オーバーヘッドスクワット(Overhead Squat)のやり方|安定しない原因と改善法

肩、胸椎、股関節、足首を連動させてバーを支える

カテゴリー:スクワット|Vol.13

執筆・編集:SA1NT JAPAN編集部

専門監修:板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

オーバーヘッドスクワット(Overhead Squat)は、バーベルやPVCパイプを頭上で支えたまま行うスクワットです。

クロスフィット(CrossFit)の9つの基礎動作の一つであり、スナッチのキャッチ姿勢にも直結します。

脚だけでしゃがむ動作ではありません。足裏、足首、膝、股関節、体幹、胸椎、肩、肘、手首を同時に安定させる必要があります。そのため、バーが前へ流れる、腕が曲がる、胸が落ちる、かかとが浮くといった問題が起こりやすい種目です。

先に結論:
バーを頭の真上で支えるのではなく、足の中央の真上に保ちます。腕を伸ばし、肩を能動的に安定させ、体幹を固めたままスクワットします。重量を増やす前に、PVCや軽いバーで安定した位置を作ることが重要です。

この記事では、グリップ、バーの位置、アクティブショルダー、深さ、可動域、よくある失敗、改善ドリルを順番に解説します。


目次


オーバーヘッドスクワットとは?

腕を伸ばしてバーを頭上で支え、その姿勢を保ちながらしゃがんで立ち上がる動作です。

CrossFit公式は、オーバーヘッドスクワットを体幹のコントロール、安定性、バランス、機能的な柔軟性を高める種目として説明しています。また、スナッチを習得するための重要な補助種目でもあります。

主に求められる能力

  • スクワットの基本フォーム
  • 足裏と体幹の安定
  • 肩を頭上で保つ力
  • 胸椎を起こす動き
  • 股関節と足首の可動域
  • バーと身体のバランス

エアスクワットが安定していない状態で頭上に負荷を加えると、スクワットの問題がさらに大きく現れます。

関連記事:エアスクワットの正しいやり方


CrossFit公式動画|The Overhead Squat

次の動画は、CrossFit公式チャンネルによる「The Overhead Squat」です。オーバーヘッドスクワットの基本姿勢と動作を確認できます。

動画では、グリップ幅、バーの位置、肘、肩、体幹、しゃがむ深さ、立ち上がりを視覚的に確認できます。本文ではCrossFit公式の基本ポイントに沿って解説しています。

映像で確認したいポイント

  • 左右のグリップ幅がそろっているか
  • 肘を伸ばしてバーを上へ押しているか
  • バーが足の中央の真上にあるか
  • 胸が大きく落ちていないか
  • 膝がつま先と同じ方向へ動いているか
  • かかとが床に残っているか
  • 立ち上がりでもバーの位置が動いていないか

なぜオーバーヘッドスクワットは難しい?

バーが身体から離れた頭上にあるため、少しの姿勢変化でもバランスが崩れます。

例えば、胸が前へ倒れると、バーも前へ流れます。それを防ごうとして肩だけを後ろへ引くと、腰を反りすぎることがあります。

難しさの正体

  • 足首が動かないと胸が前へ倒れる
  • 股関節が詰まると深さを作れない
  • 胸椎が丸まると腕を頭上へ保てない
  • 肩が安定しないとバーが前後へ動く
  • 体幹が抜けると腰を反って代償する
  • 手幅が合わないと肘や手首へ負担がかかる

一つの部位だけでなく、全身の連動が必要です。


グリップ幅の決め方

一般的には、スナッチと同じ広めのグリップを使います。

開始時の目安

バーを腰の前で持ち、腕を伸ばしたときにバーが股関節の折れ目付近へ来る幅から始めます。

手幅が狭すぎると、肩と胸椎へ大きな可動域が必要になります。広すぎると、バーを強く支えにくくなります。

左右を同じ位置にする

バーの目印を利用して、左右の手幅をそろえます。片側だけ広いと、肩や体幹の位置がねじれます。

握り方

親指をバーへ回し、手全体で握ります。軽いPVCでも、ただ手のひらへ乗せず、握って安定させます。

適切な手幅は個人差があります。
肩幅、腕の長さ、胸椎、スナッチの技術に合わせて、コーチと調整してください。


正しいオーバーヘッド姿勢

立った状態で、バーを足の中央の真上へ置きます。

横から見た位置

バー、肩、股関節、足の中央がおおむね縦に並びます。

バーが顔の前にあると前へ落ちやすく、背中側へ大きく移動すると腰を反りやすくなります。

肘を伸ばし、腕をロックします。曲がったまま支えると、重量を筋肉だけで受け続けるため不安定になります。

脇の向き

肩をすくめるだけではなく、上腕を安定させます。肘の内側を前方へ向ける意識が合う人もいますが、過度に回して手首や肩を痛めないようにします。

肋骨と骨盤

バーを後ろへ保とうとして肋骨を前へ開き、腰を強く反らさないようにします。腹部を固め、肋骨と骨盤を安定させます。


アクティブショルダーとは?

アクティブショルダー(Active Shoulder)は、腕を伸ばしただけで脱力せず、肩周辺の筋肉を使ってバーを安定させる状態です。

CrossFit公式では、バーへ上向きの力を加え続けるような姿勢として説明されます。

意識すること

  • 肘を伸ばす
  • バーを上へ押し続ける
  • 肩を安定させる
  • 上背部の張りを保つ
  • 握りを緩めない

肩をすくめればよい?

単に首を短くするように肩をすくめるだけではありません。腕、肩甲骨、上背部を使い、バーの位置を安定させます。

頭上姿勢チェック

  • 肘が伸びている
  • 左右の手幅が同じ
  • バーが足の中央上にある
  • 肩が脱力していない
  • 腰を反りすぎていない
  • 頭が自然に腕の間へ入っている

オーバーヘッドスクワットの正しい動作手順

  1. バーを広めのグリップで持つ
  2. バーを安全に頭上へ上げる
  3. 肘を伸ばし、肩を安定させる
  4. 足をスクワット幅へ調整する
  5. 足裏全体で床を踏む
  6. 腹部へ力を入れる
  7. 股関節と膝を曲げてしゃがむ
  8. 膝をつま先と同じ方向へ動かす
  9. バーを足の中央の真上へ保つ
  10. 姿勢を保てる深さまで入る
  11. バーを上へ押しながら立ち上がる
  12. 膝と股関節を伸ばして終える

視線

極端に上や下を見ず、自然に前方を見ます。頭の位置が大きく変わると、バーの位置も動きやすくなります。


バーを足の中央上に保つ

バーの位置は、オーバーヘッドスクワットで最も重要なポイントの一つです。

バーが足の中央から外れると、身体は前後へ倒れないように別の部位で補います。

バーの位置 起こりやすいこと 確認する項目
前へ流れる 胸が落ちる、かかとが浮く、前へ落とす 足首、胸椎、肩、体幹、手幅
後ろへ流れる 腰を反る、つま先が浮く、後ろへ落とす 肩を引きすぎていないか、体幹
左右へ傾く 片側へ体重が移る、腕の高さが変わる 手幅、肩、股関節、足裏の左右差

横から動画を撮る

自分ではバーが真上にあるように感じても、実際には前へ流れていることがあります。軽い重量で横から撮影し、バーが足の中央上にあるか確認します。


どこまで深くしゃがむ?

基本的なスクワット基準は、股関節の折れ目が膝の上端より下へ入ることです。

ただし、バー、肩、体幹、足裏を保ったまま深さを作ります。

深さを優先しすぎない

バーが前へ流れる、肘が曲がる、かかとが浮く、腰が大きく丸まる場合は、重量または深さを下げます。

現在の深さから改善する

ターゲットを使い、安定してしゃがめる深さを確認します。可動域が改善したら、ターゲットを少しずつ低くします。

深さの前に守ること

  1. 足裏が床に残る
  2. 膝とつま先の方向がそろう
  3. 肘が伸びている
  4. バーが足の中央上にある
  5. 体幹を保てる

この条件を保ちながら、スクワットの基準へ近づけます。


肩・胸椎・股関節・足首の役割

腕を頭上へ上げ、バーを安定させる可動域と力が必要です。

胸椎

上背部が丸まると、腕を真上へ保ちにくくなります。肩だけの問題に見えても、胸椎が制限になっている場合があります。

股関節

股関節を十分に曲げ、膝とつま先の方向を保ちながら深さを作ります。

足首

膝が前へ動くための足首の可動域が不足すると、胸が前へ倒れ、バーも前へ流れやすくなります。

バーが前へ流れる=肩だけが硬い、とは限りません。
足首、股関節、胸椎、肩、体幹、グリップを分けて確認します。


よくある間違いと修正方法

間違い 起きていること 修正方法
バーが前へ流れる 胸が落ちる、肩や足首が制限される 重量を下げ、横からバー位置を確認する
肘が曲がる 肩が不安定、重量が重い PVCで腕を伸ばし、上へ押し続ける
かかとが浮く 重心が前へ流れる 足裏全体を保ち、足首と深さを調整する
膝が内側へ入る 足裏と膝の方向が崩れる 膝をつま先方向へ保つ
腰を強く反る 肩や胸椎の不足を腰で補う 肋骨と骨盤を保ち、重量を下げる
胸が落ちる 体幹、足首、胸椎が制限になる ターゲットと軽い負荷で練習する
左右へ傾く 手幅、肩、股関節に左右差がある 左右の握りと足裏を確認する

崩れる原因の見分け方

PVCではできるが、バーではできない

安定性または筋力が制限になっている可能性があります。重量を小さく刻みます。

かかとを少し高くすると改善する

足首の可動域が関係している可能性があります。ただし、恒久的な解決と決めつけず、全体を評価します。

手幅を広げると改善する

肩または胸椎の要求が下がった可能性があります。広げすぎて安定性を失わない範囲で調整します。

ボックスへ浅くしゃがむとできる

深い位置で可動域または姿勢が崩れています。安定した深さから段階的に進めます。

腕だけが疲れる

肩と上背部でバーを安定させられていない、または重量が重すぎる可能性があります。


オーバーヘッドスクワットの改善ドリル

PVCパススルー

広いグリップでPVCを持ち、肘を伸ばしたまま頭上から背中側へ動かします。痛みのない範囲で行います。

ウォールスクワット

壁の近くで壁に向かってしゃがみ、胸を落とさず股関節を下へ入れる練習です。

オーバーヘッドホールド

PVCまたは軽いバーを頭上で支え、足の中央上に保つ感覚を作ります。

ポーズオーバーヘッドスクワット

安定した深さで2〜3秒止まり、足裏、膝、バー、体幹を確認します。

テンポオーバーヘッドスクワット

3〜5秒かけて下り、バーが動き始める位置を確認します。

スナッチバランス

頭上のキャッチとスクワットを練習する動作です。オーバーヘッドスクワットが安定してから、コーチの指導で行います。

練習例

  • PVCパススルー 8〜10回
  • オーバーヘッドホールド 15秒×3セット
  • テンポオーバーヘッドスクワット 5回×3セット
  • ポーズオーバーヘッドスクワット 3回×3セット

初心者向けスケーリング

PVCパイプ

最初はPVCでバー位置、肘、肩、深さを練習します。

軽いトレーニングバー

PVCで安定したら、軽いバーへ進みます。空の20kgバーが重すぎる場合は使いません。

浅いターゲット

安定する深さへボックスやボールを置き、姿勢を維持します。

フロントスクワット+プレートホールド

頭上姿勢と深いスクワットを同時に作れない場合、スクワットと頭上保持を分けて練習する方法があります。

ダンベルオーバーヘッドスクワット

片手または両手で行う方法がありますが、バーベルより簡単とは限りません。肩の左右差を確認する目的で使われることがあります。

関連記事:クロスフィットのスケーリングとは?


スナッチとの関係

スナッチ(Snatch)では、バーを床から一動作で頭上へ運び、オーバーヘッドスクワットのボトムに近い姿勢で受けます。

そのため、オーバーヘッドスクワットが不安定だと、スナッチのキャッチも不安定になります。

共通する要素

  • 広いグリップ
  • 肘を伸ばした頭上姿勢
  • アクティブショルダー
  • 足裏と体幹の安定
  • 深いスクワット
  • バーを足の中央上に保つ

ただし、オーバーヘッドスクワットができれば、スナッチ全体が自動的にできるわけではありません。スナッチには床からの引き、加速、身体の下へ入るタイミングも必要です。

関連記事:スナッチの基本フォーム


重量と回数の選び方

オーバーヘッドスクワットでは、重量より先に安定性を確認します。

目的 回数例 負荷の考え方
フォーム習得 3〜5回 PVCまたは軽いバー
安定性 3〜5回 全レップでバー位置を保てる
筋力 1〜3回 セーフティとコーチの管理下で行う
WOD 設定による 疲労下でも肘、バー、深さを保てる

重量を下げるサイン

  • 肘が曲がる
  • バーが前後へ動く
  • 深さが急に浅くなる
  • かかとが浮く
  • 腰を強く反る
  • 肩、手首、腰に痛みが出る

安全上の注意

失敗した場合に、バーを安全に落とせる環境で行います。

前へ落とす

バーが前へ流れた場合は、握り続けず前へ離します。身体も後ろへ移動します。

後ろへ落とす

バーが後ろへ流れた場合は、バーを後ろへ離し、身体を前へ移動します。

周囲を空ける

バーの前後に人、器具、壁がないことを確認します。

痛みを我慢して行わないでください。
肩、肘、手首、腰、膝に鋭い痛みがある場合は中止し、コーチまたは医療専門職へ相談してください。


よくある質問

Q.オーバーヘッドスクワットでバーが前へ落ちます

A.肩だけでなく、足首、胸椎、体幹、手幅、スクワットの深さを確認します。まずPVCで横からバー位置を見てください。

Q.肩が硬い人は手幅を広げればよいですか?

広げることで改善する場合がありますが、広すぎると安定性が低下します。痛みのない範囲で調整します。

Q.空のバーでもできません

A.20kgのバーを使う必要はありません。PVC、軽いトレーニングバー、浅いターゲットから始めます。

Q.かかとの下にプレートを置いてよいですか?

A.足首の制限を確認する方法や一時的な調整として使われることがあります。ただし、原因が足首だけとは限りません。

Q.腰が反ってしまいます

A.肩や胸椎の不足を腰で補っている可能性があります。肋骨と骨盤を保ち、手幅、重量、深さを調整します。

Q.オーバーヘッドスクワットは毎回深く行うべきですか?

A.基本基準は股関節の折れ目が膝の上端より下へ入る深さですが、姿勢を崩したまま無理に深くしません。

Q.スナッチより先に練習すべきですか?

A.オーバーヘッド姿勢とスクワットを先に安定させることは、スナッチのキャッチ習得に役立ちます。


まとめ|バーを上へ押しながら、足の中央上に保つ

  1. スナッチ幅のグリップを作る
  2. 左右の手幅をそろえる
  3. 肘を伸ばす
  4. 肩を能動的に安定させる
  5. 腹部を固める
  6. 足裏全体で床を踏む
  7. 膝をつま先方向へ動かす
  8. バーを足の中央上に保つ
  9. 姿勢を保てる深さまでしゃがむ
  10. バーを上へ押しながら立ち上がる

オーバーヘッドスクワットが安定しない原因は、肩だけとは限りません。足首、股関節、胸椎、体幹、グリップを分けて確認します。

まずPVCで安定した位置を作り、軽いバー、深さ、重量の順に進めます。


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参考資料



この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

専門監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Gamesに出場。2021年にはCrossFit GamesのMen 35–39部門で世界15位。さらに2026年には、40歳以上の世界トップ選手が競うMasters CrossFit GamesのMen 40–44部門に出場し、世界29位を記録しました。2026年、日本人として世界最高峰の舞台に立ったのは彼1人のみです。

また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、本格的なランニング競技経験がない中、HYROX大阪大会では総合3位・日本人選手2位に輝きました。

CrossFit Gamesという世界最高峰の舞台を選手として経験し、現在も現役アスリートとして挑戦を続けながら、世界レベルの競技経験と、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

CrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチとして、競技者から運動初心者まで幅広く指導しています。

本記事では、グリップ、頭上姿勢、スクワット、可動域、改善ドリル、重量設定、安全管理について専門監修を受けています。

🌐 CrossFit Uninterrupted

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