栄養の科学 — Vol.01 / 05|糖質との正しい付き合い方【脂肪を燃やしながら、必要なときにカーボを使う】

栄養の科学 — Vol.01 / 05|糖質との正しい付き合い方【脂肪を燃やしながら、必要なときにカーボを使う】
栄養の科学 — Vol.01 / 05

糖質との正しい付き合い方
脂肪を燃やしながら、必要なときにカーボを使う

「ローカーボ・ハイファット」と「長距離に必要な炭水化物」——矛盾しているように見えて、実は使い分けの話だ。砂糖は炎症の原因、低GI炭水化物は長距離の燃料、ジェルはレース中の緊急燃料。Coach Mikeの実体験と科学から学ぶ、糖質との正しい付き合い方。

COACH MIKE | RUN.NRG SA1NT HYBRID RUN CLUB SPORTS SCIENCE SERIES

「ローカーボ」と「カーボローディング」は矛盾しない

「脂肪を燃料にしろ」と言いながら、「長距離には炭水化物が必要」とも言う——Coach Mikeのアドバイスを聞いて、矛盾を感じたことがあるかもしれない。しかし、これは矛盾ではない。燃料システムの使い分けだ。

人間の体には2つの主要な燃料タンクがある。脂肪(ほぼ無限)と糖質(肝臓・筋肉に約2,000kcal分)だ。問題は、多くのランナーが糖質タンクに依存しすぎていて、脂肪タンクをほとんど使えていないことだ。脂肪燃焼系が発達していないランナーは、長距離の後半で急激にエネルギーが枯渇する——いわゆる「壁」だ。

Coach Mikeが日常の食事でローカーボ・ハイファットを実践するのは、この脂肪燃焼系を日常的に鍛えるためだ。そして長距離レースや高強度インターバル、筋トレには、低GIの炭水化物を戦略的に使う。これが「燃料システムの二本柱」だ。

砂糖は悪、炭水化物は道具

炭水化物を一律に「悪」と見なすのは間違いだ。Coach Mikeが長年のコーチング経験と自身の血液検査から学んだのは、問題は「精製された糖」であり、炭水化物そのものではないということだ。

かつてCoach Mikeは生涯を通じて高炭水化物・低脂肪の食事を続けてきた。常に空腹を感じ、コレステロール値は300を超え、動脈の炎症が続いていた。ハイファット・ローシュガーの食事に切り替えた後、コレステロール値は正常化し、体重は69kgから62kgに落ち、血液プロファイルは20代以来最高の数値になった。その後、パンやシリアルを「少し」再導入しただけでコレステロール値が再び300超に戻った。体はデータで語っていた。

2,000
kcal — 糖質タンクの上限
肝臓と筋肉に蓄えられるグリコーゲンの最大量。これを超えた糖質は脂肪として蓄積される。長距離では不足するため補給が必要になる。
GI値
血糖上昇速度の指標
GI値が高いほど血糖値が急上昇し、インスリンが大量分泌される。繰り返すと動脈の炎症につながる。長距離の日常燃料には低GI食品を選ぶ。
80/20
食事の鉄則
80%を低糖・ホールフード中心で過ごせば、残り20%は好きなものを食べていい。完璧主義は長続きしない。チートデイを計画に組み込む。

低GI炭水化物:長距離ランナーの「使える燃料」

長距離・ハードなインターバル・筋トレには炭水化物が必要だ。ただし、選ぶべき炭水化物は血管を傷つけない低GIのものだ。

食品 GI値の目安 ランナーへの評価 使うタイミング
さつまいも 低〜中(約55) 推奨 長距離前日・トレーニング後
玄米 低〜中(約55) 推奨 昼食・夕食のベース
オートミール 低(約55) 推奨 長距離前の朝食
果物(ベリー類) 低(約40) 推奨 日常・回復後
白米・白パン 高(約70〜90) 限定的 レース直前・緊急補給のみ
エナジージェル 非常に高い レース専用 90分超のレース・長距離走中
ケーキ・菓子パン・シリアル 高(約70〜85) 日常使い不可 チートデイのみ

長距離とカーボローディング:「タンクを満たす」戦略

90分を超えるレースや長距離走では、グリコーゲン(筋肉内の糖質貯蔵)が枯渇する。これを防ぐためにカーボローディング——レース前日〜2日前に炭水化物摂取量を増やす——が有効だ。

カーボローディングの正しい実践

  • 対象:90分を超えるレースや長距離走のみ。短い距離では過剰な炭水化物は重くなるだけで逆効果になる
  • 食品の選択:玄米・さつまいも・オートミールなど低GI食品でタンクを満たす。白米・白パンを大量摂取する従来型のカーボローディングは血糖スパイクを引き起こしやすい
  • タイミング:レース2〜3日前から炭水化物比率を増やし始める。前日夜に大量摂取するのは消化に負担をかけるためリスクがある
  • 筋トレの場合:高強度の筋トレ前後には炭水化物が必要。トレーニング後30分以内にタンパク質と炭水化物を組み合わせて摂取する(詳細はVol.04へ)
  • 脂肪燃焼との両立:日常の低強度トレーニングは空腹・低炭水化物状態で行い脂肪燃焼系を鍛える。高強度・長距離の日だけ炭水化物を戦略的に増やす

レースジェル:「本番で初めて使うな」の鉄則

エナジージェルはGI値が非常に高い「緊急燃料」だ。血糖値を素早く引き上げ、枯渇しかけたグリコーゲンを補う。しかし、胃腸がジェルに慣れていないと、レース中に消化器系のトラブルを引き起こす。

⚠️ ジェル使用の3原則

①必ず練習で試す:レース本番と同じ条件(同じペース・同じ距離・同じジェル)でトレーニング中に試しておく。胃腸の反応は個人差が大きい。
②1時間に2個以下:過剰摂取は消化トラブルと血糖スパイクの原因になる。Coach Mikeは1時間2個を上限としている。
③必ず水と一緒に:ジェル単体では浸透圧が高く、胃腸への負担が増す。必ず水(スポーツドリンクではなく水)で流し込む。

Coach Mikeの食事構成:実際の比率

長年の試行錯誤と血液検査データを経て、Coach Mikeが現在採用している栄養比率はシンプルだ。

Coach Mikeの目標栄養比率

  • 脂質:40〜50%(良質な脂肪——オリーブ油・アボカド・ナッツ)
  • 炭水化物:30〜35%(低GI食品中心。高強度日は増やす)
  • タンパク質:20〜25%(詳細はVol.03へ)
  • 精製糖:できる限りゼロ(チートデイ以外)
  • 小麦製品:最小限(グルテンは炎症を悪化させる可能性)

Coach Mikeが実際に食べているもの

  • 朝食:アボカド・卵または魚・サラダ・ナッツ・コーヒー
  • 昼食:ニンジン+ピーナッツバター・りんご(または軽いランチ)
  • 夕食:蒸し野菜・大きなサラダ・鶏肉または魚・玄米またはさつまいも
  • トレーニング後:タンパク質を30分以内に摂取
  • チートデイ(週1回):好きなものを罪悪感なく食べる

次回 Vol.02|水分補給の科学——2%の脱水が10%のパフォーマンスを奪う →

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