コンプレッションウェアは強ければ強いほど良い?中村敬斗選手の「着圧ソックスに穴」の理由をスポーツ科学で解説

コンプレッションウェアは強ければ強いほど良い?中村敬斗選手の「着圧ソックスに穴」の理由をスポーツ科学で解説

スポーツ科学で考える「ちょうどいい着圧」とは

中村敬斗選手の着圧ソックス改造から学ぶ

サッカーワールドカップで、日本代表の中村敬斗選手が着圧ソックスに穴を開けてプレーしていたことが話題になりました。

おそらく中村選手は、そのソックスの着圧が自分には強すぎると感じ、自分のパフォーマンスを最大限に発揮するために圧力を弱めようと判断したのでしょう。

もちろん本人に理由を確認したわけではありません。しかし、この出来事は一つの疑問を投げかけます。

コンプレッションウェアは、強ければ強いほど良いのでしょうか?

コンプレッションウェアは世界で多くのスポーツ選手に使用されています。

着圧により、脚のブレを抑え、安定感を高め、静脈が心臓に戻る血液循環を促進してよりよいパフォーマンスが期待できるとされているからです。
スポーツ科学の視点から考えると、その答えは意外にも「単純ではない」のです。

コンプレッションウェアの本当の役割

コンプレッションウェアは、ただ筋肉を強く締め付けるためのものではありません。本当に大切なのは以下の3つです:

  • 脚のブレを抑えること
  • 筋肉の中で起きているエネルギー生産を邪魔しないこと
  • 酸素や栄養、ラクテートなどの物質交換を妨げないこと
重要:「支える」ことと「締め付ける」ことは同じではありません。

この理由を理解するために、まず筋肉がエネルギーを作る仕組みを見てみましょう。

筋肉はどうやってエネルギーを作っているのか?

「筋肉がうまく働く」とは、どういう状態か

400mをかなり速いペースで走ったとき。最初は脚が軽く動いていても、途中から急に脚が重くなり、フォームが崩れ、最後の直線では思うように身体が動かなくなることがあります。あの状態では筋肉は十分に機能しているとは言えません。

筋肉が働き続けるためには、ATPというエネルギーが必要な分だけ作られ続ける必要があります。ATPは筋肉が実際に動くための直接のエネルギーです。

しかしATPは大量に蓄えられているわけではなく、運動中に絶えず作り直されています。

ATPを作る3つの方法

① ATP-PCr系

スタートダッシュなど瞬発的な動きでは、筋肉内のクレアチンリン酸を利用します。

② 解糖系

高い強度で走ると糖を素早く分解してATPを作ります。このときラクテートが作られます。ラクテートは疲労物質ではなく、別の筋線維や心筋で再利用される重要なエネルギー源です。

③ 有酸素系

長時間の運動では酸素を使って糖や脂肪からATPを作ります。

ランニング中の物質交換

つまりランニング中の筋肉では、ATP-PCr系・解糖系・有酸素系が状況に応じて切り替わっています。そして速く走り続けるためには、以下の物質が筋肉内でスムーズにやり取りされる必要があります:

  • 酸素
  • ラクテート
  • 二酸化炭素
  • 水素イオン

ここにコンプレッションウェアが関係してきます。

コンプレッションウェアが安定感を生む理由

走るたびに筋肉・脂肪・皮膚は細かく揺れています。このブレが大きいと、筋肉は前へ進むだけでなく、揺れを止めるためにも余計な仕事をしなければなりません。

その結果、以下の可能性があります:

  • エネルギー消費が増える
  • フォームが乱れる
  • 疲労しやすくなる

適切なコンプレッションは筋肉の揺れを抑え、以下のような感覚につながります:

  • 「脚がまとまる」
  • 「ブレが減る」
  • 「安定する」

「強ければ強いほど良い」という考えが間違っている理由

ここが一番重要です。

コンプレッションが弱すぎれば、筋肉の揺れは十分抑えられません。しかし、強すぎても問題が起こる可能性があります。

過度な圧迫がもたらす可能性のある悪循環

筋肉では運動中、毛細血管レベルで非常に細かな物質交換が行われています:

  • 酸素を受け取る
  • 糖や脂肪酸を受け取る
  • ラクテートを受け渡す
  • 二酸化炭素を排出する
  • 水素イオンによるpHの変化を調整する

理論的には、過度な圧迫によって以下のような流れが起こる可能性があります:

過度な圧迫
毛細血管レベルの血流が低下する
局所的な酸素供給が減る
解糖系への依存が高まる
ラクテートや水素イオンの処理が追いつきにくくなる
脚が重く感じる
科学的精密性について: 「強すぎるコンプレッションで毛細血管レベルの血流が低下する」という部分は現時点では直接的なランニング用コンプレッションウェアの強いエビデンスは限られています。そのため、この記事では「理論的には」「可能性があります」という慎重な表現を維持しています。

加圧トレーニング(BFR: Blood Flow Restriction)とは何でしょうか?

項目 コンプレッションウェア 加圧トレーニング(BFR)
圧力レベル およそ 15~40 mmHg 250~500 mmHg
目的 安定感と効率的な物質交換 血流を制限して筋肥大促進
用途 スポーツパフォーマンス向上 トレーニング効果の増幅

コンプレッションウェアとBFRは目的が正反対です。一般的なスポーツ用コンプレッションウェアの着圧は、加圧トレーニングとは比較できないほど低い圧力なのです。ただし、2026年のBFRの研究では、興味深い結果が報告されました:

面白い研究結果:圧力をどんどん高くしても血流は比例して減らず、人による個人差も非常に大きい

つまり、同じ圧力でも、人によって体への影響は異なるということです。

この研究はコンプレッションウェアを直接調べたものではありませんが、「圧力が強いほど効果が高い」と単純には言えないことを示す興味深い結果といえます。

「正解の着圧」は人によって違う

では、理想の着圧とは何でしょうか。答えはシンプルです:

サイズチャートだけでは決まりません。

同じウェアでも、以下の要因によって感じ方は変わります:

  • 選手の筋肉量、皮下脂肪量
  • 選手の筋肉へのATP供給効率
  • 選手の競技種目
  • 選手の運動強度

つまり、サイズチャートは万全ではありません。

自分に合うコンプレッションを選ぶ方法

ステップ1:サイズチャートを守る

メーカーが推奨するサイズチャートに従って選びましょう。これは単なるカスタマーサービスではなく、製品本来の性能を発揮するための重要な条件です。

ステップ2:実際に使ってみる

実際強度の強い運動を行って以下を確認しましょう:

  • 脚のブレは減ったか
  • フォームは安定したか
  • 股関節や膝は動かしやすいか
  • しびれはないか
  • 同じペースで脚が軽く感じるか
  • 長時間走っても違和感はないか

まとめ:あなたの身体に最適な「ちょうどいい着圧」を見つけよう

中村敬斗選手が着圧ソックスに穴を開けていた理由は本人しか分かりません。しかし、もし着圧が強すぎると感じていたのであれば、それは中村選手にとって最適な着圧ではなかったという可能性があります。

一方で、同じソックスでも他の選手にはちょうど良い着圧かもしれません。

コンプレッションウェアに「万人共通の正解」はありません。

大切なのは、自分の身体にとって最もパフォーマンスを発揮できる「ちょうどいい着圧」を見つけることです。

SA1NTのコンプレッションについて

SA1NTでは、多くのランナーの体型データをもとに、できるだけ多くの方が適切な着圧を得られるようサイズチャートを設計しています。

体型や筋肉量、競技特性によって着圧の感じ方には個人差があることも理解しており、最高のパフォーマンスを体感していただけるよう、サイズが合わない場合の交換にも柔軟に対応しています。

参考: 本記事のコンテンツは、スポーツ科学および運動生理学の現在の理解に基づいています。記事内で「理論的には」「可能性があります」と記載している部分は、科学的な精密性を維持するための表現です。

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