栄養の科学 — Vol.03 / 05|タンパク質の科学【ランナーが最も軽視している栄養素】

栄養の科学 — Vol.03 / 05|タンパク質の科学【ランナーが最も軽視している栄養素】
栄養の科学 — Vol.03 / 05

タンパク質の科学
ランナーが最も軽視している栄養素

「タンパク質は筋トレをする人のもの」——この誤解がランナーのパフォーマンスを妨げている。最新研究では持久系アスリートに体重1kgあたり2〜2.5g/日を推奨。筋修復・免疫・血糖値安定・酸素運搬——タンパク質が担う5つの役割を科学的に解説する。

COACH MIKE | RUN.NRG SA1NT HYBRID RUN CLUB SPORTS SCIENCE SERIES

「タンパク質は筋トレをする人のもの」——この誤解を捨てよ

ランニングコミュニティでは、糖質と脂質の議論が盛んだ。しかし、パフォーマンスと回復に最も影響するにもかかわらず、最も軽視されている栄養素がある。それがタンパク質だ。

「タンパク質は筋肉を大きくしたい人のもの」という誤解が根強い。しかし持久系アスリートにとっても、タンパク質は筋修復・免疫機能・酸素運搬・エネルギー持続のすべてに関わる、不可欠な栄養素だ。

2.0g
/ kg体重 / 日(推奨量)
最新の研究では持久系アスリートに体重1kgあたり2g/日以上を推奨。体重60kgなら120g/日。一般人の推奨量(0.8g/kg)の2.5倍だ。
2.5g
/ kg体重 / 日(Coach Mike)
Coach Mikeが自身のアスリートに推奨する量。糖質摂取を抑えながらも満腹感を維持し、筋肉の回復を最大化するための設定。
25%
総カロリーに占める比率
Coach Mikeが推奨する栄養比率。炭水化物50%・脂質25%・タンパク質25%のバランス。タンパク質が増えると糖質への依存が自然に減る。

タンパク質が担う5つの役割

ランナーにとってのタンパク質の機能

  • 筋修復と再構築:ランニングで損傷した筋繊維を修復するのはアミノ酸(タンパク質の構成要素)だ。回復の科学シリーズで解説した筋タンパク質合成(+108%上昇)も、材料となるタンパク質なしには機能しない
  • 酸素運搬:タンパク質の20種のアミノ酸は、赤血球中のヘモグロビン合成に不可欠だ。タンパク質不足は血中酸素運搬能力の低下につながり、慢性的な低エネルギーとして現れる
  • 免疫機能:免疫システムの抗体もタンパク質で構成される。タンパク質不足は免疫機能を低下させ、ハードなトレーニング後に風邪や感染症にかかりやすくなる
  • 血糖値の安定:タンパク質はゆっくりグルコースに分解されるため、血糖値の急上昇・急降下を防ぐ。糖質中心の食事では避けられない「エネルギーの波」を抑制する
  • 浮腫(むくみ)の予防:タンパク質不足では血漿浸透圧が低下し、組織に水分が貯留してむくみが生じる。長距離後の回復が遅い場合、タンパク質不足が一因である可能性がある

タンパク質不足の5つのサイン

体に現れるサイン

  • 常に疲れている(エネルギーが低い)
  • 筋肉量が減っている(特に大腿部)
  • むくみ・体重増加(浮腫)
  • 血糖値の不安定(食後すぐ眠くなる)
  • 傷の治りが遅い・骨折しやすい

トレーニングに現れるサイン

  • 回復が遅い(筋肉痛が長引く)
  • 風邪・感染症にかかりやすい
  • 長距離後半のパフォーマンス低下
  • 免疫が落ちて練習を休みがちになる
  • 筋力トレーニングの効果が出にくい

実際に必要なタンパク質量を計算する

「体重1kgあたり2g」という数字は抽象的に聞こえる。具体的に換算してみよう。

体重 最低推奨量(2g/kg) Coach Mike推奨(2.5g/kg) カロリー換算
50 kg 100 g / 日 125 g / 日 約500kcal
60 kg 120 g / 日 150 g / 日 約600kcal
70 kg 140 g / 日 175 g / 日 約700kcal
80 kg 160 g / 日 200 g / 日 約800kcal

体重70kgのランナーが140gのタンパク質を摂ろうとすると、鶏胸肉200g(約44g)・卵3個(約18g)・納豆1パック(約8g)・ギリシャヨーグルト200g(約20g)・プロテインパウダー1スクープ(約25g)を組み合わせてようやく115g程度だ。食事だけで2g/kgを達成するのはかなりの意識が必要であり、プロテインパウダーの補助が現実的な場合もある。

タンパク質の摂取源:食品ランキング

Coach Mikeが推奨するタンパク質源

  • 魚介類(最優先):サバ・サーモン・まぐろ——高タンパク+オメガ3脂肪酸で抗炎症効果も兼ねる
  • 卵:完全タンパク質(必須アミノ酸をすべて含む)。消化吸収が速く、トレーニング後の補給に適している
  • 納豆・豆腐:植物性タンパク質の優秀な供給源。日本の伝統食として腸内環境にも好影響
  • 鶏肉・赤身肉(適量):高タンパクだが、赤身肉の過剰摂取は炎症リスクがある。週2〜3回を目安に
  • ナッツ・種実類:タンパク質+良質な脂質+食物繊維の三役を担う。間食として活用する
  • プロテインパウダー(補助として):食事だけで必要量を摂れない場合に限って活用。1〜2スクープ(20〜40g)を朝食や回復後に

次回 Vol.04|食事タイミングの科学——何を、いつ食べるか →

SA1NT HYBRID RUN CLUB

オーストラリア発のSA1NTが、ニュージーランド在住のCoach Mikeとともに届ける科学的トレーニングのコミュニティ。栄養を戦略にする仲間がここにいる。

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