クロスフィット(CrossFit)のエンジンを強くする|ゾーン2とインターバル

長く動く土台と、高強度を繰り返す能力を分けて鍛える

カテゴリー:WOD Strategy|Vol.44

執筆・編集:SA1NT JAPAN編集部

専門監修:板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

CrossFitでよく使われる「エンジンが強い」という表現。

これは単に長距離を走れることだけを意味するわけではありません。

長いWODでも動き続けられる。

心拍が上がってもペースを維持できる。

高強度で動いたあと、短い時間で回復してもう一度動ける。

Row、Bike、Run、SkiErgだけでなく、Burpee、Wall Ball、Thrusterなどを組み合わせても呼吸をコントロールできる。

こうした能力が、CrossFitで必要になる「エンジン」です。

エンジンを強くするには、「毎回きつくする」だけでは足りません。
長く動き続ける有酸素の土台と、高い強度を繰り返す能力。それぞれ目的を分けてトレーニングすることが重要です。

この記事では、Zone 2(ゾーン2)、閾値付近のトレーニング、インターバルをどう使い分け、CrossFitのWODで回復しながら動き続ける能力を作るかを解説します。

目次


CrossFitでいう「エンジン」とは?

CrossFitで「エンジンがある」と言われる人は、ただ長時間運動できる人ではありません。

例えば10〜20分のWODで、

  • 最初から最後まで大きくペースを落とさない
  • 心拍が上がってもMovementを続けられる
  • セット間の休憩が短い
  • 次のMovementへすぐ入れる
  • 高強度を何度も繰り返せる

といった特徴があります。

逆に、最初の1〜2分は非常に速いのに、そのあと急激にペースが落ちる場合は、最大出力は高くても、その出力を支えるエンジンが十分ではない可能性があります。

CrossFitのエンジンとは、「長く動ける能力」+「高強度から回復して、また動ける能力」。


有酸素と無酸素は完全に別ではない

トレーニングでは「有酸素運動」「無酸素運動」と分けて説明されることがあります。

しかし実際のCrossFitでは、どちらか一方だけを使っているわけではありません。

短く非常に強い運動では、より速くエネルギーを供給できるシステムへの依存が大きくなります。

一方、運動時間が長くなるほど、酸素を利用してエネルギーを作る酸化系の役割が大きくなります。

さらに高強度WODでも、短い休憩中やペースを落とした場面では、有酸素能力が回復を支えています。

有酸素能力は「ゆっくり走るためだけ」の能力ではありません。
高強度のセットとセットの間で回復し、もう一度出力を上げるためにも重要です。


Zone 2(ゾーン2)とは?

Zone 2とは、心拍数などを基準に運動強度をいくつかのゾーンへ分けたときの、比較的低〜中強度の領域です。

一般的な目安としては、最大心拍数の約65〜75%前後として扱われることがあります。

ただし、最大心拍数の推定式や心拍ゾーンの設定方法には違いがあるため、数字だけで完全に判断する必要はありません。

感覚としては、

  • 呼吸は少し増える
  • 長時間続けられる
  • 短い会話ならできる
  • 序盤から脚が焼けるような感覚にはならない
  • 終了後に完全に消耗しない

程度の強度が一つの目安になります。

CrossFitでは刺激の強いWODが多いため、Zone 2のような低〜中強度のトレーニングは、高強度とは違う刺激を与える方法になります。

CrossFitでは刺激の強いWODが多いため、Zone 2のような低〜中強度のトレーニングは、高強度とは違う刺激を与える方法になります。

Zone 1〜5の違いや、心拍数を使ったトレーニング強度の考え方をさらに詳しく知りたい方は、SA1NTコーチ・Mike Treesによるこちらの記事も参考にしてください。

▶ SA1NTコーチ【マイク】が教える|ペースと心拍数の科学② 心拍数ゾーンとは?ゾーン1〜5の意味と正しい使い分け


Zone 2は「楽なトレーニング」ではなく土台作り

Zone 2は強度が低いため、「これで本当にCrossFitが強くなるの?」と思うかもしれません。

しかし目的が違います。

Zone 2では、短時間の最大出力ではなく、一定の運動を長く維持できる有酸素の土台を作ります。

この土台があることで、高強度運動の間でも回復しやすくなり、長いWODで一定ペースを維持しやすくなります。

Zone 2で鍛えたいのは、「苦しさに耐える能力」ではなく、「苦しくなりすぎず動き続けられる能力」。

毎回最後まで追い込む必要はありません。

むしろZone 2の日に強度を上げすぎると、狙っていた低〜中強度の刺激から外れてしまいます。


インターバルは何を鍛える?

一方で、CrossFitでは低強度の持続運動だけでは足りません。

WODでは、

強く動く。

少し休む。

また強く動く。

という場面が非常に多くあります。

そこで使われるのがインターバルトレーニングです。

例えばBikeなら、

  • 2分強く漕ぐ → 1分ゆっくり
  • 4分やや高強度 → 2分回復
  • 30秒強く → 30秒回復

など、目的によって仕事時間と休憩時間を変えます。

ポイントは、単純に1本だけ全力で行うことではありません。

ある程度高い出力を、複数セット繰り返せることが重要です。

1本目だけ速いインターバルではなく、最後のセットまで大きく出力を落とさない。
CrossFitのWODでも必要になる「高強度を繰り返す能力」を鍛えます。


Zone 2とインターバルの違い

Zone 2 インターバル
主な目的 有酸素の土台を作る 高い出力と回復を繰り返す
強度 低〜中強度 中〜高強度
運動時間 比較的長い 短〜中時間を複数セット
呼吸 コントロールできる 大きく上がる
脚の疲労 蓄積させすぎない セットによって大きくなる
CrossFitへのつながり 長いWOD、セット間の回復 高強度WOD、Repeated Efforts

どちらが優れているという話ではありません。

目的が違うため、両方を使い分けることが重要です。


WODで重要なのは「回復しながら動く」能力

CrossFitで有酸素能力が重要になる理由の一つが、回復です。

例えば、

10 Calories Bike → 10 Thrusters → 10 Pull-ups

というWODを考えてみます。

Bikeで心拍が上がる。

Thrusterで脚と肩を使う。

Pull-upで握力と上半身を使う。

そしてまたBikeへ戻ります。

ここで必要なのは、完全に休んで心拍を元へ戻す能力ではありません。

次のMovementを行いながら回復できることです。

例えばBikeへ戻った最初の数秒は少し出力を抑え、呼吸を整えながらまたペースへ戻す。

これもCrossFitにおけるエンジンの使い方です。

強い人は「疲れない」のではなく、動きながら回復するのが上手い。


Bike・Row・Run・SkiErgを使い分ける

有酸素能力を鍛える方法はRunだけではありません。

CrossFitでは、さまざまなモノストラクチュラルMovementを使えます。

Movement 特徴 使い方の例
Bike 脚主体。アサルトバイクなどは腕も使い全身運動になる Zone 2、短〜長インターバル
Row 脚・体幹・腕を連動して使う Zone 2、閾値、インターバル
Run シンプルで競技への転移も大きいが、着地衝撃がある Zone 2、Tempo、Interval
SkiErg 上半身と体幹も大きく使う Zone 2、インターバル

同じ「10 Calories」や「500m」でも、Bike、Row、SkiErg、Runでは負荷も時間も同じではありません。

そのため、過去の記録と比較するときは、使ったマシンやMovementも記録しておきます。


TONYコーチが解説するCrossFitの有酸素マシン

TONYコーチは、CrossFitで心肺機能を高める代表的なマシンとして、アサルトバイク、ローイングマシン、ランニングマシン、SkiErgを紹介しています。

TONYコーチポイント|CrossFitのカーディオは「全身を使う」
TONYコーチはアサルトバイクについて、脚だけでペダルを漕ぐのではなく腕も一緒に動かすため、全身を使って多くの酸素を必要とし、心肺機能を高めるトレーニングになると説明しています。ローイングでも、脚で押し、身体を使い、最後に腕で引くというように全身を連動させます。CrossFitで使われるカーディオマシンは、身体の一部だけではなく全身を大きく動かしながら酸素を使うことが特徴の一つです。

アサルトバイク

TONYコーチは、一般的なBikeのように脚だけを使うのではなく、アサルトバイクでは腕も一緒に動かすため、全身運動になる点を挙げています。

その分、多くの筋肉を使い、強度を上げれば酸素需要も大きくなります。

ローイングマシン

Rowでは、最初に脚で押し、身体を使い、最後に腕で引きます。

TONYコーチも、脚から体幹、腕まで全身を動かすことで、効率よく有酸素運動を行えると説明しています。

ランニングマシン

CrossFitで使われる自走式のランニングマシンでは、自分の脚でベルトを動かします。

TONYコーチは、外を走るような感覚で脚の筋肉を使いながら走る点を特徴として挙げています。

SkiErg

SkiErgは、クロスカントリースキーのような動きをマシン上で行います。

上半身だけで引くのではなく、身体を使ってハンドルを下ろすため、ここでも全身運動になります。

マシンが違っても共通するのは、「大きな筋群を使って全身で動く」ということ。
Zone 2ならその動きを長く維持し、インターバルなら同じマシンで高い出力を繰り返すことができます。


目的別トレーニング例

実際にエンジンを鍛える場合は、目的を先に決めます。

① 有酸素の土台を作りたい

Bike、Row、Run、SkiErgなどを使い、低〜中強度で一定時間動き続けます。

例えば、

  • 30〜40分 Bike
  • 30分 Row
  • 30〜45分 Easy Run
  • BikeとRowを交互に行いながら一定強度を維持

などです。

重要なのは、途中から競争のように強度を上げないことです。

② 長いWODでペースを維持したい

少し強度を上げた長めのインターバルを使います。

例えば、

  • 4分 Row + 1分 Easy × 5
  • 5分 Bike + 1分 Easy × 4
  • 800m Run + Easy Jog × 複数セット

などです。

1本目だけ速くせず、最後まで同じ出力を狙います。

③ 高強度WODの回復力を高めたい

より短いインターバルを使う方法があります。

例えば、

  • 30秒 Strong / 30秒 Easy
  • 1分 Strong / 1分 Easy
  • 2分 Strong / 1分 Easy

などです。

ここでも「毎回All Out」にする必要はありません。

最後のセットまで再現できる強度を探します。

TONYコーチポイント|目的によってマシンの使い方を変える
アサルトバイク、Row、Run、SkiErgは、ただ「カロリーを消費するマシン」ではありません。低い強度で長く行えば有酸素の土台作りに使えますし、強度を上げて仕事と休憩を繰り返せば、CrossFitで必要な高強度からの回復能力を鍛えることもできます。何分やったかだけでなく、何を鍛えるためにその強度で行ったのかを考えることが大切です。


エンジントレーニングでよくある失敗

よくある失敗 起きること 修正ポイント
Zone 2なのに毎回速くする 低強度の日が中〜高強度になる 目的の強度を守る
インターバル1本目を全力 後半の出力が急激に落ちる 全セット再現できる出力から始める
毎日高強度 疲労が抜けずパフォーマンスが落ちる 強度の低い日も作る
心拍数だけを見る 疲労、暑さ、睡眠などを無視する 呼吸・RPE・出力も合わせて見る
マシンを毎回変えて記録しない 成長を比較しにくい 使用マシン・時間・距離・Caloriesを記録する
「有酸素=ダイエット」だけで考える 競技能力への役割を見失う 心肺・回復・持続出力のトレーニングとして考える

WODとどう組み合わせる?

CrossFitの通常クラスを週に何回行っているかによって、追加するエンジントレーニングの量は変わります。

すでに週4〜5回CrossFitを行い、高強度WODが多い人が、さらに毎日高強度インターバルを追加する必要はありません。

むしろ追加するなら、低〜中強度の有酸素トレーニングが不足していないかを見る方法があります。

反対に、長時間ゆっくりした有酸素運動ばかり行っていて、高い出力を繰り返すことが苦手なら、インターバルを入れる余地があります。

足りない能力を補う。
「Zone 2が流行っているからZone 2」「HIITが効率的だから毎回HIIT」ではなく、自分のCrossFitトレーニング全体を見て決めます。

また、StrengthやSkillの質を落とすほど疲労を残さないことも重要です。

有酸素トレーニングも、CrossFit全体のプログラムの一部として考えましょう。


よくある質問

CrossFitの「エンジン」とは何ですか?

長時間動き続ける有酸素能力だけでなく、高強度で動いたあとに回復し、再び高い出力を出せる能力まで含めて使われる表現です。長いWODのペーシングやセット間の回復にも関係します。

Zone 2とは何ですか?

心拍ゾーンで見た比較的低〜中強度の運動領域です。一般的には最大心拍数の約65〜75%前後を目安にする方法がありますが、設定方法によって数値は変わります。呼吸をコントロールしながら長時間続けられる強度として考えることもできます。

Zone 2だけやればCrossFitの持久力は上がりますか?

Zone 2は有酸素の土台作りに役立ちますが、CrossFitでは高強度を繰り返す能力も必要です。そのため、通常のWODやインターバルなど、異なる強度のトレーニングも組み合わせます。

インターバルは毎回全力で行った方がいいですか?

目的によります。複数セットで高い出力を繰り返すことが目的なら、1本目で完全に使い切らず、最後まで大きく出力を落とさない強度を選ぶ方が適しています。

BikeとRowではどちらが有酸素能力向上にいいですか?

どちらも使えます。Bike、Row、Run、SkiErgにはそれぞれ使う筋群や技術的な特徴があります。目的、身体への負担、得意不得意に合わせて使い分けるのがおすすめです。

アサルトバイクは有酸素運動ですか?

強度によって有酸素トレーニングにも高強度インターバルにも使えます。腕と脚の両方を使うため全身運動になりやすく、低強度で長く漕ぐことも、短時間高出力を繰り返すこともできます。

Row、Bike、SkiErgのCaloriesは同じですか?

同じ数字でも完全に同じ負荷や時間になるとは限りません。マシンやMovementによってCaloriesの増え方が異なるため、過去記録を比較するときは使用した機器も記録しておきましょう。

有酸素運動はダイエットのためだけに行うものですか?

いいえ。CrossFitでは、有酸素能力は長いWODを維持すること、高強度セット間の回復、心肺機能の向上など、パフォーマンス面でも重要です。消費カロリーだけで考える必要はありません。

CrossFitをしている人もZone 2を追加した方がいいですか?

必ず追加すべきとは限りません。普段のWODの頻度、強度、現在の弱点、回復状態によって変わります。高強度トレーニングが多く低強度の持続運動が少ない場合には、Zone 2を追加する選択肢があります。


まとめ|Zone 2で土台を作り、インターバルで高強度を繰り返す

  1. CrossFitのエンジンは「長く動く+回復してまた動く」能力
  2. 有酸素と無酸素は完全に別々に働くわけではない
  3. Zone 2は低〜中強度で有酸素の土台を作る
  4. Zone 2の日に毎回強度を上げすぎない
  5. インターバルでは高い出力を複数セット繰り返す
  6. 1本目だけではなく最後のセットまで再現する
  7. 有酸素能力はWOD中の回復にも関係する
  8. Bike、Row、Run、SkiErgを目的に応じて使う
  9. CrossFitのカーディオマシンは全身を使うものが多い
  10. Caloriesや距離は異なるマシン間で単純比較しない
  11. 毎日高強度にする必要はない
  12. 自分のトレーニングで不足している能力を補う

CrossFitでエンジンを強くしたいとき、毎回息ができなくなるまで追い込む必要はありません。

ゆっくり長く動く。

一定ペースを維持する。

高い出力を出す。

回復する。

そしてまた出力を上げる。

それぞれは違う能力です。

Zone 2で長く動ける土台を作り、インターバルとWODで高強度を繰り返す能力を鍛える。

この両方が組み合わさることで、長いWODでも止まりにくく、苦しくなってからもう一度ペースを上げられるエンジンにつながります。

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本記事はSA1NT JAPAN編集部が企画・調査・執筆し、CrossFit Uninterruptedのオーナー兼ヘッドコーチである板谷友弘氏の専門監修を受けて作成しています。


参考資料


この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

専門監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach/CrossFit Uninterrupted オーナー兼ヘッドコーチ)

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Gamesに出場。2021年にはCrossFit GamesのMen 35–39部門で世界15位。さらに2026年には、40歳以上の世界トップ選手が競うMasters CrossFit GamesのMen 40–44部門に出場し、世界29位を記録しました。2026年、日本人として世界最高峰の舞台に立ったのは彼1人のみです。

また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、本格的なランニング競技経験がない中、HYROX大阪大会では総合3位・日本人選手2位に輝きました。

CrossFit Gamesという世界最高峰の舞台を選手として経験し、現在も現役アスリートとして挑戦を続けながら、世界レベルの競技経験と、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

TONYコーチポイント:

CrossFitで心肺機能を高めるとき、Runだけが有酸素運動ではありません。アサルトバイクでは脚だけでなく腕も使いますし、Rowでは脚で押して、身体を使い、最後に腕で引きます。SkiErgも含め、CrossFitでよく使うカーディオマシンは全身を大きく動かすものが多く、その分たくさんの酸素を使います。同じマシンでも、低い強度で長く続けることもできますし、強度を上げてインターバルにすることもできます。大事なのは、ただ疲れるまでやるのではなく、今日は長く動く土台を作るのか、高い出力を繰り返す練習をするのか、目的を決めて強度を選ぶことです。CrossFitのWODでは、心拍が上がった状態から回復してまた次のMovementへ入る能力も必要なので、いろいろな強度を使い分けてエンジンを作っていきましょう。

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