SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランナーの栄養学③ 「体重を落とせば速くなる」は本当か?

COACH MIKE — ランナーの栄養学|③/04

「体重を落とせば速くなる」は本当なのか。答えは、半分正解で、半分危険です。ランナーに必要なのは、ただ軽くなることではなく、走るための筋力とエネルギーを残したまま、自分に合ったレース体重へ近づくこと。Coachマイクの実体験から、体重と走力の関係を考えます。

体重を落とせば本当に速くなるのか

ランナーなら、一度は考えたことがあるはずです。

「もう少し体重が軽ければ、もっと速く走れるのではないか」

これは、かなり現実的な話です。

ランニングは、自分の身体を前に運び続けるスポーツです。

だから、余分な体重が少なければ、同じペースで走るために必要なエネルギーは少なくなります。

特にマラソンやハーフマラソンのように長い距離では、この差が積み重なります。

1kmでは小さな差でも、21km、42kmになると大きな差になります。

Coachマイクも、レース体重についてはかなり現実的に考えています。

エリートランナーは、練習メニューだけでなく、体重管理や栄養管理も競技力の一部として考えています。

つまり、速くなるためには、走る練習だけでは足りないことがあります。

ただし、ここで一番大事なのは、体重を落とすこと自体が目的ではないということです。

目的は、速く、強く、安定して走れる身体を作ることです。

体重が減っても、筋力が落ちたら意味がありません。

体重が減っても、毎日疲れていたら意味がありません。

体重が減っても、ポイント練習で力が出なくなったら、ランナーとしては失敗です。

だから「体重を落とせば速くなる」という言葉は、かなり慎重に扱う必要があります。

正しく言うなら、こうです。

余分な体脂肪を落とし、筋力とエネルギーを残せれば、走りは変わる可能性がある。

この違いは、とても大きいです。

軽さは武器。でも、軽ければいいわけではない

ランナーにとって、軽さは確かに武器になります。

坂道では特にわかりやすいです。

身体が重いと、同じ坂でも心拍数が上がりやすく、脚への負担も大きくなります。

レース後半でも、体重が重いほど着地の衝撃は積み重なりやすくなります。

ただし、軽くなればなるほど良い、という話ではありません。

ここを間違えると、ランナーは危険な方向に進みます。

体重を落とすことばかり考えて、食べる量を極端に減らす。

糖質を必要な場面でも入れない。

タンパク質が足りなくなる。

睡眠の質が落ちる。

疲労が抜けない。

怪我が増える。

こうなると、体重は落ちても走力は落ちます。

Coachマイクが重視するのは、単なる体重ではなく、身体の中身です。

同じ60kgでも、筋肉があり、しっかり回復できて、ポイント練習で力が出る60kgと、ただ食べずに落とした60kgはまったく違います。

ランナーが目指すべきなのは、細い身体ではありません。

走れる身体です。

そのためには、体脂肪を落としながら、筋肉を守る必要があります。

ここで重要になるのが、タンパク質です。

ランナーは糖質や脂質の話ばかりしがちですが、タンパク質が足りないと、回復も筋肉の維持も難しくなります。

特に年齢を重ねたランナーほど、筋肉を守る意識が必要です。

20代の頃と同じように食事を減らして体重を落とそうとすると、筋肉まで落ちやすくなります。

その結果、軽くなったのにスピードが出ない。フォームが安定しない。疲れやすい。

そういう状態になることがあります。

軽さは武器です。

でも、軽さだけを追うと、武器ではなく弱点になります。

Coachマイクが体重を落として感じた変化

Coachマイク自身も、体重管理にはかなり向き合ってきました。

一時期、体重は約69〜70kg、体脂肪率も高めの状態でした。

そこから食事を大きく見直し、体重を約62kgまで落としました。

単に食べない減量ではありません。

砂糖を減らす。

加工食品を減らす。

パン、パスタ、シリアルのような小麦系食品を日常の中心から外す。

野菜、魚、卵、ナッツ、アボカド、納豆、良質な脂質を増やす。

必要な糖質は、米やさつまいも、根菜などから入れる。

こういう形で、身体のエネルギーの使い方を変えていきました。

Coachマイクが面白いのは、「カロリーを数え続けた」という話ではないところです。

むしろ、食べる質を変えた。

空腹に振り回されにくい食事にした。

糖質を完全に悪者にするのではなく、必要な場面で使うようにした。

その結果、体重が落ち、身体が軽くなり、走りの感覚も変わった。

もちろん、これはすべての人に同じように当てはまるわけではありません。

体質も、練習量も、年齢も、生活リズムも違います。

ただ、Coachマイクの実体験から学べることはあります。

それは、体重管理は短期の我慢ではなく、食べ方の習慣を変えることだということです。

短期間だけ無理をして体重を落としても、レースが終われば戻ります。

でも、普段の食事の質が変わると、身体は少しずつ変わります。

疲れにくくなる。

空腹でイライラしにくくなる。

練習の目的に合わせて糖質を使えるようになる。

そして、自分にとって走りやすい体重が見えてくる。

これが、レース体重を考える上で大事な視点です。

ランナーがやってはいけない減量

ランナーが体重を落とそうとする時、絶対に避けたい減量があります。

それは、走るためのエネルギーまで削る減量です。

例えば、朝食を抜く。

昼も軽くする。

夜も炭水化物を完全に抜く。

その状態でポイント練習もロングランも続ける。

一時的には体重が落ちるかもしれません。

でも、身体は回復できません。

筋肉も守れません。

免疫も落ちやすくなります。

そして、ある日突然、走れなくなります。

ランナーにとって一番怖いのは、体重が増えることではありません。

練習を継続できなくなることです。

疲労が抜けない。

怪我をする。

モチベーションが落ちる。

食欲が爆発する。

こうなると、減量どころではありません。

また、極端な糖質制限も注意が必要です。

低強度の有酸素運動や体重管理には、糖質を控える戦略が役立つことがあります。

しかし、スピード練習やレースでは糖質が必要です。

Coachマイクも、ケトン食や低糖質の考え方を取り入れながらも、速い練習には糖質が必要だと考えています。

つまり、食べないことが正解なのではありません。

練習の目的に合わせて食べることが正解です。

軽いジョグの日と、インターバルの日。

休養日と、ロングランの日。

レース前と、通常の平日。

同じ食べ方で良いはずがありません。

体重を落としたいランナーほど、この使い分けが必要です。

レース体重は“数字”ではなく“状態”で見る

レース体重という言葉を聞くと、多くの人は具体的な数字を探します。

「自分は何kgがベストですか?」

「体脂肪率は何%がいいですか?」

もちろん、目安はあります。

でも、最終的には数字だけでは判断できません。

なぜなら、ベストな体重は、その人の筋肉量、骨格、年齢、競技レベル、距離、生活環境によって変わるからです。

同じ身長でも、5kmを速く走る人と、ウルトラマラソンを走る人では必要な身体が違います。

HYROXやスパルタンのように、走るだけでなく筋力も必要な競技なら、単純に軽ければ良いわけではありません。

だから、レース体重は「数字」だけではなく「状態」で見る必要があります。

朝起きた時に身体が重すぎないか。または軽すぎでないか。

練習で力が出るか。

ポイント練習の後に回復できるか。

睡眠の質は落ちていないか。

イライラや強い空腹が続いていないか。

怪我が増えていないか。

これらを見ながら、自分にとっての走りやすい体重を探していく。

Coachマイクが伝えたいのは、体重計の数字に支配されることではありません。

むしろ、数字を一つの情報として使うことです。

体重はデータです。

でも、走りの感覚もデータです。

疲労感もデータです。

睡眠も、食欲も、怪我の有無もデータです。

すべてを合わせて見ることで、自分に合ったレース体重が見えてきます。

安全にレース体重へ近づくために

では、ランナーはどうやって安全にレース体重へ近づけばいいのでしょうか。

まず大事なのは、急がないことです。

レース直前に一気に落とそうとすると、走力も落ちます。

体重管理は、レースの数週間前に慌てて始めるものではありません。

日常の食習慣として、少しずつ整えるものです。

最初に見直すべきなのは、砂糖と加工食品です。

甘い飲み物、菓子パン、スイーツ、朝食シリアル、加工されたスナック。

これらは、気づかないうちに摂取量が増えやすい食品です。

次に、タンパク質をしっかり摂ること。

魚、卵、肉、大豆製品、ヨーグルトなど、自分に合う形で毎食少しずつ入れる。

タンパク質は、筋肉を守るためにも、満腹感を保つためにも重要です。

そして、糖質は完全に抜くのではなく、使うタイミングを考える。

ロングランの日、ポイント練習の日、レース前後には糖質が必要です。

一方で、軽いジョグの日や休養日は、食べすぎないように調整する。

このように、トレーニングに合わせて食事を変えることが、ランナーらしい栄養戦略です。

最後に忘れてはいけないのが、80/20ルールです。

毎日完璧を目指す必要はありません。

80%は身体に良い選択をする。

残り20%は、楽しむ。

この方が、長く続きます。

レース体重は、短期的な我慢で作るものではありません。

走る生活の中で、少しずつ整っていくものです。

Coachマイクの考え方をまとめるなら、こうです。

体重を落とすのではなく、走れる身体に整える。

その結果として、自分に合ったレース体重に近づいていく。

これが、長く走り続けるランナーに必要な栄養の考え方です。

COACH MIKE’S NOTE

僕自身、体重が重かった時期もありました。そこから砂糖や加工食品を減らし、食事の質を変えることで、身体は大きく変わりました。ただ、僕が伝えたいのは「ただ軽くなれ」ということではありません。

ランナーに必要なのは、筋力、回復力、エネルギーを残したまま、走りやすい身体に近づくことです。体重計の数字だけではなく、練習で力が出ているか、疲労が抜けているか、自分の身体の反応を見てください。

 

SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランナーの栄養学④ サプリより先にやるべきこと

この記事を書いたコーチ

Mike Trees マスターズ世界チャンピオン コーチ

Mike Trees(7×マスターズ世界チャンピオン)

長年にわたりコーチ、トレーナー、そしてアスリートとして活躍。スポーツ科学の知見と実戦経験を融合させ、ランニングパフォーマンス向上に取り組んできた。

自身もマスターズアスリートとして競技を続けながら、年齢を重ねても走り続けるためのトレーニング、栄養、回復、身体づくりを発信している。

アジアの高温多湿な環境に適した、高機能なコンプレッションウェアとランニングギアの必要性を感じ、SA1NTと共にプロダクト開発を行っている。

SA1NTでは、ランニングを単なる距離やタイムだけでなく、身体の使い方、日々の習慣、回復、そして長く続けるための考え方まで含めて伝えている。

Mike Treesからのメッセージ

「私はアスリートとして、コーチとして、そしてスポーツ科学者として、常にスポーツに対するホリスティックなアプローチを取り入れてきました。トレーニング、レース、リカバリー、栄養、そして身体のケア。そのすべてが、長く走り続けるために重要です。」

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