WODのバーベル重量の選び方|回数・時間・技術で判断

Rxに固執せず、止まらず安全に動ける負荷を選ぶ

カテゴリー:WOD Strategy|Vol.40

執筆・編集:SA1NT JAPAN編集部

専門監修:板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

CrossFitのWODを見たとき、「この重量、Rxでやるべき?」「何kgまで下げればいい?」と迷った経験はないでしょうか。

1回だけ持ち上げるときと、息が上がった状態で10回、20回と繰り返すときとでは重さは違うべきです。

WODでは「持ち上げられるか」ではなく、そのWODが何を求めているかを読み取るべきです。重要なのは、いかに動きを維持できるかです。

WODで使う重量は、「1回持てる重量」ではなく、「狙ったペースとフォームを最後まで維持できる重量」で考える。
Rx重量を持てても、毎回長く休んでしまうなら、そのWODで狙っている強度から外れている可能性があります。

この記事では、回数、セット分割、制限時間、1RM、技術レベル、疲労を基準に、WODで使うバーベル重量の選び方を解説します。

目次


WODの重量は「持てる最大重量」で決めない

まず最も重要なのは、WODの重量と最大筋力テストの重量を分けて考えることです。

例えば、ある重量を1回だけクリーンできたとしても、その重量でクリーンを何十回も繰り返せるとは限りません。

さらにWODでは、クリーンだけを行うとは限りません。バーピー、ラン、ローイング、プルアップなどの種目と組み合わされ、呼吸数や心拍数が上がった状態で再びバーベルを持つこともあります。

そのため、「1回持てるから、このWODでも使える」とは考えないことが大切です。

TONYコーチポイント|「早く動ける重さ」を選ぶ
TONYコーチはCrossFitの強度について、「自分のできる、しっかりと早く動ける重さで、なるべく早く回数をやることが大事」と説明しています。つまり、重い重量を選ぶこと自体が高強度なのではありません。重すぎてバーベルを置き、長時間休んでしまえば、WODとして狙っていた強度から外れてしまうことがあります。


重量を決める前に「このWODは何を狙っているか」を考える

同じバーベル種目でも、WODによって求められる刺激は違います。

例えば、短時間で一気に終えるWODと、15〜20分以上動き続けるWODでは、適切な重量設定は変わります。

WODの特徴 重量を選ぶときの考え方
短時間・高スピード 長い休憩を入れず、素早くレップを続けられる重量
中時間 計画的にセットを分割しながら動き続けられる重量
長時間・高ボリューム 後半でもフォームを維持でき、極端にペースダウンしない重量
高重量がテーマ スピードだけでなく、重い重量を安全に扱うこと自体が刺激になる

大切なのは、ホワイトボードに書かれたRxの数字だけを見るのではなく、そのWODで何分くらい動くのか、何回バーベルを持つのかを見ることです。

「この重量を持てるか?」ではなく、「このWODをこの重量でどう動くことになるか?」まで考える。


① まず「全部で何回持つのか」を確認する

最初に見るべきなのが総レップ数です。

同じ60kgでも、

  • 3回だけ
  • 10回
  • 30回
  • 50回以上

では意味がまったく違います。

レップ数が増えるほど、筋力だけではなく、握力、呼吸、姿勢を維持する能力、疲労への耐性が影響します。

特にクリーン、スナッチ、スラスターなど技術要素の大きい種目では、疲労すると動作そのものが変わりやすくなります。

したがって、高レップのWODでは「最初の数回が楽かどうか」ではなく、後半まで同じフォームで動けるかを基準に考えます。


② 何回ずつ続けてできる重量かを見る

次に考えたいのがセット分割です。

例えば21回のスラスターがあるとして、最初から1回ずつバーベルを置かなければならない重量では、多くの場合、そのWODで想定されているスピードを維持するのが難しくなります。

反対に、21回を非常に余裕を持って終え、ほとんど負荷を感じないのであれば、軽すぎる可能性もあります。

そこで重量を決めるときは、

  • Unbrokenで行くのか
  • 10+6+5のように分けるのか
  • 7+7+7にするのか
  • 5回前後の小さいセットを積むのか

といったセット分割を先に想定すると判断しやすくなります。

TONYコーチポイント|重量だけでなく「繰り返すスピード」を見る
TONYコーチは強度について、スラスターを1回行うたびにバーベルを下ろして長く休んでしまえば、十分に強度が上がらないという趣旨の説明をしています。WODでは「何kgを持ったか」だけではなく、その重量をどのくらいのスピードで繰り返せたかも重要です。


③ 制限時間と目標タイムから逆算する

Time Capが設定されている場合は、それも重要な判断材料になります。

例えば10分程度で終えることを想定したWODなのに、重量が重すぎてバーベル種目だけで10分以上かかってしまえば、本来予定されていた他の種目との組み合わせや運動量が変わってしまいます。

逆に、周囲がRxで行っているからという理由だけでRxを選び、ほとんどの時間をバーベルの前で休んで過ごすのであれば、重量を下げた方がWODの目的に近づける場合があります。

重量を下げることは「WODを簡単にすること」とは限りません。
休憩時間が減り、動き続ける時間が増えることで、むしろかなりきつくなることがあります。


④ 1RMは目安として使う。ただし、それだけでは決めない

バーベル重量を選ぶ際、自分の1RM(1 Rep Max/1回だけ持ち上げられる最大重量)は有用な参考情報です。

ただし、「1RMの○%なら必ず適正」という固定ルールで決めるのはおすすめできません。

同じ1RMを持つ2人でも、高レップへの強さ、バーベルサイクリング、持久力、技術、回復力には差があります。

さらに、

  • デッドリフト
  • クリーン
  • スナッチ
  • スラスター
  • ショルダー・トゥ・オーバーヘッド

では、同じ1RM比率でも難易度は変わります。

そのため1RMは、「その重量が自分にとって重いのか軽いのか」を判断する基準の一つとして使い、レップ数やTime Domainと組み合わせて考えます。


⑤ 疲れた状態でもフォームを保てるか

WODの重量設定で最も注意したいポイントの一つです。

ウォームアップ中にきれいに動けても、WOD開始5分後、10分後にも同じフォームで動けるとは限りません。

特に、

  • 背中が大きく丸まる
  • バーが身体から離れる
  • キャッチ姿勢が崩れる
  • 毎回バランスを失う
  • 本来使うべき脚や股関節を使えなくなる

といった変化が出る重量は注意が必要です。

TONYコーチポイント|疲労しても再現できるフォームを基準にする
TONYコーチはデッドリフトについて、「フォームが崩れる重さまで結構無理してやってしまう」ことをよく見られる問題の一つとして挙げています。またクリーンについても、重量が重くなってくると「重さに気持ちが負けて、普段できているフォームができなくなる」ことがあると説明しています。WODでは疲労が加わります。フレッシュな状態で1回成功した重量ではなく、疲れても再現できるフォームを基準にすることが重要です。


Rxでできても、あえてScaledを選ぶことがある

「Rxの重量を持てるならRxでやるべき」と考える必要はありません。

Rxは一つの基準ですが、その日のWODで最も適切な重量とは限らないからです。

例えばRx重量のクリーンを1回ずつならできるものの、WODでは毎回30秒以上休まなければ次のレップに進めない場合を考えてみましょう。

もしそのWODがテンポよくバーベルを繰り返し、他の種目との組み合わせの中で動き続けることを狙っているのであれば、重量を下げた方が目的に合う可能性があります。

これは「弱くする」のではなく、その日のトレーニング刺激に合わせるスケーリングです。

スケーリングそのものについては、「クロスフィット(CrossFit)のスケーリングとは?重量・回数・動作の調整方法」でも詳しく解説しています。


WOD前にできる重量チェック

実際のクラスでは、ウォームアップセットを使って判断します。

例えばWOD重量まで段階的に上げながら、次のポイントを確認します。

  1. フォームを崩さず動けるか
  2. 予定しているレップ数を続けられそうか
  3. バーベルを置いた後、極端に長い休憩が必要にならないか
  4. 他の種目を行った後でも再びバーベルを持てそうか
  5. 後半まで同じ動作を再現できそうか

一つでも大きな不安がある場合は、少し重量を下げてスタートする方法があります。

WODが始まってから重量を変更できる場合もありますが、最初から適切な重量を選べれば、ペース戦略も立てやすくなります。


迷ったときの5つの判断基準

チェック項目 判断すること
① WODの目的 速く動くのか、重さを扱うのか、長く動き続けるのか
② 総レップ数 バーベルを全部で何回持つのか
③ セット分割 予定している回数で現実的に区切れるか
④ Time Domain 想定されている時間内で動き続けられるか
⑤ 技術 疲れても安全なフォームを再現できるか

特に初心者の場合は、「ギリギリできる重量」より「自信を持って繰り返せる重量」から始める方が、WOD全体を経験しやすくなります。


「重い=強度が高い」ではない

CrossFitでは強度を考えるとき、重量だけを見るわけではありません。

同じ仕事量でも、短い時間で行えば運動の強度は上がります。一方で、重量を重くしすぎて長い休憩が必要になれば、WOD全体としての動きは遅くなります。

だからこそ重要なのが、「自分が速く、正しいフォームで動き続けられる重量」を探すことです。

今日Rxでできたかどうかより、そのWODの狙いどおりにトレーニングできたかを考えてみてください。

Rxはゴールではなく、一つの基準です。
その日のWODで必要な刺激を得るために重量を調整することも、CrossFitのトレーニングの一部です。


よくある質問

WODの重量は1RMの何%くらいにすればいいですか?

1RMに対する割合は一つの参考になりますが、固定された割合だけで決めることはできません。総レップ数、種目、Time Domain、セット分割、技術レベルなどを合わせて判断します。

Rxの重量を1回持てるならRxでやってもいいですか?

1回持てることだけでは判断できません。WODで予定されている回数を、フォームを維持しながら適切なペースで繰り返せるかを確認しましょう。

WOD中にバーベルを毎回落としてもいいですか?

WODの内容によります。高重量でシングルを積み重ねる設計なら問題ない場合があります。一方、連続したバーベルサイクリングが狙いのWODで毎回長く休んでしまう場合は、重量が重すぎる可能性があります。

重量を下げるとトレーニング効果も下がりますか?

必ずしもそうではありません。重量を調整することで休憩が減り、WOD本来のペースや運動量を維持できることがあります。重要なのは、そのWODで狙っている刺激に合わせることです。

初心者はどのように重量を決めればいいですか?

まずフォームを安定して再現できる重量を選びます。そのうえで、予定レップ数、WODの時間、疲労した状態での動作を確認し、必要であればコーチと相談して調整しましょう。


まとめ|WODの重量は「止まらず動けるか」で考える

WODで使うバーベル重量を決めるときは、最大筋力だけで判断しないことが重要です。

  1. WODの目的を確認する
  2. 総レップ数を見る
  3. セット分割を考える
  4. 目標タイムやTime Capを見る
  5. 1RMは参考値として使う
  6. 疲労してもフォームを維持できる重量を選ぶ

そして何より、Rxであることより、狙った刺激を得られることを優先することがポイントです。

重量が重すぎて長時間止まるのでもなく、軽すぎて刺激がなくなるのでもない。

自分の現在の能力に合った、「しっかり動ける重さ」をコーチと相談しながら見つけていきましょう。

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本記事はSA1NT JAPAN編集部が企画・調査・執筆し、CrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチである板谷友弘氏の専門監修を受けて作成しています。


参考資料


この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

専門監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Gamesに出場。2021年にはCrossFit GamesのMen 35–39部門で世界15位。さらに2026年には、40歳以上の世界トップ選手が競うMasters CrossFit GamesのMen 40–44部門に出場し、世界29位を記録しました。2026年、日本人として世界最高峰の舞台に立ったのは彼1人のみです。

また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、本格的なランニング競技経験がない中、HYROX大阪大会では総合3位・日本人選手2位に輝きました。

CrossFit Gamesという世界最高峰の舞台を選手として経験し、現在も現役アスリートとして挑戦を続けながら、世界レベルの競技経験と、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

TONYコーチポイント:

WODの重量は、「1回持てるか」だけで決めないことが大切です。自分がしっかり速く動ける重さで、なるべく動きを止めずに回数を重ねる。その重量が重すぎて毎回バーを置き、長く休む必要があるのであれば、そのWODで狙っている強度から外れてしまうことがあります。また、疲れてくるとデッドリフトで背中が崩れたり、クリーンで普段できているフォームができなくなることがあります。フレッシュな状態で1回できる重量ではなく、WODの後半までフォームとスピードを再現できる重量を選んでみてください。

トニーコーチの情報はこちらから↓
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