SA1NTコーチ【マイク】が教える|心拍計(HR)はなぜ革命的なのか?③
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COACH MIKE — スポーツテクノロジーと走る感覚の科学|③/05
心拍計とランニング科学を解説。HRゾーン、LT、回復管理、Garmin、感覚とデータのバランスを、Coach Mikeの視点から整理します。
心拍計は、現代ランナーにとって非常に大きな進化のひとつです。
以前のランナーは、ペースと感覚を頼りにトレーニングしていました。しかし今では、Garmin、COROS、Polar、Apple Watchなどのウォッチや胸ストラップを使うことで、ランニング中の身体の反応をリアルタイムで確認できます。
これは非常に大きな武器です。特に、ランニングを感覚だけで行うと、イージーランのつもりが実は速すぎたり、疲れているのに無理にポイント練習をしてしまったりすることがあります。
心拍計は、そうした「自分では気づきにくい強度」を見える化してくれます。
Coach Mikeも、心拍計やデータを否定していません。むしろ、有酸素トレーニング、回復管理、レース準備において、心拍データは非常に役立つと考えています。
ただし、ここでも大切なのはバランスです。
心拍は素晴らしい情報です。
でも、心拍だけがランナーのすべてではありません。
数字を見ながら、自分の呼吸、脚の重さ、フォーム、疲労感も同時に感じること。それが、Coach Mikeが大切にする「データと感覚の両立」です。
目次
HRトレーニングは何を変えたのか
心拍計がランニングにもたらした大きな価値は、運動強度を客観的に見られるようになったことです。
同じ5:30/kmのペースでも、ある日は楽に感じ、別の日は苦しく感じることがあります。その違いは、睡眠、疲労、気温、湿度、ストレス、前日の練習などによって起こります。
ペースだけを見ていると、身体への負荷を見誤ることがあります。しかし心拍を見れば、その日の身体がどれくらい働いているかを確認できます。
たとえば、普段なら会話しながら走れるペースなのに、今日は心拍が高い。これは身体が疲れているサインかもしれません。逆に、同じ心拍で以前より速く走れるようになっていれば、有酸素能力が高まっている可能性があります。
このように、心拍は「今日の身体の状態」を知るための重要な手がかりになります。
イージーランを本当にイージーにする
多くの市民ランナーが失敗しやすいのは、イージーランを速く走りすぎることです。
「今日は軽め」と思って走っているのに、実際には心拍が高く、身体にはかなり負荷がかかっている。これが続くと、ポイント練習の日に疲労が残り、思うように走れなくなります。
Coach Mikeは、有酸素の土台づくりを非常に重視しています。そのためには、楽に走るべき日は本当に楽に走る必要があります。
会話ができる、呼吸が乱れすぎない、走り終わった後に余裕が残っている。そうした強度を守るために、心拍計はとても役立ちます。
特に、つい速く走ってしまうランナーにとって、心拍はブレーキになります。「もっと速く走れる」と感じても、心拍が高すぎるなら、その日は抑える。これは弱さではなく、長く強くなるための賢い判断です。
LT・有酸素・回復を見分けるヒント
心拍計は、練習の目的を分けるためにも役立ちます。
たとえば、回復走、有酸素走、テンポ走、インターバルでは、身体への負荷がまったく違います。
回復走なら、心拍は低く抑えたい。ベース作りなら、会話できる程度の有酸素強度で長く走りたい。テンポ走では、ややきついけれど維持できる強度を狙いたい。
心拍を使うことで、こうした練習の目的をより明確にできます。
特に、LT(ラクテート閾値)付近の練習では、ペースだけでなく心拍の変化を見ることで、身体がどの程度の強度で働いているかを確認しやすくなります。
ただし、心拍だけで完璧に強度を決めることはできません。心拍は反応に少し遅れが出るため、短いインターバルではペースや感覚の方が分かりやすい場合もあります。
だからこそ、心拍、ペース、RPE(主観的運動強度)を組み合わせることが大切です。
回復管理とオーバートレーニング予防
心拍データは、走っている最中だけでなく、回復管理にも使えます。
たとえば、朝の安静時心拍が普段より高い時は、疲労、睡眠不足、ストレス、体調不良などが関係している可能性があります。
最近では、HRV(心拍変動)を使って回復状態を見るランナーも増えています。HRVは、身体がどれくらい回復しているかを知るための参考情報のひとつです。
もちろん、これも絶対ではありません。ウォッチが「回復しています」と言っても、脚が重く、気分が悪いなら無理に追い込むべきではありません。逆に、数値が完璧でなくても、軽いジョグなら問題ない日もあります。
Coach Mikeが大切にしているのは、データを「命令」として受け取るのではなく、「判断材料」として使うことです。
心拍データには誤差と揺れがある
心拍計は非常に便利ですが、常に完璧な数字を出すわけではありません。
特に手首式の心拍計は、腕の動き、気温、汗、装着位置、皮膚の状態によって誤差が出ることがあります。より正確に見たい場合、胸ストラップの方が安定しやすいと言われます。
また、心拍そのものも日によって変わります。
- 暑い日
- 湿度が高い日
- 睡眠不足の日
- カフェインを多く取った日
- ストレスが強い日
- 前日の練習が重かった日
こうした条件では、同じペースでも心拍が高くなることがあります。
つまり、心拍が高いから必ず悪い、低いから必ず良い、とは言えません。数字の背景にある身体の状態を読み取ることが重要です。
時計に支配されるランナーにならない
便利なテクノロジーほど、依存しやすくなります。
ウォッチが示すペース、心拍、VO2 Max、リカバリー時間、トレーニングステータス。これらを毎日見ていると、いつの間にか自分の感覚よりも数字を優先してしまうことがあります。
たとえば、身体は疲れているのに、時計が「トレーニング可能」と表示しているから走る。逆に、身体は軽いのに、数字が悪いから不安になる。
これは、テクノロジーを使っているのではなく、テクノロジーに使われている状態かもしれません。
Coach Mikeは、時には時計を見ずに走ることも大切だと考えています。
時計を外して走ることで、呼吸、足音、地面の感覚、風、リズムに意識が戻ります。ランニングは、数字だけのスポーツではありません。身体を使って、地面と対話するスポーツです。
Coach Mikeがすすめる感覚との合わせ方
Coach Mikeがすすめるのは、心拍を使いながら、同時に身体感覚を育てることです。
イージーランでは心拍を確認しつつ、「この強度はどんな呼吸か」「脚はどれくらい軽いか」「会話できるか」を覚えます。
テンポ走では、「この心拍域では、どれくらい集中が必要か」「フォームは保てているか」を確認します。
レースでは、序盤のオーバーペースを心拍で防ぎつつ、後半は身体感覚で粘る必要があります。
理想は、ウォッチがなくても自分の強度がある程度分かる状態です。そのために、心拍計を使う。これが、Coach Mikeが考えるHRトレーニングの正しい使い方です。
まとめ
心拍計は、ランナーにとって非常に有効なテクノロジーです。
有酸素トレーニング、回復管理、オーバートレーニング予防、レースペース管理。多くの場面で、心拍データは判断材料になります。
しかし、心拍だけがすべてではありません。暑さ、睡眠、ストレス、疲労によって心拍は変わります。ウォッチの数値にも誤差があります。
だからこそ、心拍を使いながら、自分の呼吸、フォーム、脚の重さ、リズムを感じることが大切です。
科学を使う。データを使う。でも、身体感覚を失わない。これが、Coach Mikeが大切にするテクノロジーとの付き合い方です。
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心拍やペースを参考にしながらも、自分の呼吸、フォーム、身体感覚を大切にするトレーニングを行います。
この記事を書いたコーチ
Mike Trees(7 x マスターズ世界チャンピオン)
マイクは、長年コーチとして、またトレーナーとして、また選手として活躍してきました。
インスタグラム @run.nrg にて、難しいスポーツ科学を誰にでも分かりやすいように毎日配信しています。
SA1NTとともに、アジアの暑い環境でも快適に使える高機能コンプレッションウェア開発にも携わっています。
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