走り方の科学 — Vol.02 / 05|テンポ走・ファルトレクの科学【乳酸閾値を上げる「気持ちいい苦しさ」の使い方】

走り方の科学 — Vol.02 / 05|テンポ走・ファルトレクの科学【乳酸閾値を上げる「気持ちいい苦しさ」の使い方】
走り方の科学 — Vol.02 / 05

テンポ走・ファルトレクの科学
乳酸閾値を上げる
「気持ちいい苦しさ」の使い方

イージーランで土台を作った次に来るのが「閾値付近」のトレーニングだ。テンポ走とファルトレク——どちらも「速すぎない・遅すぎない」絶妙な強度を使う。その違いと目的、正しい使い方をCoach Mikeが解説する。

COACH MIKE — RUN.NRG 監修:SA1NT HYBRID RUN CLUB 読了時間:約9分

乳酸閾値(LT)とは何か——なぜ重要なのか

ランニングには「快適に走れる強度」と「苦しくなり始める強度」の間に明確な境界線がある。これが乳酸閾値(Lactate Threshold / LT)だ。この閾値を超えると乳酸が急速に蓄積し、筋肉が動かなくなる。レースの後半で脚が動かなくなる主な原因がこれだ。

テンポ走とファルトレクはどちらも、この閾値付近を刺激することで「乳酸閾値そのものを引き上げる」トレーニングだ。閾値が上がれば、より速いペースでより長く走れるようになる。

6/10 テンポ走の正しい強度感覚 「ハードだが維持できる」感覚。短い返答なら話せるが長文は無理。「60分全力で走るとしたら30分でやめた強さ」
70〜80% 最大心拍数の目安 走り終わった後に確認する数字。走りながら心拍計を見ると判断が遅れる。感覚で走り、データは事後確認が原則だ
週1回 推奨頻度 テンポ走・ファルトレクは週1回が上限。それ以上入れると回復が追いつかず80/20ルールが崩れる

テンポ走とファルトレク——2つの違いと使い分け

テンポ走 構造化された閾値走
  • 固定された距離・時間・ペースで行う
  • 30〜40分間、一定の強度を維持する
  • 目標レースペースとの関係が明確
  • 再現性が高く、成長が数値で確認できる
  • スピード強化フェーズに最適
ファルトレク 感覚主導の速度遊び
  • 距離もペースも固定しない——感覚で決める
  • 元気なときは速く、疲れたときは遅く
  • 時計なしで走るのがCoach Mike流
  • 不整地・起伏のあるコースで最も効果的
  • ベース期・オフシーズンの刺激に向く

「ファルトレクはスウェーデン語で『速度遊び』を意味する。元気なときは速く、疲れたときは遅くする——シンプルだが、これが自然な形のスピード・持久力トレーニングだ。私は時計を持たずにファルトレクをする。走り始めと戻ってきた時間をメモするだけ。規則がないことが、このトレーニングの核心だ。オフロードの起伏あるコースで行うのが最善だ。」

— Coach Mike, run.nrg

テンポ走:正しい強度を見極める

テンポ走の強度チェック——3つの基準

✅ 短い返答(「はい」「そうです」程度)なら話せるが、長文は無理
✅ 鼻呼吸は無理。口も使わないと追いつかない
✅ 「60分全力で走るとしたら、30分でやめた強さ」という感覚

❌ 全力疾走に近い強度はテンポ走ではない——それはインターバルの領域だ
❌ 走りながら心拍計を凝視して走るな。感覚で走り、終わってからデータを確認しろ

テンポ走のセッション例

基本テンポ走(30分)— 初〜中級者
ウォームアップ15〜20分イージーラン(会話できるペース)
テンポ本体30分 — 強度6/10。鼻呼吸は無理、でも短い返答はできる強さを維持
クールダウン10分イージーラン → ストレッチ
分割テンポ走(2×20分)— 中〜上級者
ウォームアップ15〜20分イージーラン
1本目20分テンポ — 強度6〜7/10
インターバル5分休息(心拍が落ちるまで立ち止まってもOK)
2本目20分テンポ — 同じ強度を維持。30分連続より乳酸閾値に長く刺激を与えられる
クールダウン10分イージーラン → ストレッチ

ファルトレクのセッション例

ファルトレク 基本例(初〜中級者・30分)
ウォームアップ15分イージージョグ
ファルトレク20分間:「2分ゆっくり → 30秒速く」を繰り返す。または街灯を目印に使う——2本分速く走り、3本分で回復。時計は見ない
クールダウン15分イージージョグ
ファルトレク 応用例(中〜上級者・60分)
ウォームアップ15分イージージョグ
ファルトレク40〜60分:起伏のあるオフロードコースで感覚主導。坂では自然にペースアップ、下りと平地で回復。時計を見ない
クールダウン15分イージージョグ
⚠️ テンポ走で陥りがちな罠

「今日は調子がいいから、もう少し上げよう」——テンポ走中のこの判断が最も危険だ。テンポ走の価値は「ちょうどいい強度」を長時間維持することにある。調子がいい日こそ、設定強度を超えないよう自制することが長期的な成長につながる。

SA1NT HYBRID RUN CLUB

テンポ走・ファルトレクをグループで実践する。一人ではペース判断が難しいテンポ走も、Coach Mikeの指導と仲間のペースで「ちょうどいい強度」が自然に身につく。

クラブの詳細を見る

まとめ:閾値を上げれば、レースが変わる

テンポ走とファルトレクは「追い込む練習」ではなく「閾値を上げる練習」だ。週1回、正しい強度で継続する——それだけで半年後のレースは別物になる。

次回 Vol.03|インターバル・ヒルレップスの科学 では、より高強度な「壊して作る」トレーニングを解説する。

← メディア一覧に戻る