ベンチマークWOD(Benchmark WOD)とは?ガールズWOD・ヒーローWODを解説

同じ条件で再テストし、体力・技術・戦略の変化を確認する

カテゴリー:入門|Vol.08

執筆・編集:SA1NT JAPAN編集部

専門監修:板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

クロスフィット(CrossFit)では、毎日異なるWODを行う一方で、過去と同じワークアウトを繰り返すことがあります。

その代表が、ベンチマークWODです。決められた動作、回数、重量、形式を一定期間後に再び行い、タイム、回数、重量、動作の質がどう変化したかを確認します。

ベンチマークには女性名が付けられたガールズや、亡くなった軍人・消防士・警察官など、CrossFitコミュニティに関係する人々を追悼するヒーローWODがあります。

先に結論:
ベンチマークWODの目的は、毎回限界まで追い込むことではなく、同じ条件を再現して進歩を測ることです。ガールズは代表的な測定用ワークアウト群、ヒーローWODは追悼の意味を持つワークアウトです。初心者はRXに固執せず、同じスケール条件を記録して再テストしてください。

この記事では、ベンチマーク、ガールズ、ヒーローWODの違い、代表例、記録方法、再テストの考え方、初心者向けの調整方法を解説します。


目次


ベンチマークWODとは?

そもそもベンチマークとは物事を評価・測定する際の「基準」「指標」「目標」のことです。
ベンチマークWOD(Benchmark WOD)は、体力や技術の変化を測る基準として、一定期間後に繰り返すワークアウトです。

CrossFitは2003年、最初のベンチマークワークアウト群を公表し、繰り返し不定期に登場させることで、パフォーマンスと改善を測ると説明しました。

毎回異なるWODだけを行っていると、以前より速くなったのか、強くなったのかを直接比較しにくい場合があります。同じ構成を再テストすることで、変化を確認できます。

ベンチマークで比較できること

  • 完了タイムが短くなった
  • 同じ時間内のラウンド数が増えた
  • より重い重量を使用できた
  • 難しい動作へ進めた
  • セット分割が少なくなった
  • フォームとペースが安定した

タイムだけでなく、動作の質や使用条件も進歩の一部です。

ベンチマークは試合ではない

クラス内でスコアを共有しても、目的は他人との比較だけではありません。自分の過去の記録を基準に、トレーニングの変化を確認します。


なぜ同じWODを繰り返すのか

体力の変化を測る

同じ動作、重量、回数を使い、完了時間が短くなれば、作業能力が向上した可能性があります。

技術の変化を測る

前回はリングローだった人が、今回はプルアップで完了できた場合、単純なタイム比較はできなくても、動作能力は進歩しています。

戦略の変化を測る

前回は序盤に飛ばして後半に止まった人が、今回はセット分割と休憩を計画し、最後まで一定ペースで進められることがあります。

プログラム全体を評価する

複数のベンチマークを使えば、短時間の出力、長時間の持久力、バーベル、体操、ランニングなど、異なる能力の変化を確認できます。

注意:
一つのベンチマークの結果だけで、総合的な体力を判断することはできません。得意種目、体調、睡眠、気温、器具、コースなどにも影響されます。


ガールズWODとは?

ガールズ(Girls)WODは、女性名が付けられた代表的なベンチマークワークアウト群です。

CrossFitは2003年、Angie(アンジー)、バーバラ、チェルシー、Diane(ダイアン)、エリザベス、Fran(フラン)の6つを初期のベンチマークとして紹介しました。その後、ガールズの種類は増えています。

名前が付いているため、長いワークアウト説明を繰り返さなくても、「今日はFran」「次回はCindy(シンディ)」のように共通の基準として認識できます。

それぞれのガールズWODはそれぞれ違った能力を測ります。

ガールズには、次のように異なる構成があります。

  • 自重動作だけの長いWOD
  • バーベルと体操を組み合わせた短いWOD
  • ランニングとケトルベルを含むWOD
  • 単一のウェイトリフティング動作を反復するWOD
  • 一定時間動き続けるAMRAP

そのため、一つのガールズが速くなっただけで、すべての能力が同じように向上したとは限りません。


代表的なガールズ

名称 形式・内容 主に試される要素
Fran(フラン) 21-15-9回、スラスターとプルアップをフォータイム 短時間の出力、バーベル、引く力、セット分割
Grace(グレース) クリーン・アンド・ジャーク30回をフォータイム(非常に短い) ウェイトリフティング技術、筋持久力、速度
Isabel(イザベル) スナッチ30回をフォータイム(非常に短い) スナッチ技術、出力、重量選択
Cindy(シンディー) 20分アムラップ:プルアップ5回、プッシュアップ10回、エアスクワット15回 自重筋持久力、長時間のペース
Helen(ヘレン) 3ラウンド:400mラン、ケトルベルスイング21回、プルアップ12回 ランニング、全身持久力、握力
Diane(ダイアン) 21-15-9回、デッドリフトとハンドスタンドプッシュアップ ヒンジ、頭上プレス、体操技術
Angie(アンジー) プルアップ、プッシュアップ、シットアップ、エアスクワットを各100回 高回数の自重筋持久力

CrossFit公式は、GraceとIsabelをベンチマークとして紹介し、複数回を連続して行い、5分未満で終えられるよう負荷を調整する初心者・中級者向け案を示した例があります。

ただし、目標時間やスケール方法は、現在のコーチング方針、参加者の能力、掲載された日の公式指示によって変わることがあります。


ヒーローWODとは?

ヒーローWOD(Hero WOD)は、亡くなった軍人、消防士、警察官など、CrossFitコミュニティに関係する人々を追悼し、その記憶を残すために作られたワークアウトです。

CrossFit公式によると、2005年から、任務中などに命を落としたサービスメンバーを称えるヒーローワークアウトを掲載しています。

通常のベンチマークと同じようにスコアを記録できますが、背景に追悼の意味があります。名称だけでなく、誰を記念したWODなのかを理解して実施することが大切です。

ヒーローWODについて:
長時間・高回数・高負荷の構成もあります。追悼の気持ちを示すことと、無理なRXで身体を危険にさらすことは同じではありません。適切にスケールして参加してください。


代表的なヒーローWOD

名称 代表的な内容 特徴
Murph(マーフ) 1マイルラン、プルアップ100回、プッシュアップ200回、エアスクワット300回、1マイルラン 非常に高い総量。中央の自重種目は必要に応じて分割する
DT(ディーティー) 5ラウンド:デッドリフト12回、ハングパワークリーン9回、プッシュジャーク6回 同じバーベルを使う握力・重量戦略
CHAD1000X(チャド1000X) ステップアップ1,000回 非常に高い反復量。時間、台の高さ、荷重、チーム形式などの調整が重要

Murph

CrossFit公式のRXでは、最初と最後に1マイルを走り、その間にプルアップ100回、プッシュアップ200回、エアスクワット300回を行います。中央の3種目は必要に応じて分割できます。

経験者の一部はウェイトベストやボディアーマーを使用しますが、初心者が同じ条件を選ぶ必要はありません。

DT

デッドリフト、ハングパワークリーン、プッシュジャークを同じバーベルで行うため、単純な筋力だけでなく、握力、セット分割、バーを置く位置の戦略が重要です。

CHAD1000X

ステップアップを1,000回行う非常に大きな総量のWODです。CrossFit公式ページでは、初心者向けにチーム形式などの選択肢も示されています。初参加では、台の高さ、荷重、総回数、時間を大幅に調整する必要があります。


ガールズとヒーローWODの違い

項目 ガールズ ヒーローWOD
主な役割 パフォーマンス変化を測る代表的なベンチマーク 特定の人物を追悼し、記憶を残す
名称 女性名が付けられている 追悼対象となる人物の名前や呼称
構成 短時間から長時間まで多様 高い総量や厳しい構成を含む場合がある
記録 再テストして進歩を比較する スコアを記録できるが、追悼の背景も重視する
スケーリング 目的と時間領域を保って調整する 背景を尊重しつつ、安全に完了できる内容へ調整する

ヒーローWODも再テストの基準になりますが、すべての名前付きWODがガールズまたはヒーローWODに分類されるわけではありません。


ベンチマークでは何を記録する?

再テストで正しく比較するには、タイムやラウンド数だけでなく、条件を記録します。

記録する項目

  • 実施日
  • 完了タイム、ラウンド、レップ、重量
  • 使用した重量
  • RXまたはスケール内容
  • 変更した動作
  • ボックスの高さ、補助バンド、器具設定
  • セット分割
  • タイムキャップ
  • 体調、睡眠、痛み
  • 気温やランニングコースなど大きな条件差

記録例:Cindy

  • 日付:2026年8月4日
  • スコア:12ラウンド+18レップ
  • プルアップ:リングロー
  • リングの高さ:腰の位置
  • プッシュアップ:床から通常動作
  • メモ:10分以降にプッシュアップを5回ずつ分割

次回も同じリング設定で行えば、より正確に比較できます。

条件が変わった場合

前回より難しい動作や重い重量へ進んだ場合、タイムが遅くなっても後退とは限りません。条件変更を別の記録として残します。


再テストの方法

毎週行う必要はない

ベンチマークは繰り返して使いますが、頻繁に同じWODを行う必要はありません。通常のプログラムの中で、一定期間を空けて再登場させます。

前回の記録を先に確認する

使用重量、動作、セット分割を確認し、同じ条件で比較するか、次の段階へ進むかを決めます。

当日の体調を考慮する

睡眠不足、病後、強い筋肉痛、怪我がある場合、記録更新だけを目的に無理をしません。必要に応じて負荷を下げるか、別日に再テストします。

一つの変数だけを変える

重量、動作、回数を同時に変えると、何が進歩したのか分かりにくくなります。可能なら、一度に一つずつ段階を上げます。

パーソナルレコードだけを成功としない

次の変化も進歩です。

  • 前半と後半のペース差が小さくなった
  • ノーレップが減った
  • 同じタイムで重い重量を使えた
  • 同じ重量でフォームが安定した
  • 過度な疲労を残さず完了できた

初心者向けスケーリング

ベンチマークは、RXでなければ記録にならないわけではありません。初心者は、同じ刺激を得られる内容へ調整し、その条件を記録します。

問題 調整方法 保ちたい要素
重量が重く、1回ずつしかできない 反復できる重量へ下げる ワークアウトの想定速度
プルアップができない リングロー、ジャンピングプルアップなどへ変更 引く動作と反復可能性
総回数が多すぎる 回数またはラウンド数を減らす 全体の構成と時間領域
ランニングに時間がかかりすぎる 距離を短くする、ローイングなどへ変更 各区間にかかる時間と心肺負荷
ヒーローWODの総量が大きすぎる チーム、ハーフ、時間制限などを使う 安全に参加し、追悼の意図を尊重する

同じスケール条件で再テストすれば、自分の進歩を測れます。動作を進める場合は、過去のスコアと別条件として記録します。

関連記事:クロスフィットのスケーリングとは?重量・回数・動作の調整方法


ベンチマークWODでの戦略

前回の失敗を一つ決める

「序盤が速すぎた」「プルアップを限界まで続けた」「トランジションが長かった」など、改善点を一つ明確にします。

セット分割を先に決める

Franの21回を、11+10、7+7+7など、能力に合う形へ分けます。疲れてから考えるより、開始前に計画します。

最初のラウンドを最速にしない

長いベンチマークでは、最初のラウンドの速さより、最後まで維持できるペースが重要です。

短いWODではトランジションもスコアになる

Grace、Isabel、Franのような短時間WODでは、器具へ移る時間、バーを持ち直す時間、休憩の長さが結果に大きく影響します。

動作基準を守る

過去より速くても、ノーレップが多ければ正しい比較になりません。可動域と開始・終了位置を維持します。

関連記事:WODで最初から飛ばしすぎないペーシング方法


よくある失敗

前回と違う条件なのにタイムだけ比較する

重量、動作、器具設定が違えば、同じテストではありません。条件を含めて評価します。

名前付きWODはすべてRXで行うべきだと思う

ベンチマークの価値は、適切な条件を記録し、再現して比較することにあります。

ヒーローWODで無理をする

追悼の意味があっても、安全基準は変わりません。大きな総量は回数、時間、チーム形式などで調整します。

毎回パーソナルレコードを狙う

体調、プログラム周期、環境によって結果は変わります。記録更新だけが成功ではありません。

準備運動で疲れすぎる

動作と重量を確認する必要はありますが、テスト前に高回数を行って消耗しないようにします。

過去の記録を見ずに開始する

前回の重量、動作、分割、失速地点を確認すると、より具体的な戦略を作れます。


よくある質問

ベンチマークWODは何か月ごとに行いますか?

一律の間隔はありません。プログラム全体の中で不定期に再登場します。同じWODを頻繁に繰り返すより、一定期間のトレーニング後に比較する方が変化を確認しやすくなります。

スケールした記録にも意味がありますか?

あります。同じ条件を記録して再テストすれば、タイム、回数、休憩、フォームの変化を比較できます。

次回は必ずRXへ進むべきですか?

いいえ。同じスケール条件で速度とフォームを改善することも進歩です。RXへ進むかは、動作技術、重量、総回数、想定時間から判断します。

ガールズは女性だけが行うWODですか?

いいえ。女性名が付けられたベンチマークという意味で、性別に関係なく行います。重量設定が複数示される場合は、公式内容とコーチの指示を確認します。

ヒーローWODは必ずウェイトベストを使いますか?

いいえ。ウェイトベストがRXに含まれるWODや、追加のチャレンジとして使われる例がありますが、全員に必要ではありません。

Murphのプルアップ、プッシュアップ、スクワットは分割できますか?

CrossFit公式のMurph紹介では、中央の3種目は必要に応じて分割できます。イベントや大会で別のルールが指定される場合は、そのルールへ従います。


まとめ|同じ条件を残すから、進歩が見える

ベンチマークWODは、一定期間後に同じワークアウトを再テストし、体力、技術、戦略の変化を測るために使います。

  • ガールズ:女性名が付けられた代表的なベンチマーク群
  • ヒーローWOD:亡くなったサービスメンバーなどを追悼するワークアウト

正しく比較するために、次を記録してください。

  1. タイム、ラウンド、レップ、重量
  2. RXまたはスケール内容
  3. 変更した動作と器具設定
  4. セット分割と休憩
  5. 体調と大きな環境差

記録更新だけでなく、フォーム、ペース、動作難度、回復まで含めて進歩を評価します。


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参考資料



本記事はSA1NT JAPAN編集部が企画・調査・執筆し、CrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチである板谷友弘氏の専門監修を受けて作成しています。

この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

専門監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Gamesに出場。2021年にはCrossFit GamesのMen 35–39部門で世界15位。さらに2026年には、40歳以上の世界トップ選手が競うMasters CrossFit GamesのMen 40–44部門に出場し、世界29位を記録しました。2026年、日本人として世界最高峰の舞台に立ったのは彼1人のみです。

また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、本格的なランニング競技経験がない中、HYROX大阪大会では総合3位・日本人選手2位に輝きました。

CrossFit Gamesという世界最高峰の舞台を選手として経験し、現在も現役アスリートとして挑戦を続けながら、世界レベルの競技経験と、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、クロスフィット・ゲームズへの出場経験を持つ日本人クロスフィットアスリートです。

現在はCrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチとして、競技者から運動初心者まで幅広く指導しています。また、近年はハイロックスにも挑戦し、クロスフィットで培った筋力、持久力、動作技術、競技戦略を実践しています。

選手として世界大会を経験し、コーチとして多くの会員や競技者を指導してきた知識をもとに、本記事のベンチマークの使い方、再テスト、スケーリング、ペーシングを監修しています。

専門監修の要点:

ベンチマークは、毎回RXや自己ベストを狙うためだけのWODではありません。前回と同じ条件を記録し、フォーム、ペース、セット分割がどう変わったかまで確認することで、次のトレーニング課題が見えます。

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