栄養の科学 — Vol.02 / 05|水分補給の科学【2%の脱水が10%のパフォーマンスを奪う】
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水分補給の科学
2%の脱水が10%のパフォーマンスを奪う
喉が渇いたと感じたときには、すでに脱水は始まっている。体重の2%の脱水でパフォーマンスが最大10%低下、5%超で作業能力が30%落ちる。発汗テストで自分の汗量を把握し、電解質と水を戦略的に補給する方法を解説する。
脱水はパフォーマンスを静かに蝕む
レース終盤の失速の原因を、多くのランナーが「練習不足」や「カーボ不足」に帰結させる。しかし見落とされがちな原因がある——脱水だ。喉が渇いたと感じたときには、すでに脱水は始まっている。
「Keep well hydrated. Fatigue towards the end of a race may result as much from dehydration as from lack of carbs.」
——Coach Mike
注意すべきは、近年の研究では「機能的脱水」——意図的に若干の脱水状態を維持することで体重を軽くする——を実践するエリートランナーの存在も報告されていることだ。ただしCoach Mikeはこれを「危険な実践」と位置づけている。一般のランナーには推奨しない。
水だけでは危険——電解質の科学
「水をたくさん飲めばいい」というのは誤りだ。水のみを大量摂取すると、血液中のナトリウム濃度が希釈される「低ナトリウム血症(ハイポナトレミア)」が起きる。これは最悪の場合、命に関わる。
電解質補給の原則
- ナトリウムが最重要:発汗によって失われる主要な電解質。クランプ(筋痙攣)の主要原因の一つでもある。塩分を食事にしっかり加えるか、電解質タブレットで補給する
- スポーツドリンクの問題:市販スポーツドリンクの多くは糖分が過剰だとCoach Mikeは指摘する。水+塩分(または電解質タブレット)のほうがシンプルで効果的
- カフェインは利尿剤ではない:かつてはカフェインが脱水を促進すると言われたが、1日400mg以下では利尿効果は軽微であることが示されている。コーヒーを水と一緒に摂れば問題ない
- 「渇く前に飲む」:渇きを感じた時点ですでに脱水は進行している。Coach Mikeのアドバイスは「少しずつ、こまめに」だ
発汗テスト:自分の汗量を科学的に計測する
水分補給の必要量は個人差が非常に大きい。気温・湿度・ペース・体格によっても変わる。自分の発汗量を知るための最も正確な方法が「発汗テスト(スウェットテスト)」だ。
発汗テストの手順
- 準備:体重計を用意。計測前にトイレを済ませる
- 計測前:ウェアを着た状態で体重を計測(kg)
- 走行:30分または60分、一切水分を摂取せずに走る。レースと同様の気温・湿度・ペースで行うのが理想
- 計測後:余分な汗をタオルで拭き取ってから再度体重を計測
- 計算:体重差(g)=水分損失量(ml)。30分で計測した場合は×2して1時間あたりの発汗量を算出
- 例:63.0kg → 62.6kg の場合、400g損失 = 400ml/30分 = 800ml/時間の発汗量
- 注意:真夏の高温多湿での60分テストはリスクが高い。涼しい条件で30分テストから始めること
レース別・水分補給の目安
| 距離・時間 | 補給の目安 | 電解質 | Coach Mikeのアドバイス |
|---|---|---|---|
| 45分以内 | 不要(水のみで可) | 不要 | 終わった後にしっかり水分補給 |
| 60〜90分 | 100ml / 5kmごと | 食事の塩分で対応 | スポーツドリンクより水+塩が望ましい |
| 90分〜フルマラソン | 発汗量の80%を目標に補給 | 電解質タブレットまたはナトリウム入りジェル | 必ず練習で試してから本番へ |
| 高温多湿の場合 | 通常より20〜30%増量 | 必須 | 200ml / 5kmを目安に(Daniel選手のケース参照) |
Coach Mikeがシンガポールマラソンでコーチングしたアスリートは、5kmごとに200mlを目標に補給する計画だったが、体調不良で吸収できず、結果として体重の8%を失いクランプが発生した。計画はあっても、体が受け付けない場合の対処法も練習段階で検討しておく必要がある。
クランプ(筋痙攣)の2大原因と対処法
レース後半のクランプはランナーにとって最も悩ましいトラブルの一つだ。原因は2つある。
原因①:ナトリウム不足
- 長時間の発汗でナトリウムが失われる
- 水のみを大量摂取すると希釈されさらに悪化
- 対処:アイソトニック飲料・塩タブレット・ナトリウム入りジェル
- 予防:食事にしっかり塩分を加える習慣
原因②:筋肉疲労
- 疲労した筋肉が過収縮してけいれんする
- 「週末戦士」に多い:平日は少なく週末に長距離——このギャップが原因
- 対処:長距離中、10〜15分ごとに短い休憩とふくらはぎのストレッチ
- 重要:痙攣が起きてからではなく、起きる前にストレッチする
次回 Vol.03|タンパク質の科学——ランナーが最も軽視している栄養素 →
SA1NT HYBRID RUN CLUB
オーストラリア発のSA1NTが、ニュージーランド在住のCoach Mikeとともに届ける科学的トレーニングのコミュニティ。栄養を戦略にする仲間がここにいる。
クラブの詳細を見る着圧や疲労軽減といった機能面は非常に優れているものの、1度の洗濯で縫い目の糸がほつれが生じるなど、耐久性には不安が残る。
ランニングの動きを邪魔せず、とても快適な着心地でした。シンプルな見た目で、普段着にも使えて重宝しています!
足首がしっかりホールドされている感覚があり、足裏のアーチも保持されている気がして走りやすい!