SA1NTコーチ【マイク】が教える|厚底シューズはなぜ速いのか?②
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COACH MIKE — スポーツテクノロジーと走る感覚の科学|②/05
厚底シューズとカーボンプレートの科学を解説。ランニングエコノミー、反発、安定性、シューズローテーション、そして「シューズに頼りすぎない走り方」をCoach Mikeの視点から整理します。
近年のランニングシューズは、以前とはまったく別物になりました。
特に、厚底フォームとカーボンプレートを組み合わせたレースシューズは、マラソンやロードレースの世界に大きな変化をもたらしました。トップ選手だけでなく、市民ランナーの間でも、レース本番で厚底シューズを選ぶことは珍しくありません。
Coach Mikeも、こうした最新シューズの価値を否定していません。むしろ、パフォーマンスを高めたいなら、シューズテクノロジーには常に目を向けるべきだと考えています。
高反発フォーム、カーボンプレート、軽量素材、ロッカー構造。これらは、ランナーがより効率的に走るための大きな武器になります。
しかし、ここで大切なのは、厚底シューズを「魔法の道具」と考えないことです。
シューズはランナーを助けてくれる。
でも、シューズがあなたの代わりに走ってくれるわけではありません。
どれだけ高性能なシューズでも、フォーム、筋力、接地、身体感覚が伴わなければ、その性能を十分に使うことはできません。
この記事では、厚底シューズがなぜ速いと言われるのか、どのように使えばよいのか、そしてなぜ毎日同じシューズだけで走るべきではないのかを、Coach Mikeの考え方に沿って解説します。
目次
厚底シューズはなぜ速いのか
厚底シューズが注目される理由のひとつは、ランニングエコノミーとの関係です。
ランニングエコノミーとは、簡単に言えば「同じスピードで走る時に、どれだけ少ないエネルギーで走れるか」という考え方です。
同じ4:30/kmで走っていても、あるランナーは余裕があり、あるランナーはすぐに苦しくなります。その違いの一部は、フォーム、筋力、心肺能力、そしてシューズによっても変わります。
近年の厚底シューズは、軽量で反発性の高いフォームを使い、着地時に受けた力を次の一歩へつなげやすいように設計されています。
つまり、厚底シューズは「脚を勝手に速くする」というより、ランナーが生み出した力をより効率よく前へ進む動きに変えるための道具です。
この点は非常に重要です。シューズがエネルギーを生み出してくれるわけではありません。エネルギーを生み出すのは、あくまでランナー自身です。
カーボンプレートは何をしているのか
多くの厚底レースシューズには、カーボンプレートが入っています。
カーボンプレートは、シューズ全体の剛性を高め、着地から蹴り出しまでの動きをスムーズにする役割を持っています。さらに、ロッカー構造と組み合わさることで、足が自然に前へ転がるような感覚を作ります。
レースペースで走っている時、この構造は大きな武器になります。
特に、ある程度スピードが出ていて、フォームが安定しているランナーにとっては、厚底カーボンシューズのメリットを感じやすいでしょう。
一方で、ゆっくりしたジョグや疲れてフォームが崩れている状態では、その恩恵を感じにくい場合もあります。シューズによっては、むしろ不安定に感じることもあります。
Coach Mikeが強調するのは、ここです。
高性能な道具は、正しい場面で使うからこそ価値があります。
反発だけでなく安定性も重要
厚底シューズを選ぶ時、多くのランナーは「反発」や「軽さ」に注目します。
もちろん、それらは重要です。しかし、Coach Mikeは安定性も同じくらい重視しています。
特にフルマラソンやハーフマラソンの後半では、脚が疲れてきます。疲労によって接地が雑になり、左右のブレも大きくなります。その状態で不安定なシューズを履いていると、ふくらはぎ、足首、足底、膝、腰に負担を感じる場合があります。
短い距離では速く感じるシューズでも、長い距離では合わないことがあります。
たとえば、10kmまでは非常に速く走れるのに、20kmを過ぎると足裏やふくらはぎがつらくなる。スピードは出るけれど、接地が安定しない。こうした感覚がある場合、そのシューズがすべての距離に合っているとは限りません。
Coach Mikeの考え方では、シューズ選びで大切なのは「一番速そうなシューズ」ではなく、「自分の身体とレース距離に合うシューズ」です。
高性能シューズにも合う・合わないがある
厚底カーボンシューズは素晴らしいテクノロジーです。
しかし、すべてのランナーに、すべてのモデルが合うわけではありません。
走り方、接地、足首の安定性、ふくらはぎの強さ、体重、レース距離、目標ペースによって、合うシューズは変わります。
たとえば、反発が強いシューズは、スピードが出ている時には気持ちよく感じます。しかし、ゆっくり走る時や疲れてきた時には、硬さや不安定さを感じることがあります。
また、カーボンプレート入りのシューズばかりを履いていると、足裏やふくらはぎ、アキレス腱への刺激が偏る可能性もあります。
Coach Mikeは、レースで高性能シューズを使うことには前向きです。ただし、それを毎日のランニングすべてに使うことには慎重です。
レースシューズは、レースのための武器です。毎日の基礎づくりには、別の役割を持つシューズも必要です。
毎日同じシューズだけを履かない理由
Coach Mikeは、同じシューズだけを毎日履くことをすすめていません。
理由はシンプルです。同じシューズを履き続けると、身体は毎回同じ刺激を受けます。
同じ角度、同じ反発、同じ硬さ、同じ接地感。それが続くと、特定の筋肉、腱、靭帯に負担が偏る可能性があります。
シューズを変えることで、身体に入る刺激も少し変わります。
- レース用シューズ
- イージーラン用シューズ
- 安定性を重視したシューズ
- 軽めのテンポ走用シューズ
- ドリルや芝生用のシューズ
このように目的によって使い分けることで、身体への負担を分散しやすくなります。
これは、最新シューズを否定する考え方ではありません。むしろ、良いシューズを長く、正しい目的で使うための考え方です。
「静かに走る」ことがシューズ寿命にも身体にも重要
Coach Mikeは、シューズの減り方を見ることで、ランナーの走り方が見えてくると考えています。
もしシューズが極端に早くすり減るなら、必ずしもシューズだけが原因ではありません。走り方にヒントがあるかもしれません。
特に、走っている時に足音が大きいランナーは注意が必要です。
大きな着地音は、地面に強くぶつかっているサインかもしれません。これはシューズの消耗を早めるだけでなく、身体にも大きな衝撃を与えます。
逆に、効率よく走れているランナーは、足音が比較的静かです。地面にぶつかるのではなく、身体の下でやわらかく接地し、次の一歩へスムーズにつなげています。
Coach Mikeの考えでは、シューズはランナーを守ってくれる道具ですが、ケガを完全に防いでくれるものではありません。
最終的に身体を守るのは、効率のよいランニングフォームです。
シューズローテーションの考え方
シューズローテーションとは、複数のシューズを目的に応じて使い分けることです。
たとえば、次のように分けることができます。
- レース用:厚底カーボンシューズ。勝負レースや重要なタイムトライアルで使用。
- テンポ走用:軽く反発があり、ある程度スピードを出しやすいシューズ。
- イージーラン用:安定性と快適性を重視したシューズ。
- 芝生・ドリル用:接地感を確認しやすく、身体感覚を磨きやすいシューズ。
すべてのランナーが何足も持つ必要はありません。しかし、少なくとも「レース用」と「普段の練習用」を分けることは、多くのランナーにとって有効です。
レース用シューズを普段から使いすぎると、レース当日の特別感が薄れるだけでなく、シューズの寿命も短くなります。
また、シューズの状態を確認することも大切です。
- ソールが大きくすり減っていないか
- 左右どちらかだけ極端に減っていないか
- ミッドソールが潰れていないか
- アッパーに穴が開いていないか
- 走った後に新しい痛みが出ていないか
こうしたサインが出ている場合は、シューズの交換を考えるタイミングです。
最後はフォームと身体感覚
厚底シューズは、現代ランナーにとって大きな武器です。
しかし、その武器を使いこなすには、ランナー自身の身体が必要です。
フォームが崩れている状態で高反発シューズを履いても、効率よく前に進めるとは限りません。接地が不安定であれば、反発をうまく使えず、身体に余計な負担がかかる場合もあります。
だからこそ、Coach Mikeはシューズだけでなく、走り方そのものを見ることを重視しています。
- 足は身体の真下に近い位置で接地しているか
- 膝は軽く曲がっているか
- 足音は大きすぎないか
- 上半身に力が入りすぎていないか
- シューズに頼りすぎていないか
高性能シューズを使うことは良いことです。
ただし、シューズに走らされるのではなく、自分の身体で走る感覚を持つこと。
これが、テクノロジー時代のランナーに必要なバランスです。
まとめ
厚底シューズとカーボンプレートは、現代ランニングに大きな変化をもたらしました。
パフォーマンスを高めたいランナーにとって、こうしたテクノロジーを活用することは非常に重要です。レースでより良い走りを目指すなら、シューズの進化には常に目を向けるべきです。
しかし、シューズはあくまで道具です。
レース用シューズ、練習用シューズ、イージーラン用シューズを使い分け、自分の身体に合うものを選ぶこと。足音、接地、フォーム、疲労感を観察すること。
最新シューズを使いながらも、自分自身の身体感覚を磨くこと。
それが、Coach Mikeが考える「テクノロジーを味方にする走り方」です。
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この記事を書いたコーチ
Mike Trees(7 x マスターズ世界チャンピオン)
マイクは、長年コーチとして、またトレーナーとして、また選手として活躍してきました。
インスタグラム @run.nrg にて、難しいスポーツ科学を誰にでも分かりやすいように毎日配信しています。
SA1NTとともに、アジアの暑い環境でも快適に使える高機能コンプレッションウェア開発にも携わっています。
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