SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランニング生理学の科学③ ATP・脂肪・糖の仕組み|走るエネルギーはどこから来るのか
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走るエネルギーの仕組みを理解する
「なぜLSDが重要なのか」「なぜスプリントが必要なのか」を本当に理解するには、体の中で何が起きているのかを知る必要があります。
すべての運動は、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーによって行われます。
しかしATPは体内にほとんど貯蔵されておらず、全力で動けば約10秒ほどで使い切ってしまいます。
つまり、走り続けるためには、常にATPを作り続けなければなりません。
ここでは、ATP、脂肪、糖の関係と、ランニング中のエネルギーシステムをわかりやすく解説します。
目次
こんな疑問を解消します
- ATPとは何か?
- 脂肪と糖はどう使い分けられる?
- LSDは何を鍛えているのか?
- LT走やスプリントでは何が発達するのか?
- カーボローディングはなぜ有効なのか?
ATPとは何か
筋肉が収縮するためのエネルギーは、すべてATPによって供給されます。
ATPは、財布の中に入っている現金のようなものです。
すぐに使えますが、持っている量はごくわずかです。
全力で走れば10秒ほどでほぼ使い切ってしまいます。
そのため体は、常に新しいATPを補充し続ける必要があります。
財布・ガソリンタンク・巨大な貯蔵庫
体のエネルギーを例えると次のようになります。
- ATP:財布の中の現金(すぐ使えるが少量)
- グリコーゲン:車のガソリンタンク(すぐ使えるが有限)
- 脂肪:巨大な地下燃料タンク(大量にあるが使うには酸素が必要)
ランニングでは、まず財布の現金を使い、その後ガソリンタンクや巨大な貯蔵庫からエネルギーを取り出していきます。
3つのエネルギーシステム
ATPを再生する方法は大きく3つあります。
- ATP-PC系:瞬発的な動き(約10秒)
- 解糖系:糖を使う中〜高強度(数十秒〜約2分)
- 有酸素系:酸素を使って長時間エネルギーを作る
実際のランニングでは、この3つが同時に働きながら、強度に応じて主役が変わります。
LSDで体に起きる変化
ゆっくり長く走るLSDやイージーランでは、脂肪を使う能力が高まります。
ミトコンドリアが増え、酸素を使って効率よくATPを作れるようになります。
- 脂肪代謝の向上
- ミトコンドリアの増加
- 毛細血管の発達
- 心臓のストロークボリューム増加
- 有酸素能力の向上
巨大な地下燃料タンクを、より上手に使えるようになるイメージです。
LT走で体に起きる変化
LT走やテンポ走では、糖を素早くエネルギーに変えながら、乳酸を処理する能力が高まります。
雪が積もり始めるギリギリの強度で走ることで、処理能力そのものが向上します。
- TCAサイクルの処理能力向上
- 乳酸の除去・再利用能力向上
- 高いペースの持続力向上
- レースペース維持能力向上
スプリントで体に起きる変化
短時間のスプリントでは、ATP-PC系と速筋が強く刺激されます。
- 速筋(タイプⅡ筋繊維)の発達
- 最大出力の向上
- ATP再合成速度の向上
- 筋肉内のエネルギー貯蔵能力向上
- 神経系の活性化
財布の現金を素早く補充し、瞬時に大きな力を出せるようになるイメージです。
グリコーゲン枯渇とカーボローディング
糖(グリコーゲン)は重要な燃料ですが、体内に蓄えられる量には限りがあります。
マラソン後半に失速する大きな原因の一つが、このグリコーゲンの枯渇です。
カーボローディングは、レース前にガソリンタンクを満タンにする作業だと考えると分かりやすいでしょう。
なぜすべての強度が必要なのか
低強度、中強度、高強度では、それぞれ鍛えられる能力が異なります。
- 低強度 → 持久力・脂肪代謝
- 中強度 → 乳酸処理・スピード持久力
- 高強度 → 最大出力・速筋発達
一つの強度だけでは、すべての能力を伸ばすことはできません。
それぞれのエネルギーシステムを計画的に刺激することが、長期的な成長につながります。
まとめ
- ATPはすべての動きの直接的なエネルギー
- 糖は素早く使えるが量に限りがある
- 脂肪は大量にあるが酸素が必要
- LSDは脂肪代謝と有酸素能力を高める
- LT走は乳酸処理能力を高める
- スプリントは速筋と最大出力を高める
トレーニングの目的は、ただ疲れることではありません。
どのエネルギーシステムを鍛えているのかを理解することで、練習の意味がはっきり見えてきます。
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この記事を書いたコーチ
Mike Trees(7 x マスターズ世界チャンピオン)

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