SA1NTコーチ【マイク】が教える|ランニング生理学の科学① VO₂maxとは?心臓が大きいほど速く走れる理由
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VO₂maxをわかりやすく理解する
VO₂maxという言葉を聞いたことがあっても、「結局、何の数字なのか」が分かりにくい人は多いと思います。
簡単に言えば、VO₂maxとは「体が1分間にどれだけ酸素を筋肉へ届け、使えるか」を示す指標です。
ランニングでは、筋肉を動かすために燃料が必要です。その燃料を効率よく使うためには、酸素が必要になります。
私はVO₂maxを説明するとき、よく車のエンジンに例えます。車が走るには燃料と空気が必要です。人間の体も同じで、筋肉を動かすには糖や脂肪という燃料と、それを使うための酸素が必要です。
目次
こんな疑問を解消します
- VO₂maxとは何か?
- なぜ心臓が強いと速く走れるのか?
- 同じペースなのに心拍数が下がるのはなぜ?
- GarminなどのVO₂max表示は信じていいのか?
- VO₂maxを高めるには何をすればいいのか?
VO₂maxとは何か
VO₂maxとは、体が1分間に取り込み、筋肉で使うことができる酸素の最大量です。
ランニングでは、筋肉が動くためにエネルギーを作り続ける必要があります。そのエネルギーを作るために、体は糖や脂肪を燃料として使います。
ただし、燃料だけでは十分ではありません。燃料を効率よく使うためには酸素が必要です。
つまりVO₂maxは、「どれだけ多くの酸素を筋肉へ届けられるか」を示す数字です。
車で考えると分かりやすいです。
- 燃料:糖や脂肪
- 空気:酸素
- エンジン:心臓と肺
- 道路を走る力:筋肉が生み出すパワー
どれだけ良い燃料があっても、エンジンが小さければ大きな力は出せません。ランナーの体も同じです。
酸素をたくさん運べる体ほど、長い時間、速いペースを維持しやすくなります。
心臓はランナーのエンジン
私は、心臓を「ランナーのエンジン」と考えています。
心臓は血液を全身へ送り出すポンプです。血液は酸素と栄養を筋肉へ運びます。
心臓が強くなれば、一回の拍動でより多くの血液を送り出せるようになります。
つまり、筋肉へ届く酸素と燃料の量が増えるということです。
有酸素トレーニングを長く続けると、心臓は少しずつ強くなります。
これは単に「心拍数が上がりにくくなる」という話ではありません。
心臓そのものが、より効率よく血液を送り出せるようになるということです。
車で言えば、小さなエンジンから大きなエンジンに変わるようなものです。
同じスピードで走るなら、大きなエンジンの方が余裕があります。
ランニングでも、同じペースで走っているのに以前より楽に感じるのは、この「エンジン」の能力が上がっているからです。
ストロークボリュームとは?
VO₂maxを理解するうえで大切なのが、ストロークボリュームです。
ストロークボリュームとは、心臓が1回の拍動で送り出す血液量のことです。
この量が増えると、心臓は少ない拍数でも十分な血液を筋肉へ送ることができます。
例えば、同じペースで走っている2人がいるとします。
一人は心拍数が160、もう一人は心拍数が130。
この差は、単に「頑張っているかどうか」だけではありません。
心臓が1回でどれだけ血液を送れるか、つまりストロークボリュームの違いが関係しています。
ストロークボリュームが大きいランナーは、少ない心拍数で多くの酸素を筋肉へ届けられます。
だから、同じペースでも心拍数が低く、余裕を持って走れるのです。
なぜ同じペースでも心拍数が下がるのか
有酸素能力が高まると、同じペースでも心拍数が下がることがあります。
これは、体が同じ仕事をより少ない負担でこなせるようになったサインです。
例えば、以前は5:00/kmで走ると心拍数が150だったとします。
数か月の有酸素トレーニング後、同じ5:00/kmで心拍数が140になったとしたら、体は明らかに効率よくなっています。
これは、心臓がより多くの血液を一回で送り出せるようになったこと、筋肉が酸素を使う能力を高めたこと、そして脂肪や糖をより効率よくエネルギーに変えられるようになったことが関係しています。
速くなるというのは、必ずしも毎回速い練習をすることではありません。
同じペースを、より低い心拍数で、より楽に走れるようになることも、非常に大きな進歩です。
VO₂maxが上がると何が変わるのか
VO₂maxが高まると、ランニング中に使える酸素の量が増えます。
酸素を多く使えるということは、有酸素的にエネルギーを作れる範囲が広がるということです。
これにより、次のような変化が起きます。
- 同じペースが楽に感じる
- 以前より速いペースでも呼吸が乱れにくくなる
- 長い距離を走っても疲れにくくなる
- レース後半でペースを維持しやすくなる
- 乳酸が急激にたまり始める前に走れるペースが上がる
特に大切なのは、VO₂maxが上がることで「有酸素で走れる上限」が上がることです。
つまり、体が無酸素エネルギーに頼りすぎる前に、より速いペースを保てるようになります。
これはマラソン、ハーフマラソン、10km、5km、どの距離にも関係します。
短い距離でも長い距離でも、速く走るためには酸素を使う力が必要です。
スマートウォッチのVO₂maxを信じすぎない
GarminやApple Watchなど、多くのスマートウォッチにはVO₂maxの推定値が表示されます。
しかし、この数字はあくまで推定です。
本当のVO₂maxを測るには、ラボで酸素の吸入量と排出量を測定する必要があります。
スマートウォッチは実際に肺へ入る酸素量を測っているわけではありません。
多くの場合、ペース、心拍数、年齢、体重などから計算しています。
そのため、次のような条件で数字は簡単に変わります。
- 暑さ
- 湿度
- 疲労
- 睡眠不足
- 脱水
- 体重設定の誤差
- GPSや心拍計の誤差
だから、時計のVO₂maxが少し下がったからといって、すぐに「体力が落ちた」と考える必要はありません。
むしろ、数字に振り回されすぎることの方が問題です。
時計は便利な道具ですが、コーチではありません。
データは参考にしながら、自分の感覚と実際の走りを見て判断することが大切です。
VO₂maxが伸びているサイン
VO₂maxが本当に伸びているかどうかは、時計の数字だけで判断する必要はありません。
もっと実践的で分かりやすいサインがあります。
- 安静時心拍数が下がってきた
- 同じペースで走った時の心拍数が下がった
- 以前より長く走っても楽に感じる
- 呼吸が乱れにくくなった
- 疲労回復が早くなった
- レース後半で落ちにくくなった
特に分かりやすいのは、「同じペースで心拍数が下がること」です。
これは、心臓と筋肉が以前より効率よく働いている証拠です。
また、同じ心拍数で以前より速く走れるようになった場合も、有酸素能力が上がっている可能性があります。
VO₂maxを高めるために必要なこと
VO₂maxを高めるには、いきなり毎回きつい練習をする必要はありません。
むしろ、多くのランナーに必要なのは、有酸素の土台をしっかり作ることです。
基本になるのは、低〜中強度の有酸素トレーニングです。
ロングラン、イージーラン、LSDのような練習を継続することで、心臓、血管、筋肉、ミトコンドリアが少しずつ発達していきます。
そのうえで、必要に応じてテンポ走やインターバルを入れることで、より高い強度でも酸素を使える能力が伸びていきます。
イメージとしては、まずエンジンを大きくすることです。
エンジンが小さいままアクセルだけ踏んでも、すぐに苦しくなります。
でもエンジンが大きくなれば、同じスピードでも余裕が生まれます。
だから、VO₂maxを高めるためには、次の3つが重要です。
- 低強度の有酸素運動を継続する
- 少しずつトレーニング量を増やす
- 必要なタイミングで高強度刺激を入れる
大切なのは、焦らないことです。
心臓や有酸素能力は、数日で変わるものではありません。
何週間、何か月、何年という積み重ねで変わっていきます。
まとめ
VO₂maxとは、体が1分間にどれだけ酸素を筋肉へ届け、使えるかを示す指標です。
ランニングでは、酸素を使って糖や脂肪をエネルギーに変える力が非常に重要です。
- VO₂maxは酸素を使う能力を示す
- 心臓はランナーのエンジン
- ストロークボリュームが増えると少ない心拍で走れる
- 同じペースで心拍数が下がるのは進歩のサイン
- スマートウォッチのVO₂maxは参考値として見る
- 有酸素トレーニングの継続が土台になる
速く走るためには、ただ速く走るだけでは足りません。
まずは、酸素を使える体を作ること。
その土台が、長く、強く、速く走るための基礎になります。
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この記事を書いたコーチ
Mike Trees(7 x マスターズ世界チャンピオン)

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