SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランナーの栄養学① 食べすぎで走れなくなるランナーたち

COACH MIKE — ランナーの栄養学|①/04

ランナーは「走るために食べる」つもりが、いつの間にか“食べすぎて走れない身体”を作ってしまうことがあります。糖質、朝ラン、空腹、そして80/20ルール。コーチマイクの実体験から、ランナーの食べ方を考えます。

ランナーは食べすぎているのか?

ランナーはよく食べます。

それ自体は悪いことではありません。走るためにはエネルギーが必要ですし、トレーニング後には回復のための栄養も必要です。

ただ、ここで一つ考えたいことがあります。

本当に、その量のエネルギーが必要だったのか。

多くの市民ランナーは、練習を頑張っているから食べても大丈夫、という感覚になりやすいです。朝に走った。週末にロングランをした。だからパンも、パスタも、スイーツも、少し多めに食べていい。

もちろん、楽しみとして食べることは大切です。食事は人生の一部です。マイクも「完璧な食生活だけが正解」とは言いません。

でも、問題はそこではありません。

問題は、それが毎日の習慣になってしまうことです。

走っているのに体重が落ちない。練習量は増えているのに身体が重い。朝起きるとだるい。ロングランの後に食欲が止まらない。こういう状態は、トレーニング不足ではなく、食べ方のリズムが崩れているサインかもしれません。

Coachマイクがよく言うのは、ランナーはトレーニングメニューには細かいのに、食事になると急に感覚的になる、ということです。

今日はインターバルだから何本走る。ロングランは何分。ペースはどれくらい。そこまでは考えるのに、食事になると「走っているから大丈夫」で終わってしまう。

でも、身体は正直です。

どれだけ良い練習をしても、毎日の食べ方が身体を重くしていれば、走りは変わりません。

糖質は悪者ではない。でも、使い方を間違えやすい

まず最初に整理しておきたいのは、糖質そのものが悪いわけではない、ということです。

ランニング、とくに強度の高い練習やレースでは糖質が重要なエネルギー源になります。スピードを出す。坂を上る。ラストで粘る。こういう場面では、糖質が必要です。

問題は、必要な場面と必要ではない場面を分けていないことです。

例えば、30〜45分の軽いジョグ。ゆっくりした朝ラン。疲労抜きのイージーラン。

こういう練習の前に、毎回しっかりパンやシリアル、甘いドリンク、エネルギーバーを入れる必要があるでしょうか。

もちろん、人によって違います。低血糖になりやすい人、朝に弱い人、長時間走る人は別です。

でも、多くのランナーは、身体にエネルギーが残っている状態でも「走る前だから食べなきゃ」と思い込んでいます。

Coachマイクはこの考え方を変えました。

昔のマイクは、かなり高糖質の食生活でした。朝はシリアル、トースト、パンケーキ、マフィン、甘いもの。ランナーらしい食事に見えるかもしれませんが、本人の感覚では常に空腹になりやすく、体重管理にも苦労していました。

そこで食事を大きく変えました。

砂糖を減らす。加工食品を減らす。パンやパスタ、シリアルを日常の中心から外す。代わりに、野菜、卵、魚、ナッツ、アボカド、納豆、良質な脂質、必要に応じた米や芋を使う。

これは「糖質を完全にゼロにする」という話ではありません。

糖質を、必要な時に使う。

この感覚です。

ロングラン、レース、強度の高い練習、暑い日の長時間運動。こういう場面では糖質が役に立ちます。

でも、毎日なんとなく糖質を入れ続けると、身体は常に糖質に頼るようになります。

その結果、少し空腹になるだけで走れない気がする。朝ラン前に食べないと不安になる。ロングラン後に甘いものが止まらない。

これは意志が弱いからではありません。食べ方のリズムが、そういう身体の反応を作っている可能性があります。

Coachマイクが変えた朝食と食べ方

Coachマイクの栄養の話が面白いのは、理論だけではなく、自分の身体で試してきた話が多いところです。

昔の朝食は、いわゆるランナーらしい高糖質の朝食でした。

シリアル、トースト、フルーツ、パンケーキ、マフィン、甘いコーヒー。運動する人なら普通に見える食事です。

でも、Coachマイクはそこから変えました。

朝食は、アボカド、卵、魚、納豆、野菜、ナッツ、オリーブオイル、キムチ、トマト、時には少量のさつまいも。こうした食事に変えていきました。

これを聞くと、日本のランナーの中には驚く人もいると思います。

「朝からそんなに脂質を摂って大丈夫?」

「ご飯やパンを食べないと走れないのでは?」

そう感じる人もいるはずです。

ただ、Coachマイクが重視したのは、単純に脂質を増やすことではありません。

血糖値を大きく上下させないこと。

加工された糖質を減らすこと。

長く満腹感が続く食事にすること。

この3つです。

ランナーは「エネルギーを入れる」という言葉をよく使います。でも、エネルギーを入れることと、血糖値を急に上げることは同じではありません。

甘いものや精製された糖質を多く食べると、短時間では元気になったように感じることがあります。しかし、その後に眠くなる、だるくなる、また甘いものが欲しくなる、という流れが起きやすくなります。

ランナーにとって本当に欲しいのは、一瞬のエネルギーではなく、安定したエネルギーです。

Coachマイクが食事を変えて感じた大きな違いは、空腹感が暴れなくなったことです。

以前は、食べてもすぐにまた何か食べたくなる。練習後に強い空腹が出る。体重を落とそうとすると、常に我慢している感覚がある。

でも、食事の内容を変えると、満腹感が長く続きやすくなった。体重管理がしやすくなった。朝の軽い運動も、毎回食べなくてもできるようになった。

これは、ランナーにとって非常に大きな変化です。

朝ラン前に食べない、という選択

朝ラン前に食べるべきか。

これは多くのランナーが迷うテーマです。

答えは、練習内容によって変わります。

Coachマイクの考え方では、短くて軽い朝の有酸素運動であれば、必ずしも食べる必要はありません。

特に、寝起きの身体は一晩の断食状態にあります。この状態で軽い有酸素運動をすると、身体は脂質をエネルギーとして使う感覚を学びやすくなります。

いわゆるファスティング(絶食)ランです。

ただし、ここで大事なのは、何でも空腹でやればいいわけではないということです。

例えば、朝からインターバルをする。長時間のロングランをする。暑い中で高強度の練習をする。前日の食事が少なかった。睡眠不足。体調が悪い。

こういう場合は、無理に空腹で走る必要はありません。

ファスティング(絶食)ランは、根性トレーニングではありません。

目的は、身体に脂質利用の感覚を覚えさせることです。だから、強度は低めでいい。ペースも遅くていい。むしろ、頑張りすぎない方が目的に合っています。

例えば、朝に30〜45分のイージーランをする。終わった後に、タンパク質、野菜、良質な脂質を含む朝食を食べる。

こういう形なら、食べすぎを防ぎながら、身体のエネルギーシステムを育てることができます。

一方で、レース前やポイント練習前は別です。

速く走る日には糖質が必要です。長く走る日にも糖質が必要です。レースでは補給の練習も必要です。

つまり、食べないことが正解なのではありません。

練習の目的に合わせて、食べる量とタイミングを変える。

これが大事です。

80/20ルールが続けられる栄養戦略になる

栄養の話になると、多くの人は極端になります。

糖質は全部ダメ。脂質は全部ダメ。お酒は絶対ダメ。甘いものは一切ダメ。パンは悪。米は悪。サプリを飲めば解決。

でも、そういう食事は長く続きません。

Coachマイクが大切にしているのは、80/20ルールです。

80%は身体に良い選択をする。残り20%は楽しむ。

この考え方は、ランナーにとって現実的です。

毎日完璧を目指すと、少し崩れた時に全部どうでもよくなります。ケーキを一つ食べた。友人とピザを食べた。旅行先でクロワッサンを食べた。

それだけで「もう失敗した」と感じてしまう。

でも、身体は一食で決まりません。

大事なのは、日常の平均です。

普段は加工食品を減らす。砂糖を減らす。野菜を増やす。タンパク質をしっかり摂る。良質な脂質を使う。必要な場面では糖質を摂る。

その上で、時々好きなものを食べる。

この方が、長く続きます。

Coachマイク自身も、完璧な人間ではありません。甘いものが好きだし、コーヒーも飲む。旅先ではクロワッサンを食べる日もある。レース後に楽しむこともある。

でも、そこで終わらない。

次の日にまた戻る。

この「戻れる力」が、栄養戦略ではとても大切です。

ランニングも同じです。

一回練習を休んだからといって、走力が全部なくなるわけではありません。大事なのは、また戻ることです。

食事も同じです。

ランナーが今日から見直したいこと

では、今日から何を変えればいいのでしょうか。

いきなり食生活を全部変える必要はありません。

まずは、自分がどれだけ「習慣的に糖質を食べているか」を見ることです。

朝はパン。昼は麺。間食は甘いもの。練習前にエネルギーバー。練習後に菓子パン。夜は白米を多め。さらにデザート。

一つ一つは普通に見えても、合計するとかなり多くなることがあります。

次に、練習の種類に合わせて食べ方を変えてみる。

軽いジョグの日は、必要以上に食べない。ポイント練習の日は、しっかりエネルギーを入れる。ロングランの日は、補給も練習する。レース前は、普段試していない食べ方をしない。

そして、食事を「我慢」ではなく「調整」と考える。

ランナーの栄養は、ダイエットだけではありません。

走れる身体を作ること。回復できる身体を作ること。年齢を重ねても動ける身体を作ること。

そのための毎日の選択です。

マイクの考え方を一言でまとめるなら、こうです。

糖質は使うもの。振り回されるものではない。

走るために食べる。

でも、食べすぎて走れない身体にはしない。

そのバランスを見つけることが、ランナーの栄養学の第一歩です。

COACH MIKE’S NOTE

昔の僕は、シリアル、パン、マフィン、パンケーキのような高糖質の朝食が普通でした。走っているから大丈夫だと思っていました。でも、常に空腹で、体重管理も簡単ではありませんでした。

今は、砂糖や加工食品を減らし、野菜、魚、卵、ナッツ、アボカド、必要な分の米や芋を使うようにしています。完璧ではありません。僕も80/20で楽しみます。でも、普段の食事が変わると、走りの感覚も変わります。

 

この記事を書いたコーチ

Mike Trees マスターズ世界チャンピオン コーチ

Mike Trees(7×マスターズ世界チャンピオン)

長年にわたりコーチ、トレーナー、そしてアスリートとして活躍。スポーツ科学の知見と実戦経験を融合させ、ランニングパフォーマンス向上に取り組んできた。

自身もマスターズアスリートとして競技を続けながら、年齢を重ねても走り続けるためのトレーニング、栄養、回復、身体づくりを発信している。

アジアの高温多湿な環境に適した、高機能なコンプレッションウェアとランニングギアの必要性を感じ、SA1NTと共にプロダクト開発を行っている。

SA1NTでは、ランニングを単なる距離やタイムだけでなく、身体の使い方、日々の習慣、回復、そして長く続けるための考え方まで含めて伝えている。

Mike Treesからのメッセージ

「私はアスリートとして、コーチとして、そしてスポーツ科学者として、常にスポーツに対するホリスティックなアプローチを取り入れてきました。トレーニング、レース、リカバリー、栄養、そして身体のケア。そのすべてが、長く走り続けるために重要です。」

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