SA1NTコーチ【マイク】が教える|ペースと心拍数の科学① 心拍数とエネルギー代謝の関係|強度で変わるエネルギーシステムとトレーニング効果

SA1NTコーチ【マイク】が教える|ペースと心拍数の科学① 心拍数とエネルギー代謝の関係|強度で変わるエネルギーシステムとトレーニング効果

SA1NTコーチ【マイク】が教える|ペースと心拍数の科学① 心拍数とエネルギー代謝の関係|強度で変わるエネルギーシステムとトレーニング効果

ペースが変わると、体の中で使われるエネルギーが変わる

ランニングでは、ペースが上がるほど体の中で使われるエネルギーの仕組みが変わります。

重要なのは「どれくらい頑張っているか」ではなく、「どのエネルギーシステムを使っているか」です。

そしてその状態を最もシンプルに表す指標が心拍数です。

ここでは、エネルギー代謝の仕組みと、それぞれのトレーニングで体に何が起きるのかを整理します。


こんな疑問を解消します

  • 走るときのエネルギーはどこから来ている?
  • 有酸素と無酸素の違いは何か?
  • 乳酸閾値(LT)とは何か?
  • トレーニングで体はどう変わる?

ATPとは何か

すべての運動は「ATP(アデノシン三リン酸)」によって行われます。

筋肉はATPを分解することで収縮し、走ることができます。

しかしATPは体内にほとんど蓄えられておらず、全力では約10秒ほどで使い切られます。

そのため体は常にATPを再合成し続ける必要があります。


エネルギー供給システムの全体像

ATPを再生する方法は大きく3つあります。

  • ATP-PC系:瞬発的(約10秒)
  • 解糖系:無酸素・中強度(約2分)
  • 有酸素系:長時間(酸素+脂肪・糖)

ランニングではこれらが同時に働きながら、ペースが上がるにつれて主役が変わります。


低強度(有酸素)で起きていること

ゆっくり走っているとき、体は主に脂肪と酸素を使ってエネルギーを作ります。

ミトコンドリアの中でTCAサイクル(クエン酸回路)が働き、効率よくATPを生み出します。

脂肪は大量に蓄えられているため、この状態は長時間維持できます。

この強度でのトレーニング(LSDやイージーラン)によって:

  • 有酸素能力(VO2maxの土台)が向上する
  • 脂肪をエネルギーとして使う能力が向上する
  • ミトコンドリアが増加する
  • 心臓のストロークボリュームが増える

これは持久力の基盤を作る最も重要な領域です。


中強度(LT付近)で起きていること

ペースが上がると、体は脂肪だけではなく糖も使い始めます。

やがて有酸素システムだけではエネルギー供給が追いつかなくなり、解糖系が強く働き始めます。

このとき乳酸が生成されます。

乳酸は常に発生していますが、ある強度を超えると処理が追いつかず蓄積し始めます。

これが乳酸閾値(LT)です。

この強度でのトレーニングによって:

  • TCAサイクルの処理能力が向上する
  • 糖を効率よくエネルギーに変える能力が向上する
  • 乳酸の除去・再利用能力が向上する
  • 高いペースを長く維持できるようになる

これは「速く走り続ける能力」を作る領域です。


高強度(無酸素)で起きていること

さらに強度が上がると、酸素供給が追いつかなくなります。

この状態ではATP-PC系と解糖系が主に働きます。

エネルギーは主に糖から供給され、乳酸が急速に蓄積します。

この強度でのトレーニング(スプリントやインターバル)によって:

  • 速筋(タイプⅡ筋繊維)が発達する
  • 瞬発力・最大出力が向上する
  • ATPを素早く再合成する能力が向上する
  • 筋肉内にATPを蓄える能力も高まる

これは「スピード」と「最大パワー」を高める領域です。


トレーニングによる適応

重要なのは、それぞれの強度で体に起きる適応が異なることです。

  • 低強度 → 持久力・脂肪代謝
  • 中強度 → スピード持久力・乳酸処理
  • 高強度 → 最大出力・速筋発達

一つの強度だけでは、すべての能力は伸びません。

目的に応じてエネルギーシステムを使い分けることが重要です。


まとめ

  • すべての動きはATPで行われる
  • エネルギーは3つのシステムで供給される
  • ペースが上がると脂肪から糖へ移行する
  • それぞれの強度で体の適応は異なる

トレーニングの質は「どれだけ頑張ったか」ではなく、「どのエネルギーを使ったか」で決まります。


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この記事を書いたコーチ

Mike Trees(7 x マスターズ世界チャンピオン)

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