WODのトランジションを速くする|道具配置と動線の作り方
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動作速度を上げず、止まっている秒数を削る
カテゴリー:WOD Strategy|Vol.41
執筆・編集:SA1NT JAPAN編集部
専門監修:板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)
CrossFitのWODでタイムを縮めようとすると、ついPull-upを速くする、Burpeeを速くする、バーベルを速く回す、といったMovementそのもののスピードに目が向きます。
しかし、もう一つ見落としやすい時間があります。
それがトランジション(Transition)です。
例えば、Rowを終えてからバーベルへ移動する。
Pull-upバーから降りて、チョークをつけ、バーベルの前へ歩く。
Burpeeを終えて、少し立ち止まり、それから次のMovementへ向かう。
この間は、時計は進んでいますが1レップも増えていません。
トランジションで5秒余分に使い、それが10回あれば50秒。
Movementを無理に速くするより、こうした「何もしていない時間」を減らす方が、フォームを崩さずタイムを縮められることがあります。
この記事では、道具の配置、動線、チョーク、グリップ、休憩位置、バーベルへの入り方などから、WODのトランジションを速くする方法を解説します。
目次
- トランジションとは?
- トランジションは「0レップの時間」
- ① WOD前に道具の配置を決める
- ② 最短の動線を作る
- ③ 前のMovementが終わる前に次を考える
- ④ 道具の前まで行ったらすぐ始める
- ⑤ チョークを「休憩場所」にしない
- ⑥ グリップやギアの切り替えを考える
- ⑦ 休むなら次のMovementの近くで休む
- ⑧ バーベル・ロー・ボックス別の準備
- For Time・AMRAP・EMOMで変える
- よくあるトランジションの失敗
- トランジションも練習する
- よくある質問
- まとめ
トランジションとは?
CrossFitでいうトランジションとは、一つのMovementを終えてから、次のMovementを開始するまでの切り替え時間です。
例えば、
- Rowを終える → バーベルを持つ
- Pull-upを終える → Wall Ballを持つ
- Runから戻る → バーベルを持つ
- Thrusterを終える → Pull-upバーへ移動する
といった部分です。
さらに広い意味では、ラウンドとラウンドの間の切り替えも含めて考えられます。
この時間にはレップがありません。
しかし時計は止まりません。
トランジションは「休憩」ではなく、WODの一部。
次のMovementにどう入るかまで含めて、1つのWODとして考えます。
トランジションは「0レップの時間」
例えば5ラウンドのWODを考えてみます。
1ラウンドに3回のトランジションがあり、それぞれ5秒余分にかかった場合、
5秒 × 3回 × 5ラウンド = 75秒
です。1分15秒。
これをMovementそのものだけで縮めようとすると、かなり大変です。
しかし各トランジションを5秒から2〜3秒にできれば、動作速度を無理に上げなくてもタイムは変わります。
しかもMovementを速くするのとは違い、筋力や心肺能力を大きく消耗する必要もありません。
まず削りたいのは「苦しい時間」ではなく「何もしていない時間」。
WODの動画を見返すと、本人が思っている以上に、歩いている時間、立っている時間、道具を触っている時間が長いことがあります。
① WOD前に道具の配置を決める
トランジションは、WODが始まってから頑張るだけではありません。
スタート前の準備でかなり変わります。
例えば、
- バーベルをどちら向きに置くか
- ボックスをどこに置くか
- Wall Ballをどこへ戻すか
- チョークをどこに置くか
- 水やタオルをWOD中に本当に使うのか
- 次のMovementへ何歩で行けるか
を先に確認します。
ただ近づければいいというわけではありません。
他の選手との距離、バーベルが転がる可能性、Box JumpやBurpeeの着地スペースなどを確保しながら、安全な範囲で動線を短くします。
「道具を近くする」ではなく、「安全に最短で移動できる配置」にする。
② 最短の動線を作る
次に見るのが、MovementとMovementをつなぐルートです。
例えばPull-upバーからバーベルまで行くときに、
バーから降りる → 後ろへ3歩 → チョーク → 横へ歩く → バーベル
となっているなら、かなり移動しています。
一方、必要なチョークを事前に使い、バーから降りた方向にバーベルがあれば、
バーから降りる → バーベル
だけになります。
1回では数秒でも、ラウンド数が増えるほど差が大きくなります。
WOD前に一度、実際に
- スタート位置
- 1種目目
- 2種目目
- 3種目目
- 次のラウンド
まで歩いてみると、無駄な動線に気づきやすくなります。
③ 前のMovementが終わる前に次を考える
トランジションが遅くなる大きな理由の一つが、Movementが終わってから次の行動を考えることです。
例えばRowの残り2 Calories。
ここで既に、
「終わったら右足からストラップを外す → 左足 → 立つ → バーベルへ行く」
と決めておきます。
Runの残り20mなら、
「戻ったらそのままバーベルの前まで行って3呼吸以内に持つ」
と決めておく。
前のMovementが終わった瞬間に判断を始めるのではなく、次に何をするかを先に決めておくことで停止時間を減らせます。
④ 道具の前まで行ったらすぐ始める
WODでよく起きるのが、次のMovementまで素早く移動したのに、そこで止まってしまうことです。
例えばバーベルまで歩く>バーを見る>手を腰に当てる>呼吸する>もう一度バーを見る>そしてようやく持つ。
これでは移動を速くしても、トランジション全体は速くなりません。
「次の道具まで行く」ではなく、「次の1レップを始める」までがトランジション。
そこで事前に、
- バーに着いたら2呼吸で持つ
- Pull-upバーに着いたらすぐジャンプする
- Wall Ballを拾ったらそのまま1レップ目へ入る
など、自分なりのスタートルールを決めます。
⑤ チョークを「休憩場所」にしない
Pull-up、Toes to Bar、Deadliftなどが入るWODでは、チョークを使うことがあります。
問題は、チョークそのものよりチョークまで歩く時間です。
セットが終わる>チョークまで歩く>手につける>少し立つ>また道具まで戻る。
これを毎ラウンド行えば、大きな時間になります。
チョークが必要なら、
- どのタイミングで使うか決める
- 必要以上に毎セットつけない
- 使用可能な環境なら動線上に置く
- チョークをつけながら長く休まない
ことを考えます。
「チョークをつける」と「休憩する」をセットにしない。
チョークが必要なら使う。ただし、それを理由に毎回10〜20秒止まらないようにします。
⑥ グリップやギアの切り替えを考える
CrossFitでは、鉄棒とバーベル、Row、Burpeeなど異なるMovementを続けて行います。
ここでグリップ、ベルト、リストラップなどのギアを毎回大きく付け外しすると、それ自体がトランジションになります。
例えば、Pull-upのたびにグリップを装着し、バーベルの前ですべて外し、次のPull-up前でもう一度付け直す。
この作業が必要なら、その時間までWOD戦略に含める必要があります。
TONYコーチポイント|Movementの切り替えまで考えてグリップを選ぶ
TONYコーチはグリップについて、鉄棒とバーベルなど複数のMovementが組み合わされる場合、指穴に指を通すタイプは外す作業が少し面倒になることがあると説明しています。一方、指なしタイプなら、手のひら側へグリップを外して素手に近い状態でバーベルを握り、また鉄棒ですぐ使うといった切り替えがしやすくなります。ギアは性能だけでなく、「WODの中で素早く切り替えられるか」まで考えることもポイントです。
もちろん、どのギアを使うかはMovement、本人の好み、手の状態、競技ルールなどによって変わります。
大切なのは、WOD開始後に初めて「これ外した方がいいかな」と考えないことです。
⑦ 休むなら次のMovementの近くで休む
疲れたときに休憩が必要になることはあります。
その場合も、どこで休むかでトランジションは変わります。
例えばRunから戻って疲れているからと、バーベルから3m離れた場所で立ち止まる。
10秒休む。
そのあとバーベルまで歩く。
さらに2〜3秒構えて持つ。
これなら、最初からバーベルの前まで行って呼吸を整えた方が、再開までの時間を短くできることがあります。
Pull-upならバーの近く。
Wall Ballならボールの近く。
次に使う道具の近くまで移動してから休めば、呼吸が戻った瞬間に再開できます。
休憩が必要でも、「休憩+移動」という2つの停止時間を作らない。
⑧ バーベル・Row・Box別の準備
バーベル
バーを毎回同じ方向から持つのかを決めます。
プレートやカラーが緩んでいないかもスタート前に確認します。
重量変更があるWODなら、使用するプレートの順番まで先に考えておきます。
Row
足のストラップを必要以上にきつく締めすぎると、乗り降りに時間がかかります。
WOD前に自分が乗り降りしやすい位置を確認します。
ハンドルを戻す位置も毎回同じにしておくと、次に乗ったとき探す時間を減らせます。
Box
Box JumpやBox Jump Overでは、着地スペースを必ず確保します。
次のMovementへ向かう方向も考え、最後のレップが終わったあと余分に回り込まなくていい配置を考えます。
Wall Ball
セット終了後にボールが遠くへ転がると、次のセットで拾いに行く時間が増えます。
安全を優先しながら、次に取りやすい場所へ戻すことを意識します。
For Time・AMRAP・EMOMでトランジションを変える
For Time(フォータイム:タイムで)
ゴールまでの総時間を競うため、トランジションの短縮がそのままタイム短縮につながります。
特にラウンド数が多いWODでは、1回あたり数秒でも積み重なります。
AMRAP(As Many Rounds/Reps As Possible/アムラップ:回数で)
決められた時間の中でレップ数を増やします。
長いAMRAPではMovementを無理に速くして後半失速するより、トランジションを一定にして止まる時間を減らす方が安定しやすくなります。
EMOM(Every Minute on the Minute/イーモム:毎分)
EMOMでは、Movementを終えてから次の分までの休憩時間が決まります。
複数Movementを1分内に行う場合は、トランジションを短縮することで、その分だけ休憩を多く確保できます。
よくあるトランジションの失敗
| 失敗 | 起きること | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 道具の位置を決めていない | 毎回違う方向へ歩く | スタート前に動線を確認する |
| チョークへ毎回行く | 歩く時間と休憩が増える | 使うタイミングを決める |
| 道具の前で止まる | 移動後にさらに休憩が入る | 何呼吸で始めるか決める |
| ギアを毎回付け外す | Movement間の作業が増える | WOD全体を見て使い方を決める |
| 疲れると歩き回る | 休憩+移動時間が増える | 次の道具の近くで休む |
| 器具を近づけすぎる | バーベルや着地との接触リスクが増える | 安全スペースを確保した上で最短化する |
| Movement終了後に次を考える | 判断のために数秒止まる | 前のMovement中に次の行動を決める |
トランジションも練習する
トランジションは、WODだけで改善する必要はありません。事前に短い練習を入れて確認します。例えば、
STEP 1|2種目だけ用意する
- 5 Pull-ups
- 5 Thrusters
STEP 2|Movementではなく切り替えを見る
Pull-upが終わってからThrusterの1レップ目まで何秒かかったかを確認します。
STEP 3|無駄な行動を1つだけでも減らす
チョークへ行った>バーの前で止まった>余分に歩いた>グリップを付け直した。
などを確認します。
STEP 4|同じ流れを再現する
毎回同じ位置から降り、同じルートを通り、同じ呼吸数で次へ入ります。
STEP 5|実際のWODで試す
WOD後に、
- どこで止まったか
- どこで歩いたか
- チョークを何回使ったか
- 道具の前で何秒止まったか
- ギアの変更に時間がかかったか
を振り返ります。
TONYコーチポイント|速い人ほど「Movement以外」も準備している
WODでは、Movementの能力だけでなく、次のMovementへどう入るかもタイムに影響します。使うギア、道具の位置、切り替え方をWOD開始前に決めておけば、疲れてから余計な判断をする必要がありません。トランジションもフォームやセット戦略と同じように、事前に決めて練習しておくことが大切です。
よくある質問
WODのトランジションとは何ですか?
一つのMovementを終えてから、次のMovementを始めるまでの切り替え時間です。器具まで歩く時間、チョークを使う時間、ギアを切り替える時間、道具の前で止まっている時間なども含めて考えます。
トランジションを速くすると本当にタイムは変わりますか?
ラウンド数やMovement数が多いWODほど差が積み重なります。例えば1回5秒の余分な停止が10回あれば50秒になります。Movementを速くせずに短縮できる部分として見直す価値があります。
器具はできるだけ近くに置いた方がいいですか?
近ければいいわけではありません。バーベルが転がる範囲、Box Jumpの着地、Burpeeのスペース、他の選手との距離など、安全を確保することが最優先です。その範囲内で無駄な歩数を減らします。
疲れたら次の種目へ行く前に休んだ方がいいですか?
休憩が必要なら取ります。ただし、遠い場所で休んでから次の道具まで歩くと、休憩と移動が別々に発生します。可能であれば次の道具の近くまで移動し、そこから再開できる状態で呼吸を整える方法があります。
チョークは毎セット使った方がいいですか?
必要性はMovementや汗の量、グリップによって変わります。毎セット習慣的に使うのではなく、本当に必要なタイミングを考えます。チョークを使うこと自体より、チョークまで歩いて長く止まることに注意します。
グリップはトランジションに影響しますか?
影響する場合があります。鉄棒とバーベルが交互に出てくるWODでは、装着や取り外しに時間がかかるタイプより、切り替えやすいタイプが使いやすい場合があります。普段の練習で、自分が何秒で切り替えられるかも確認しておくとよいでしょう。
トランジションは速ければ速いほどいいですか?
必ずしもそうではありません。息が上がりすぎている場合や、高重量・高技術Movementへ入る前には、短く呼吸を整えることが必要な場合があります。重要なのは無意識に止まることを減らし、必要な休憩と無駄な停止を分けることです。
まとめ|Movementを速くする前に「止まっている時間」を減らす
- トランジションもWODの一部として考える
- スタート前に道具の配置を決める
- 安全を確保しながら最短の動線を作る
- 前のMovement中に次の行動を決めておく
- 道具まで行ったら1レップ目をすぐ始める
- チョークを休憩場所にしない
- グリップやギアの切り替え時間も考える
- 休むなら次のMovementの近くで休む
- バーベル、Row、Boxなどの準備を事前に決める
- For Time・AMRAP・EMOMで切り替え方を変える
- WOD後に「どこで止まったか」を振り返る
- トランジションそのものも練習する
WODのタイムを縮めたいとき、Movementをさらに速くしようとすると、その分だけ心拍や筋疲労も大きくなります。
しかしトランジションには、まだ使っていない時間が残っていることがあります。
歩く・道具を見る・チョークへ行く・手を腰に当てる・また歩く
こうした時間を一つずつ減らしていきます。
「Movementを5%速くする」前に、「何もしていない5秒」を探してみてください。
フォームやペースを崩さなくても、WOD全体のタイムを縮められる可能性があります。
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- WODのバーベル重量の選び方|回数・時間・技術で判断
- グリップファティーグ(Grip Fatigue)を防ぐ|WODで握力を残す戦略
本記事はSA1NT JAPAN編集部が企画・調査・執筆し、CrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチである板谷友弘氏の専門監修を受けて作成しています。
参考資料
- CrossFit公式:Your CrossFit Open Game Plan
- CrossFit公式:Why Stance and Grip Are CrossFit's Critical Performance Details
この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。
専門監修
板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)
板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Gamesに出場。2021年にはCrossFit GamesのMen 35–39部門で世界15位。さらに2026年には、40歳以上の世界トップ選手が競うMasters CrossFit GamesのMen 40–44部門に出場し、世界29位を記録しました。2026年、日本人として世界最高峰の舞台に立ったのは彼1人のみです。
また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、本格的なランニング競技経験がない中、HYROX大阪大会では総合3位・日本人選手2位に輝きました。
CrossFit Gamesという世界最高峰の舞台を選手として経験し、現在も現役アスリートとして挑戦を続けながら、世界レベルの競技経験と、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

TONYコーチポイント:
WODのタイムを縮めるときは、Movementを速くすることだけでなく、MovementとMovementの間をどうつなぐかも考えてみてください。例えば鉄棒とバーベルが組み合わされるWODなら、使うグリップによっても切り替えやすさが変わります。僕の場合、指なしのグリップなら鉄棒から降りたあと手のひら側へ外して、そのままバーベルを握ることができ、次の鉄棒でもすぐ使えます。道具の位置、チョーク、使うギア、次のMovementへの入り方をWOD前に決めておけば、疲れた状態で余計な判断をしなくて済みます。Movementを無理に速くする前に、まず何もしていない時間を減らせないか見てみてください。
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