距離別レース準備の科学 — Vol.01 / 05|自分のペースを知る【すべてのレースの土台となるペース感覚の作り方】
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自分のペースを知る
体に刻む
5kmも42kmも、ペース設定を間違えた瞬間にレースは終わる。Coach Mikeが心拍ゾーン・MAF法・タイムトライアルを使って「自分の基準ペース」を割り出し、体に叩き込む方法を解説する。すべての距離の準備はここから始まる。
ほぼ全員がスタートで突っ込みすぎる
Coach Mikeが何千人ものランナーを見てきて断言できることがある——ほぼ全員がスタートで突っ込みすぎる。5kmでも、10kmでも、マラソンでも。経験年数に関係なく、このミスを犯す。
理由はシンプルだ。スタート直後は体が軽く感じる。興奮で心拍数が上がっている。周囲のランナーに引っ張られる。そして「まだいける」と感じた時にはすでに遅い——後半で必ず代償を払うことになる。
「経験上、最後の10kmで気持ちよく走れることはほとんどない。だからこそ、少なくとも10%遅く入れ。調子が良ければ後半で上げればいい——しかし、良いと感じることはまずないだろう。」
— Coach Mike, run.nrg
この問題の根本は、自分のペースを体が知らないことにある。頭では「4:30/kmで走る」と思っていても、体がそのペースを感覚として持っていなければ、スタート直後の興奮の中で正確に刻むことはできない。
距離が変われば、ペースはどう変わるか
同じランナーでも、距離が変われば走れるペースは大きく変わる。当たり前のことに聞こえるが、これを体で理解しているランナーは意外と少ない。
| 距離 | 特性 | サブ20(5km)ランナーの目安 | キーとなるエネルギー系 |
|---|---|---|---|
| 5km | スピード持久力 | 約4:00/km | 有酸素94〜95% + 無酸素5〜6% |
| 10km | 乳酸閾値の限界 | 約4:15〜4:20/km | 有酸素90〜97% + 無酸素3〜10% |
| ハーフ | スタミナ×スピード | 約4:30〜4:40/km | 有酸素約99% |
| マラソン | 脂肪燃焼効率が勝負 | 約4:45〜5:00/km | 有酸素99%、脂肪燃焼が鍵 |
5kmのペースでマラソンを走ろうとすれば、30km手前で必ず崩れる。逆にマラソンペースで5kmを走れば、タイムは大きく落ちる。各距離には、その距離に最適な「維持できるペース」がある。それを自分の体で把握することが、すべての準備の出発点だ。
自分の基準ペースを割り出す3つの方法
① 計算式から逆算する
Coach Mikeが使うシンプルな計算式がある。直近のレースタイムから別距離の目標タイムを予測できる。
距離間のタイム予測計算式
これはあくまで目安だ。Coach Mikeが強調するのは「これらは推定に過ぎない——正しい準備なしには何も保証されない」ということ。計算式はスタートラインを示すだけで、そこからの準備が実際のタイムを決める。
② MAF法で有酸素ペースを知る
心拍数を使ったペース管理の基準として、Coach MikeはMAF法(Maximum Aerobic Function)を使う。計算式はシンプルだ。
- 40歳なら:180 − 40 = 140bpm
- 50歳なら:180 − 50 = 130bpm
- 暑い・多湿な気候では +10bpm
- この心拍数以下で走ることが有酸素トレーニングの基準
- 最大HR 190なら:190 − 40 = 150bpm
- 最大HR 180なら:180 − 40 = 140bpm
- より個人差を反映した精度の高い計算
- 自分の最大HRを把握している人向け
心拍計がない場合のチェック方法はさらにシンプルだ。「走りながら会話できるか」「鼻だけで呼吸できるか」——この2つがYESなら有酸素ゾーンにいる。NOなら遅すぎる。
③ タイムトライアル(TT)で現実を知る
Coach Mikeはすべてのプログラムにタイムトライアルを組み込む。理由は一つ——自分の現在の実力を「感覚」ではなく「数字」で把握するためだ。
・TTはレース距離の2/3程度の距離で行う(5km目標なら3km、10km目標なら6〜7km)
・最初の1kmは「まだいける」と感じるペースより10%遅く入る
・各kmごとに体の感覚を確認しながら、徐々にペースを上げていく
・最後の1kmで出し切れる設計が理想的なペース配分
・TTのペース × 1.1〜1.15 = レース目標ペースの目安
3つの心拍ゾーンを体に叩き込む
自分のペースを「体に刻む」とは、各ゾーンの感覚を自動化することだ。心拍計を見なくても、走っている感覚だけでゾーンを判断できるようになることが目標だ。
ペース感覚を体に刻む練習法
ゾーンの知識を持つことと、体がそれを感覚として持つことは別物だ。Coach Mikeがペース感覚を体に叩き込むために使う具体的な方法を紹介する。
-
TT週1回のタイムトライアル 同じコース・同じ距離でのTTを週1回継続する。数字の変化が体の変化を可視化する。「今日は4:20で走れた」という事実が体のデータベースになる。
-
予測ペースを予測してから確認する 走り終わった後にGPSを見る前に「今のペースは何分/kmだったか」を予測する。予測と実際のズレが縮まるほど、ペース感覚が精度を増している証拠だ。
-
ネガネガティブスプリットを練習する 後半を前半より速く走るネガティブスプリットを意識的に練習する。前半を抑えて後半に上げる感覚が身につくと、レース本番でのペース判断が劇的に改善する。
-
感覚週1回は時計なしで走る Coach Mikeが全選手に義務付ける「自由ラン」。GPSも心拍計も持たず、体の感覚だけで走る。テクノロジーへの依存を断ち、純粋なペース感覚を磨く時間だ。
ペース配分:距離別の「走り方の地図」
基準ペースが決まったら、次はレース当日のペース配分だ。Coach Mikeが距離を問わず一貫して教える原則がある。
- スタートの興奮でオーバーペース
- 「まだいける」と感じているうちに貯金を使い果たす
- 中盤から急激にペースが落ちる
- 後半は「生き残るだけ」になる
- タイムも体験も最悪になる
- 前半は「物足りない」くらいのペースで入る
- 中盤で体の感覚を確認しながら維持
- 後半3分の1で初めてペースアップを検討
- ラスト数kmで出し切る設計
- タイムも体験も最高になる
ペース計算はあくまでもスタート地点だ。「サブ3には4:15/kmが必要」という計算は正しい——しかし、その計算通りに走れる体ができているかどうかは別問題だ。計算式を信じる前に、TTで自分の実力を正直に把握せよ。準備なき計算は、ただの希望的観測だ。
このシリーズの使い方
Vol.01で学んだペースの基礎は、この後の各距離の正攻法すべての土台になる。各距離には固有の生理学的特性があり、必要なトレーニングの設計も変わる。しかし、どの距離においても「自分のペースを知り、体に刻む」というプロセスは変わらない。
まとめ:ペースを知ることがすべての始まり
計算式でスタートラインを引く。MAF法で有酸素ゾーンを把握する。TTで現実を直視する。週1回の自由ランで感覚を磨く——この4つがそろったとき、あなたは初めて「自分のペース」を持つランナーになる。
次回 Vol.02|5kmへの正攻法 では、75%有酸素・25%無酸素という5kmの生理学的特性から逆算したトレーニング設計を解説する。
着圧や疲労軽減といった機能面は非常に優れているものの、1度の洗濯で縫い目の糸がほつれが生じるなど、耐久性には不安が残る。
ランニングの動きを邪魔せず、とても快適な着心地でした。シンプルな見た目で、普段着にも使えて重宝しています!
足首がしっかりホールドされている感覚があり、足裏のアーチも保持されている気がして走りやすい!