身体が強く喉の渇きを感じる時には、すでに脱水が始まっている可能性があるからです。

しかも厄介なのは、汗をかいても「ちゃんと補給できている」とは限らないことです。

水だけ大量に飲む。スポーツドリンクだけに頼る。暑さで胃が止まる。後半にジェルが入らなくなる。

こうした問題は、実際のレースで非常によく起きています。

だから補給は、「何を飲むか」より前に、まず「どう身体が反応するか」を知る必要があります。

喉が渇いた時には、もう遅れている

ランナーの水分補給で大切なのは、「喉が渇く前に飲む」という考え方です。

これは暑い日のマラソンでは特に重要になります。

運動中、身体は汗を使って体温を下げています。

つまり、汗は単なる水分ではなく、身体を守る冷却システムです。

問題は、その汗によって大量の水分と電解質が失われることです。

特に暑く湿度が高い環境では、汗の量は大きく増えます。

Coachマイクがよく話すのは、汗は「見えている量」だけではない、ということです。

日本の夏やシンガポールのような高温多湿では汗が見えやすいですが、乾燥した環境でも身体は大量に汗をかいています。

ただ、乾燥していると蒸発しやすいため、自分では気づきにくい。

その結果、「そこまで汗をかいていない」と勘違いしやすくなります。

そして、気づいた時にはかなり脱水している。

スポーツ科学では、体重の2%程度の脱水でもパフォーマンス低下が起きると言われています。

ただ、Coachマイクはいつも現場感覚も大事にします。

研究上の数字だけではなく、「自分がどう感じるか」「どこから急に動けなくなるか」を見る。

実際のレースでは、数字より先に脚が重くなる感覚や集中力低下として現れることもあります。

暑い日の後半でフォームが崩れる。急に脚が前に出なくなる。補給したいのに胃が受け付けない。

こういう状態は、かなり前から身体に負担が積み重なっていた可能性があります。

だからこそ、補給は「後から慌てて入れる」ではなく、「先に崩れないように少しずつ入れる」という考え方が重要になります。

脚攣りの原因は塩分不足だけではない

ランナーが脚攣りを経験すると、多くの人は「塩分不足だった」と考えます。

もちろん、それも一因です。

汗を大量にかけば、ナトリウムを失います。

そのため、暑い環境ではスポーツドリンクや塩分補給が役立つことがあります。

ただ、脚攣りはそれだけでは説明できません。

Coachマイクがよく指摘するのは、「疲労による攣り」です。

つまり、筋肉そのものが疲れ切って正常にコントロールできなくなる状態です。

特に多いのが、週末だけ長く走る“週末ランナー”です。

平日は忙しくて走れない。

その分、土日に急に長時間走る。

すると、筋肉が長時間の負荷に慣れていないため、終盤で過剰に収縮し、痙攣のような状態になりやすくなります。

つまり、脚攣りは単なるミネラル不足ではなく、筋疲労と補給不足が重なった結果として起きることが多いのです。

だから、塩タブレットだけでは解決しないケースもあります。

フォーム。筋持久力。暑熱順化。補給。ペース配分。

全部が関係します。

Coachマイクが面白いのは、「攣ってから対処するのでは遅い」と言うところです。

例えばロングラン中、15分おきに少し止まって軽くふくらはぎを伸ばす。疲労が爆発する前にリセットする。

これはエリートの感覚というより、長く動き続けるための現実的な工夫です。

多くの市民ランナーは、「止まったら負け」と考えます。

でも、本当に大事なのは、止まらずに最後まで動けることです。

マラソン後半で身体が吸収できなくなる瞬間

レース後半になると、「飲みたいのに入らない」という状態になることがあります。

これはかなり危険なサインです。

Coachマイクがよく例に出すのが、シンガポールのような高温多湿レースです。

暑さの中で走り続けると、身体は冷却を優先します。

その結果、血流が筋肉や皮膚へ集中し、胃腸への血流が減ります。

すると、補給したものをうまく吸収できなくなることがあります。

つまり、後半にジェルを入れても、身体が処理できない。

水を飲んでも吸収できない。

これが起きると、一気にパフォーマンスが落ちます。

脚攣り。失速。吐き気。集中力低下。

そして、「急に終わった」感覚になります。

Coachマイクがシンガポールのレースで話していたのは、計画上は5kmごとに約200ml補給する予定だった、ということでした。

しかし、実際には暑さで吸収がうまくいかず、最終的には大きく脱水し、ハムストリングも攣ってしまった。

これは、市民ランナーにもよく起きます。

だから、補給は「レース本番だけ考える」のではなく、練習で試す必要があります。

どのジェルが合うのか。

どれくらいの濃さなら胃が受け付けるのか。

水と一緒に飲むのか。

暑い時にどれくらい必要なのか。

これを確認しないまま本番に行くと、後半で身体が補給を拒否することがあります。

Coachマイクがいつも言うのは、練習でできないことは、本番でもできないということです。

スウェットテストで「自分の汗」を知る

ランナーの補給で重要なのは、「みんなと同じ量を飲む」ではありません。

なぜなら、汗の量は人によって大きく違うからです。

体格。筋肉量。気温。湿度。ペース。発汗体質。

同じ条件でも、汗の量はかなり変わります。

そこで役立つのが、スウェットテストです。

方法はシンプルです。

  • 走る前に体重を測る
  • 30〜60分走る
  • 途中では飲まない
  • 終わったら汗を拭いて再度体重を測る

減った体重が、その時間で失った水分量の目安になります。

例えば、30分で400g減っていれば、1時間で約800ml失う計算になります。

もちろん、気温や湿度によって変わります。

でも、このテストをすると、「自分がどれくらい汗をかくタイプなのか」がかなり見えてきます。

Coachマイクは、こういう“自分の身体を知る作業”をとても重視しています。

プロの真似をする前に、自分の身体を理解する。

それが補給では特に大切です。

例えば、汗が多い人が水だけを大量に飲むと、ナトリウム濃度が下がりすぎることがあります。

逆に、全然飲まなければ当然脱水します。

だから、自分の発汗量を知ることは、レース戦略の一部になります。

補給は「少しずつ頻繁に」が基本

ランナーの補給で失敗しやすいのは、「まとめて入れようとすること」です。

喉が渇いたから一気飲み。

エネルギー切れを感じたからジェルを連続投入。

これでは、胃腸に負担がかかることがあります。

特に暑い日は、身体が吸収しきれません。

だからCoachマイクが勧めるのは、少しずつ、頻繁にです。

一度に大量ではなく、小分けに入れる。

喉が渇く前に飲む。

後半に慌てない。

この積み重ねが、レース終盤を変えます。

また、水だけではなく、状況によっては電解質や糖質も必要になります。

特に90分を超える運動では、エネルギー補給も重要です。

ただし、糖質を入れれば何でも解決するわけではありません。

暑さで吸収できなくなることもある。

胃が弱い人もいる。

だからこそ、「自分に合う補給」を探す必要があります。

補給戦略は、トップ選手だけの話ではありません。

むしろ、市民ランナーほど重要です。

なぜなら、走っている時間が長いからです。

4時間、5時間、6時間と動き続けるなら、水分とエネルギーの管理は避けて通れません。

最後に、Coachマイクの考え方を一言でまとめるならこうです。

補給は「気合い」で乗り切るものではなく、準備するもの。

喉が渇く前に飲む。

攣る前に対策する。

そして、本番前に必ず練習しておく。

それが、後半でも走れるランナーを作っていきます。

COACH MIKE’S NOTE

暑いレースでは、「飲めば大丈夫」と思っていても、身体が吸収できなくなる瞬間があります。僕自身、シンガポールの高温レースで、予定通り補給できずに大きく脱水し、脚攣りを経験しました。

だから今は、レースだけではなく、普段のロングランから補給を練習しています。何を飲むかより、「自分の身体がどう反応するか」を知ることが大切です。

 

この記事を書いたコーチ

Mike Trees マスターズ世界チャンピオン コーチ

Mike Trees(7×マスターズ世界チャンピオン)

長年にわたりコーチ、トレーナー、そしてアスリートとして活躍。スポーツ科学の知見と実戦経験を融合させ、ランニングパフォーマンス向上に取り組んできた。

自身もマスターズアスリートとして競技を続けながら、年齢を重ねても走り続けるためのトレーニング、栄養、回復、身体づくりを発信している。

アジアの高温多湿な環境に適した、高機能なコンプレッションウェアとランニングギアの必要性を感じ、SA1NTと共にプロダクト開発を行っている。

SA1NTでは、ランニングを単なる距離やタイムだけでなく、身体の使い方、日々の習慣、回復、そして長く続けるための考え方まで含めて伝えている。

Mike Treesからのメッセージ

「私はアスリートとして、コーチとして、そしてスポーツ科学者として、常にスポーツに対するホリスティックなアプローチを取り入れてきました。トレーニング、レース、リカバリー、栄養、そして身体のケア。そのすべてが、長く走り続けるために重要です。」

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