ハイロックス向けラントレーニング|クロスフィッターが走力を上げる方法

カテゴリー:トレーニング|Vol.07

CrossFitを長くやっている人がHYROXに挑戦すると、最初にぶつかりやすい壁があります。

それが、ランニングです。

ローイング、スキーエルゴ、ウォールボール、ランジ、重いものを扱う動きには慣れている。ジムの中で40分、60分動き続けるワークアウトも経験している。だから、HYROXもある程度いけるだろう。

そう思って出てみると、想像以上にランで苦しむ人が少なくありません。

トニーコーチ自身も、CrossFitを約10年続けてきた中で、ランニングはほとんどやってこなかったと話しています。ジムの中で長時間動く体力はあっても、1kmランを8回、しかも種目の後に走り続ける体力は別物だったというのが、実際にHYROXに取り組んで感じた大きな学びです。

この記事では、CrossFit経験者がHYROXで走力を上げるために、何から始めるべきか、どんなランニング練習を入れるべきか、そしてファンクショナル種目とどう組み合わせていくべきかを、トニーコーチの実体験をもとに整理します。


目次


CrossFit経験者がHYROXでランに苦しむ理由

CrossFit経験者は、HYROXで有利な部分をたくさん持っています。

ローイングやスキーエルゴに慣れている人も多く、ウォールボール、ランジ、サンドバッグ、キャリーのような全身を使う動きにも抵抗が少ないはずです。

さらに、苦しい状態で動き続けるメンタルもあります。

それでも、HYROXに出るとランで大きく差が出ます。

理由はシンプルです。

HYROXでは、1kmランを8回行うからです。

しかも、ただ8kmを走るわけではありません。

スキーエルゴの後に走る。

スレッドプッシュの後に走る。

スレッドプルの後に走る。

バーピーブロードジャンプの後に走る。

サンドバッグランジの後にも走る。

つまり、脚や心肺に負荷が入った状態で、何度も走り直さなければいけません。

トニーコーチは、HYROX大阪のレース分析で、上位選手との差が一番出たのはランだったと振り返っています。1kmあたり15〜20秒の差でも、8本になると2〜3分の差になります。

HYROXでは、この2〜3分がかなり大きな差です。

ファンクショナル種目で少し速くできても、ランで毎回落ちてしまうと、全体タイムはなかなか縮まりません。

関連記事:HYROXタイプ別:これからやるべきトレーニング方法


HYROXは「ジム体力」だけでは走れない

CrossFit経験者が勘違いしやすいのは、ジムの中で長時間動ける体力と、HYROXで走れる体力を同じものだと考えてしまうことです。

トニーコーチも、CrossFit時代には40分、60分の長いワークアウトを経験してきました。バイク、ローイング、バーピー、バーベル、体操系の動きを組み合わせた長いEMOMのようなトレーニングも行ってきたと話しています。

しかし、HYROXに必要なランニング体力は、それとは別の能力でした。

ジムの中で長く動けることと、1kmを一定ペースで走り、その後に種目を行い、また走ることは違います。

特にCrossFit経験者は、短時間で高い出力を出す能力や、重いものを扱う能力には優れていることが多いです。

一方で、一定のペースを崩さず、何度も走り続ける能力は、別に作る必要があります。

HYROXで結果を出したいなら、ジムの中のワークアウトだけでなく、外に出て走る時間を作ることが必要です。


まず必要なのは、ゆっくり長く走るベース作り

ランニングをほとんどしてこなかったCrossFit経験者が、最初にやるべきことは、いきなり速く走ることではありません。

まずは、ゆっくり長く走るベース作りです。

トニーコーチも、HYROXに向けたランニング練習の中で、週に走る距離の多くをゆっくりしたジョグに使っていると話しています。

目安としては、会話ができるくらいのペースです。

息が上がりすぎず、長く続けられるスピードで走ります。

この練習の目的は、速くなることだけではありません。

  • 走る動きに体を慣らす
  • 脚への衝撃に慣れる
  • 心肺のベースを作る
  • 長く動き続ける感覚を作る
  • ケガをしにくい体にする

CrossFit経験者は、心肺が強いからといって、いきなり走る距離やスピードを上げすぎることがあります。

しかし、ランニングでは足首、膝、股関節、ふくらはぎ、ハムストリング、腸脛靭帯などに反復的な負荷がかかります。

心肺は大丈夫でも、脚の組織がまだランニングに慣れていないことがあります。

まずはゆっくり走ること。

ここを飛ばさないことが、HYROXのラン強化では大切です。


ジョグだけでは足りない理由

ゆっくりしたジョグは大切です。

ただし、ジョグだけではHYROXのランは強くなりきりません。

HYROXでは、レース中にかなり高い心拍数で動き続けます。

スレッドプッシュやバーピーブロードジャンプで心拍が上がった状態から、また1km走らなければいけません。

そのため、楽なペースで長く走る練習だけでは、レース中の「きついけれど維持しなければいけないペース」に対応しにくくなります。

トニーコーチも、最初はゆっくり距離を稼ぐジョグを大切にしながら、それだけでは伸びきらないと感じたと話しています。

そこで取り入れたのが、レースペースに近いランニングです。

HYROXでは、楽なジョグではなく、ややきついけれど維持できるペースで走る能力が重要になります。

この領域を鍛えることで、種目の後でもランが大きく落ちにくくなります。


HYROXに必要なレースペース走

HYROXで走力を上げるためには、レースペースに近い練習が必要です。

トニーコーチは、乳酸閾値に近いペース、つまり「かなりきついけれど、ギリギリ維持できる」ようなペースでの練習が重要だと話しています。

これは、全力疾走ではありません。

かといって、楽なジョグでもありません。

呼吸は上がる。

脚も重くなる。

でも、フォームを崩さず、一定時間押し続けられる。

このペース帯が、HYROXのランにかなり近くなります。

たとえば、20〜30分のテンポ走は有効です。

最初から速く入りすぎず、最後までフォームを保てるペースで走ります。

CrossFit経験者の場合、苦しくなると力で押し切ろうとしがちです。しかし、HYROXでは力任せに走ると後半で崩れます。

必要なのは、きつい中でもリズムを保つことです。

腕振り、接地、呼吸、姿勢。

これらを崩さずに、一定のペースを維持する練習がHYROXには必要です。


1kmインターバルはHYROXと相性が良い

HYROXでは、1kmランを8回行います。

そのため、1km単位のインターバル練習は非常に相性が良いです。

トニーコーチも、1km走って、1分ほどジョグでつなぎ、また1km走るようなインターバルを取り入れていると話しています。

この練習の良いところは、HYROX本番に近い感覚を作りやすいことです。

HYROX本番では、1km走ったら完全に休むわけではありません。種目に入り、また走ります。

インターバル練習でも、1km走った後に完全に止まるのではなく、軽くジョグでつなぐことで、心拍を落としすぎずに次の1kmへ入る練習になります。

メニュー例

  • ウォームアップ:10〜15分ジョグ
  • 1km × 4〜6本
  • レスト:1〜2分ジョグ
  • クールダウン:10分ジョグ

ペースは、最初から全力にしないことが大切です。

1本目だけ速く、後半で大きく落ちるようでは、HYROX向きの練習になりません。

4本なら4本、6本なら6本を、なるべく安定したペースで走ることを目指します。

HYROXでは、最初のランだけ速くても意味がありません。

大事なのは、6本目、7本目、8本目でどれだけ落とさず走れるかです。


週2〜3回しか走れない人のメニュー例

CrossFitも続けながらHYROXを目指す場合、ランニングに使える時間は限られます。

毎日走れる人ばかりではありません。

トニーコーチも、CrossFitをやりながらHYROXのランを強化するなら、ただ全部をジョグにするのではなく、限られた回数の中で目的を分けることが大切だと話しています。

週2回走れる場合

  • 1回目:ゆっくりジョグ 30〜50分
  • 2回目:1kmインターバル または 20分テンポ走

週2回しか走れないなら、1回はベース作り、もう1回はHYROXに近い強度にします。

ジョグだけにしてしまうと、レースペースに慣れません。

逆に、毎回きつい練習にすると、脚が持たず、CrossFitの練習にも悪影響が出やすくなります。

週3回走れる場合

  • 1回目:ゆっくりジョグ 40〜60分
  • 2回目:1kmインターバル 4〜6本
  • 3回目:20〜30分テンポ走 または 短いHYROXコンボ

週3回走れるなら、かなり準備しやすくなります。

ジョグでベースを作り、インターバルで1kmを走る力を作り、テンポ走やコンボでレースに近い苦しさに慣れていきます。

CrossFitとの組み合わせ方

ランを増やす時は、CrossFitの脚トレーニングや高強度ワークアウトとの重なりに注意が必要です。

重いスクワットをした翌日に1kmインターバルを入れると、フォームが崩れやすくなります。

また、きついメットコンの翌日にテンポ走を入れると、疲労が抜けずに質が落ちる場合もあります。

HYROXに向けては、ただ練習を足すのではなく、全体の疲労を見ながら組むことが大切です。


ランとファンクショナルを組み合わせるタイミング

HYROXは、ランとファンクショナル種目を組み合わせる競技です。

だからといって、最初から毎回ランと種目を混ぜれば良いわけではありません。

トニーコーチは、ここをかなり重要なポイントとして話しています。

まずはランを単体で作る。

スレッドやウォールボールも単体で作る。

その後に、ランとファンクショナルを組み合わせる。

この順番が大切です。

CrossFitでマッスルアップを練習する時と同じです。

いきなり疲れた状態のワークアウトでマッスルアップを成功させようとするのではなく、まず単体で動きを作り、次に回数を増やし、そこから他の種目と組み合わせていきます。

HYROXのランも同じです。

ランそのもののフォームやペースができていない段階で、毎回スレッドやバーピーと混ぜてしまうと、ただ苦しいだけで終わりやすくなります。

まずは単体のランを強くする。

その上で、少しずつHYROXらしい組み合わせに進めていく方が、長期的には伸びやすくなります。


疲れた状態で走る練習を入れる

ラン単体の力が少しついてきたら、次は疲れた状態で走る練習を入れます。

HYROX本番では、毎回フレッシュな状態で走れるわけではありません。

特に、スレッドプッシュ、バーピーブロードジャンプ、サンドバッグランジの後は、脚が重くなります。

その状態で、どれだけフォームを崩さず走れるかが重要です。

ジムがある場合のメニュー例

  • 1kmラン + スレッドプッシュ
  • 1kmラン + スレッドプル
  • 1kmラン + バーピーブロードジャンプ
  • 1kmラン + サンドバッグランジ

最初から全部を通す必要はありません。

1〜2種目だけ組み合わせて、動きの質を保つことを優先します。

ジムがない場合のメニュー例

  • 1分間バーピー → 1kmラン
  • 1分間スクワット → 1kmラン
  • ランジ20〜30歩 → 1kmラン
  • 腕立て伏せ + スクワット → 1kmラン

トニーコーチも、ジムがなくても、普段走っている場所で1分間バーピーやスクワットをしてから走るだけでも、HYROXに近い負荷を作れると話しています。

大切なのは、普段のランニングとは違う状態で、ペースを維持する練習をすることです。

疲れたから一気に落ちるのではなく、疲れていても最低限のフォームとピッチを保つ。

この能力が、HYROXの後半で効いてきます。


ランを増やす時に注意したいこと

CrossFit経験者がHYROXに向けてランを増やす時、注意したいのは急に増やしすぎないことです。

心肺が強い人ほど、最初から走れてしまいます。

しかし、筋肉や腱、関節がランニングの反復衝撃に慣れていない場合、後から痛みが出ることがあります。

特に注意したいのは、ふくらはぎ、アキレス腱、膝、腸脛靭帯、足底です。

ランニングは、1回1回の負荷は小さくても、何千歩、何万歩と繰り返されます。

CrossFitの高重量トレーニングとは違う種類の負荷です。

注意点

  • 最初から毎日走らない
  • 急に距離を増やしすぎない
  • きついラン練習を連続で入れない
  • 脚に痛みが出たら早めに調整する
  • シューズを本番前に必ず試す

HYROXのためにランを始めたのに、ランでケガをしてしまっては意味がありません。

強度を上げる前に、まず継続できること。

これが一番大切です。


シューズとウェア選びもラン練習の一部

HYROXでは、シューズとウェア選びも重要です。

CrossFitシューズは、スクワットやリフティングでは安定します。しかし、HYROXでは合計8km走るため、基本的にはランニングシューズをベースに考える必要があります。

ただし、柔らかすぎる厚底シューズは、スレッドプッシュやランジで不安定になることがあります。

HYROXでは、走れることと、押せることのバランスが必要です。

ウェアについても同じです。

ランニング、バーピー、ランジ、キャリー、ウォールボールを行うため、ずれにくく、擦れにくく、汗を含んでも重くなりにくいものが向いています。

トニーコーチもおすすめしているSA1NTのP1 Elite Compression Shortsは、HYROXのように走る動きとファンクショナル種目が混ざる競技と相性が良いアイテムです。

適度なコンプレッションで脚をサポートしながら、動きやすさも確保しやすく、レース中の摩擦対策にもつながります。

また、P1 Eliteにはポケットがあるため、補給ジェルを1〜2個入れておくのにも便利です。HYROXは1時間以上かかる選手も多いため、レース中盤でジェルを取れるようにしておくと、後半のランやウォールボールに向けたエネルギー補給として使いやすくなります。

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関連記事:HYROXレース向けシューズ・ウェア・ギアの選び方


まとめ|CrossFit経験者がHYROXで伸びる鍵はランにある

CrossFit経験者は、HYROXで大きな強みを持っています。

ファンクショナル種目への対応力、苦しい状態で動くメンタル、重いものを扱う力。

これらは、HYROXでも確実に武器になります。

しかし、上位を目指すほど、避けて通れないのがランニングです。

トニーコーチ自身も、HYROXに取り組む中で、ランの重要性を強く感じています。

ジムの中で長く動ける体力と、1kmを8回走る体力は違います。

まずはゆっくり走るベースを作る。

次に、レースペースに近いテンポ走や1kmインターバルを入れる。

その後に、スレッドやバーピーなどの種目と組み合わせる。

この順番で取り組むことで、HYROXのランは少しずつ変わっていきます。

HYROXで強くなるためには、ただ筋力を足すだけではありません。

強い体で、走れるようになること。

それが、CrossFit経験者がHYROXで結果を出すための大きなテーマです。


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この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach / CrossFit Uninterrupted Head Coach)

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Games Finalsの出場経験を持つ世界レベルの競技者です。

CrossFitはランニング、持久力、筋力、体操競技、ウェイトリフティングなど、あらゆる身体能力が求められる競技であり、その中で世界トップレベルに到達した日本人選手の一人です。

現在は、自身がオーナー兼ヘッドコーチを務めるCrossFit Uninterrupted(UFIT)を運営し、競技者から一般の方まで幅広く指導しています。また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして活動しています。HYROXはランニングの経験がない中も大阪大会で3位、日本人選手2位に輝きました。

選手として世界レベルを経験し、コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

トニーコーチから一言:

「CrossFit経験者は、HYROXでかなり強みを活かせます。ただ、僕自身もやってみて一番感じたのは、やっぱりランの重要性です。ファンクショナル種目ができても、ランが落ちると全体のタイムは伸びません。まずはラン単体の力を作って、その後に種目と組み合わせる。この順番で準備していくと、HYROXのレースはかなり変わってくると思います。」

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