怪我の科学 — Vol.01 / 05|怪我したときのメンタル【できないことではなく、できることに集中する】

怪我の科学 — Vol.01 / 05|怪我したときのメンタル【できないことではなく、できることに集中する】
怪我の科学 — Vol.01 / 05

怪我したときのメンタル
できないことではなく
できることに集中する

背中の椎間板ヘルニアで手術を余儀なくされたCoach Mike。10ヶ月走れない日々を経て、World Masters Games三種競技で優勝するまでの回復——その土台を作ったのは技術でも体力でもなく、メンタルの持ち方だった。

COACH MIKE — RUN.NRG 監修:SA1NT HYBRID RUN CLUB 読了時間:約9分

「馬が逃げた後に厩舎の扉を閉めるようなものだ」

Coach Mikeは正直に告白する——背中が限界を超えて動けなくなったとき、コアトレーニングと柔軟性を怠っていたのは自分自身だった。他人をコーチングすることに夢中になるあまり、自分のメンテナンスを後回しにしていた。

「他人に言っていることを自分でやっていなかった」——この言葉がCoach Mikeの最初のメッセージだ。怪我は多くの場合、突然起きるのではない。積み重なった小さな怠慢の結果として訪れる。

「コアと柔軟性を怠れば、怪我は時間の問題だ。私はそれを自分の体で証明してしまった。だからこそ、今は逆説的に、ヨガを心から楽しめるようになった。」

— Coach Mike, run.nrg

子供と大人の違い——メンタルの本質

Coach Mikeが怪我中に気づいた最も重要な洞察がある。子供は「できること」に誇りを持って喜ぶ。大人は「できないこと」を見て落ち込む。

子供は世界を部分的にしか見えていないからこそ、目の前のできることに集中できる。大人は全体像が見えるからこそ、失ったものに目が向いてしまう——これは知識の呪縛だ。

怪我をしたとき、大人のランナーはすぐに「レースに出られない」「タイムが落ちる」「仲間に遅れる」と考える。しかしCoach Mikeはこう問い返す——「今日、何ができるか」

❌ 怪我中に陥りがちな思考 できないことへのフォーカス
  • 「走れない」「レースに出られない」
  • 「トレーニングが全部無駄になる」
  • 「仲間に差をつけられる」
  • 「回復しても元に戻れないかも」
  • → 焦り・無理・再発・長期化
✅ Coach Mikeの思考法 できることへのフォーカス
  • 「泳げる、自転車に乗れる、コアができる」
  • 「写真・家族・ヨガの時間ができた」
  • 「弱点を根本から修正するチャンスだ」
  • 「怪我が教えてくれたことを活かす」
  • → 冷静・計画的・確実な回復

Coach Mikeの実体験——背中の手術から優勝まで

Coach Mikeの椎間板ヘルニアとの戦いは、数年にわたる長い旅だった。自然治癒を試みたが限界を迎え、最終的に手術を選択。手術後の回復から、World Masters Gamesでの優勝、そして再発——この経験全体が、怪我のメンタルに関する最大の教科書になった。

怪我発生
椎間板ヘルニア発症・激痛で動けなくなる 「痛みは相当なものだった。しかし自分を責めることに時間を使うより、今できることを探す方が建設的だ」とCoach Mikeは振り返る。まず水泳・アクアジョギング・コアトレーニングの代替プランを立てた。
自然治癒期
走れない10ヶ月——代替トレーニングで有酸素ベースを維持 週5〜6回の水泳、XCスキーマシン、コアトレーニング。走れない期間を「水泳技術を向上させる時間」と再定義した。この期間に娘と一緒に自転車に乗り、家族との時間が増えた。
手術決断
自然治癒の限界を認め、手術を選択 「体の回復力は素晴らしい。しかし時には意志の力だけでは不十分だ」——プロフェッショナルの助けを借りることを決断。手術は成功し、数日後には回復の手応えを感じ始めた。
術後1ヶ月
リハビリ開始——ゆっくりした歩行とコア運動から 「ローマは一日にして成らず」——最初の一歩は歩行だった。走ることへの焦りをグッと抑え、コア安定性の再構築から始めた。次の目標は「年内に短いジョグを完成させること」に設定した。
術後6ヶ月
World Masters Games 三種競技で優勝——しかし代償も 驚異的な回復で優勝を果たしたが、Coach Mike自身が認める通り「焦りすぎた」。その後また6ヶ月間走れなくなった。この経験が「リハビリは急がない」という現在の哲学の核心になった。
完全復帰
55歳でBelgrave Harrriersのスコアリング6入り 「55歳でSurrey County XC Champsに出場できるとは夢にも思わなかった」——毎日のリハビリを信じて続けた結果だ。諦めなければ、何でも可能だという証明になった。

目標を再設定する——怪我は「リセットボタン」だ

Coach Mikeが怪我中に繰り返し言う言葉がある——「怪我や病気が来たら、目標をリセットして、新しいターゲットに向かってポジティブな姿勢で歩み始めろ」

これは諦めることではない。現実を直視して、今できる最善を積み上げることだ。怪我前の目標を固執することで、焦りが生まれ、無理をして再発する——このサイクルを断ち切るのが目標の再設定だ。

  • Step 1
    現実を直視する 「どのくらい走れないのか」「何ができて何ができないのか」を感情なしに整理する。医師・理学療法士の判断を優先する。自己診断と希望的観測を混同しない。
  • Step 2
    「今できること」をリストアップする 水泳、自転車、ヨガ、コア、ストレッチ、写真、家族との時間——怪我していても「できること」は必ずある。そのリストを書き出し、新しい日課を作る。
  • Step 3
    短期目標を設定する 「年内に短いジョグ」「来月プールで1km」など、達成可能な近い目標を設ける。大きな目標への道を、小さなステップに分解する。それぞれのステップが成功体験になる。
  • Step 4
    弱点を修正する時間として使う 「なぜ怪我したのか」の根本原因を探る。Coach Mikeの場合はコアと柔軟性の怠慢だった。怪我中にその弱点を徹底的に修正すれば、復帰後は怪我前より強くなれる。

ポジティブな態度が回復を速める

Coach Mikeは科学的根拠とともに、ポジティブな態度が回復に直接影響すると確信している。ストレスホルモン(コルチゾール)は組織の修復を妨げる。逆に、穏やかで前向きな状態では回復に関わるホルモンが適切に分泌される。

「私は常に、ポジティブな態度が回復を速めると信じている」——これはCoach Mikeの哲学であり、自らの回復体験で証明してきた事実だ。

Coach Mikeの怪我中メンタル管理・7つの実践

1️⃣ 毎朝「今日できること」を1つ決めて始める
2️⃣ SNSで他人の練習記録を見て落ち込まない(ハイライトリールと日常を比べない)
3️⃣ 怪我を「弱点修正の時間」として積極的に活用する
4️⃣ 家族・友人と過ごす時間を増やし、孤立しない
5️⃣ リハビリの小さな進歩を記録し、前進を可視化する
6️⃣ 諦めそうになったら「ローマは一日にして成らず」を思い出す
7️⃣ プロに任せるべきことはプロに任せ、自分は回復に専念する
⚠️ 最も危険な怪我中の行動

焦って無理をすること——これがCoach Mike自身が犯した最大のミスだ。手術後6ヶ月でWorld Masters Gamesに出場し優勝したが、その後また6ヶ月間走れなくなった。「短期的な栄光のために長期的な健康を犠牲にするな」——二種類のランナーしかいない。今怪我しているランナーと、いずれ怪我するランナーだ。焦りは必ず代償を払うことになる。

SA1NT HYBRID RUN CLUB

怪我中でも一人じゃない。Coach Mikeの監修のもと、代替トレーニング・リハビリ・メンタルサポートまで——仲間と一緒に回復の旅を歩もう。

クラブの詳細を見る

まとめ:怪我は終わりではなく、再構築の始まりだ

できないことに目を向けるな——できることを探せ。目標をリセットし、弱点を修正し、ポジティブな態度で一歩一歩前に進む。Coach Mikeが10ヶ月の闘いの末に学んだ最大の教訓は、メンタルが回復の速度を決めるということだ。

次回 Vol.02|怪我中のトレーニング設計 では、走れない期間に有酸素ベースをキープするための5つの代替トレーニングを具体的に解説する。

← メディア一覧に戻る