ハイロックスで結果を出せる人の特徴

カテゴリー:トレーニング|Vol.08

HYROXで結果を出せる人は、ただ「走れる人」ではありません。

もちろん、ランニングは非常に重要です。1kmランを8回行うHYROXでは、ランが遅れると全体タイムに大きく響きます。

しかし、トニーコーチがレースを振り返って強調しているのは、もう少し本質的なことです。

それは、「穴がない人が強い」ということです。

ランが速いだけでは足りません。

スレッドで止まらない力、ウォールボールを崩さず続ける力、ローイングやスキーエルゴで無駄に消耗しない技術、疲れた状態でもフォームを保つ力、そして最後まで冷静にレースを組み立てる力が必要です。

逆に、ファンクショナル種目が強いだけでも足りません。どれだけスレッドやウォールボールが得意でも、1kmランを8回走るたびに大きく落ちてしまえば、上位には届きません。

この記事では、HYROXで結果を出せる人の特徴を、トニーコーチの実体験とレース分析をもとに、「走れる人」ではなく「全部できる人」という視点で整理します。


目次


HYROXで強いのは「穴がない人」

HYROXで結果を出す人には、共通点があります。

それは、どこか一つだけが突出しているというより、大きな弱点がないことです。

トニーコーチは、CrossFit Gamesのトップ選手を例に出しながら、「本当に強い選手は穴がない」と話しています。

これはHYROXにもそのまま当てはまります。

ランが速い人は有利です。しかし、スレッドプッシュで止まり、ウォールボールで崩れ、サンドバッグランジで歩けなくなれば、ランの貯金はすぐに消えてしまいます。

反対に、CrossFit経験者のようにファンクショナル種目が得意でも、ランで毎回20秒、30秒と落ちてしまえば、8本の合計で大きな差になります。

HYROXは、得意種目で一気に勝つ競技ではありません。

むしろ、苦手種目で大きく崩れないこと、全体を通して大きな穴を作らないことが重要です。

関連記事:HYROXタイプ別:これからやるべきトレーニング方法


ランだけ速くても勝てない理由

HYROXは、合計8kmを走る競技です。

そのため、ランニング能力が高い人は確かに有利です。

しかし、HYROXはランニング大会ではありません。

1km走った後には、必ずファンクショナル種目が入ります。

  1. 1kmラン
  2. スキーエルゴ
  3. 1kmラン
  4. スレッドプッシュ
  5. 1kmラン
  6. スレッドプル
  7. 1kmラン
  8. バーピーブロードジャンプ
  9. 1kmラン
  10. ローイング
  11. 1kmラン
  12. ファーマーズキャリー
  13. 1kmラン
  14. サンドバッグランジ
  15. 1kmラン
  16. ウォールボール

つまり、走るたびに脚も心肺も削られ、その状態で重いものを押したり、引いたり、担いだり、しゃがんだりします。

ランナータイプの人がHYROXで苦戦しやすいのは、ここです。

普通の8km走なら問題なく走れる。

でも、スレッドプッシュで脚を使い切ってしまう。

ウォールボールでボールがターゲットに届かない。

サンドバッグランジで姿勢が崩れて、前に進めない。

これでは、ランの強みを最後まで活かせません。

HYROXで結果を出すには、「走れる」だけではなく、走った後に動ける筋力が必要です。


ファンクショナルが強いだけでも足りない理由

一方で、CrossFit経験者や筋トレ経験者は、ファンクショナル種目で大きな強みを持っています。

ローイング、スキーエルゴ、ウォールボール、ランジ、キャリー、スレッドのような動きに慣れている人も多いでしょう。

重いものを扱うことにも抵抗が少なく、苦しい状態で動くメンタルもあります。

しかし、HYROXではそれだけでは足りません。

トニーコーチ自身も、CrossFitを長く続けてきた中で、ジムの中で40分、60分動き続ける体力はありました。

それでも、HYROXに取り組んで強く感じたのは、ランニング能力の重要性です。

ジムの中で長く動けることと、1kmランを8回、種目の後に走り続けることは違います。

HYROXでは、ファンクショナル種目が得意でも、ランで毎回落ちてしまえば上位に行けません。

トニーコーチは、大阪大会の振り返りで、上位選手との差が最も出たのはランだったと分析しています。1kmあたり15〜20秒の差でも、8本になると2〜3分の差になります。

ファンクショナル種目で少し速くできても、ランで毎回落ちると、全体タイムはなかなか縮まりません。

関連記事:HYROX向けラントレーニング|CrossFit経験者が走力を上げる方法


HYROXで必要な5つの能力

HYROXで結果を出すためには、複数の能力が必要です。

特に重要なのは、次の5つです。

  1. 1kmランを落とさず走る力
  2. 重い種目で止まらない力
  3. 疲れてもフォームを崩さない力
  4. 得意種目で無理に攻めすぎない判断力
  5. 自分の弱点を見つけて潰す力

この5つのうち、どれか一つに大きな穴があると、レース全体が崩れます。

たとえば、ランが強くてもスレッドで止まればタイムは落ちます。

スレッドが強くても、ウォールボールでノーレップが増えればタイムは落ちます。

ファーマーズキャリーが速くても、その後のランで大きく落ちれば意味がありません。

HYROXは、8kmランと8種目を「全部まとめて」評価される競技です。

一つの能力だけを伸ばすのではなく、全体のバランスを整えることが必要です。


能力① 1kmランを落とさず走る力

HYROXでランが重要なのは、ただ合計8km走るからではありません。

1kmを8回、何度も走り直すからです。

普通のランニングでは、ペースを作ってそのまま走り続けることができます。

しかしHYROXでは、毎回ランの間に種目が入ります。

スレッドプッシュで脚が重くなった後に走る。

バーピーブロードジャンプで心拍が上がった後に走る。

サンドバッグランジで脚が削られた後に走る。

この「疲れた状態で走り直す力」が必要です。

トニーコーチも、HYROXのラン練習では、ゆっくりしたジョグだけでなく、レースペースに近いテンポ走や1kmインターバルを取り入れています。

重要なのは、最初の1kmだけ速く走ることではありません。

6本目、7本目、8本目でも大きく落とさないことです。


能力② 重い種目で止まらない力

HYROXでは、重いものを扱う種目があります。

特に、スレッドプッシュ、スレッドプル、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールは、筋力と持久力の両方が必要です。

ランナータイプの人が最も苦戦しやすいのが、この部分です。

脚は動く。

心肺も強い。

でも、スレッドが動かない。

ウォールボールが続かない。

サンドバッグランジで姿勢が崩れる。

こうなると、ランで作ったリズムが止まってしまいます。

HYROXでは、重い種目を爆発的に速く行う必要はありません。

それよりも、止まりすぎないことが大切です。

スレッドプッシュを一気に全部押せなくても、決めた距離ごとに止まって、すぐ再開できる。

ウォールボールを100回連続でできなくても、10回ずつ崩れずに進められる。

このように、止まり方と再開の仕方まで含めて、レース戦略になります。

関連記事:HYROX種目②スレッドプッシュ攻略法


能力③ 疲れてもフォームを崩さない力

HYROXでは、疲れてからが本番です。

元気な状態でスキーエルゴを引ける。

元気な状態でウォールボールができる。

元気な状態で1km走れる。

これは大切ですが、それだけではレースには足りません。

HYROXでは、種目を重ねるごとに体が重くなります。

その中で、フォームをどれだけ保てるかがタイムに直結します。

たとえば、スキーエルゴで腕だけに頼ると、肩や腕が早く疲れます。

ローイングで脚を使えず、腕で引いてしまうと、後半に背中や前腕が重くなります。

ランジで上半身が崩れると、1歩ごとの効率が落ちます。

ウォールボールでスクワットが浅くなったり、ターゲットへの投げ方が乱れたりすると、ノーレップにつながります。

疲れても動作の基本を崩さない。

これは、HYROXで「穴を作らない」ために非常に重要です。

関連記事:HYROX種目⑧ウォールボール攻略法


能力④ 得意種目で無理に攻めすぎない判断力

HYROXでは、得意種目で攻めたくなります。

CrossFit経験者なら、ローイング、スキーエルゴ、ウォールボールで周りより速く進めるかもしれません。

ランナーなら、1kmランで一気に前に出たくなるかもしれません。

しかし、HYROXは全体のレースです。

得意種目で攻めすぎた結果、次のランが落ちる。

前半のランを速く入りすぎて、スレッドプッシュで脚が止まる。

ローイングで頑張りすぎて、ファーマーズキャリー後のランが動かない。

こうなると、得意種目で作った数秒の貯金以上に、後半で失う時間が大きくなります。

トニーコーチも、レースでは得意種目をただ全力で攻めるのではなく、全体の流れの中でどう使うかを考えています。

たとえばローイングは、得意だから飛ばすのではなく、呼吸を整えながら次に進むための種目として使うこともあります。

HYROXで強い人は、我慢するところと攻めるところを分けられる人です。


能力⑤ 自分の弱点を見つけて潰す力

HYROXで成長する人は、自分のレースを分析します。

「きつかった」だけで終わらせません。

どのランで落ちたのか。

どの種目で止まったのか。

どのトランジションで時間を使ったのか。

どこでノーレップが出たのか。

どの場面で心拍が上がりすぎたのか。

こうしたポイントを見て、次の練習に反映します。

トニーコーチも、大阪大会の振り返りで、上位選手との差を見ながら、自分に足りない部分を整理しています。

ただ「もっと頑張る」ではなく、どこがボトルネックになっているのかを見つける。

そして、その一つ手前の段階から練習し直す。

これが、HYROXで伸びる人の考え方です。


トニーコーチが感じた「穴をなくす」重要性

トニーコーチは、HYROX大阪のレース分析の中で、CrossFit Gamesの話をしています。

世界大会で優勝するような選手は、どこか一つだけが強いのではなく、穴がない。

逆に、上位まで行けても勝ち切れない選手は、リフティングが強い、体操が強い、ある種目では勝てる、という強みがあっても、全体で見るとどこかに弱点がある。

これはHYROXでも同じです。

ランが得意。

スレッドが得意。

ウォールボールが得意。

それは大きな武器です。

しかし、どこか一つの大きな穴があると、レース全体で上に行くことは難しくなります。

HYROXで結果を出すためには、得意を伸ばすだけでは不十分です。

苦手を見つけて、その穴を小さくしていく必要があります。

トニーコーチが言う「穴がない」という考え方は、HYROXの本質にかなり近いものです。


タイプ別:あなたの穴はどこにある?

HYROXでは、バックグラウンドによって弱点が変わります。

ランナータイプ

ランナータイプは、1kmランでは有利です。

しかし、スレッドプッシュ、スレッドプル、ウォールボール、サンドバッグランジで止まりやすい場合があります。

課題は、筋力とファンクショナル種目への慣れです。

特に、脚が疲れた状態で重いものを押す、引く、担ぐ動きは、普段のランニングではあまり鍛えられません。

CrossFit経験者タイプ

CrossFit経験者は、ファンクショナル種目に強みがあります。

ローイング、スキーエルゴ、ウォールボール、ランジ、キャリーなどに慣れている人も多いです。

課題は、ランニングです。

ジムの中で長く動けても、1kmランを8回、種目の後に走り続ける力は別に作る必要があります。

筋トレタイプ

筋トレタイプは、重さへの抵抗が少ないことが強みです。

しかし、HYROXでは筋力を単発で出すだけではなく、動き続ける持久力が必要です。

課題は、心肺持久力と動作の連続性です。

初心者タイプ

初心者は、まず全体に慣れることが必要です。

どの種目が得意で、どこで止まりやすいのかを知るところから始めましょう。

最初から全部を完璧にする必要はありません。

ただし、自分の穴を知ることは、最初の段階からとても大切です。


全部できる人になるための練習設計

HYROXで「全部できる人」になるには、練習の組み方が重要です。

毎回、レース形式のようにランと種目を全部混ぜれば良いわけではありません。

トニーコーチは、段階的に練習することの重要性を話しています。

まずはランを単体で作る。

ファンクショナル種目も単体で作る。

その後に、ランと種目を組み合わせる。

この順番が大切です。

ステップ① ラン単体を作る

ゆっくりしたジョグでベースを作り、1kmインターバルやテンポ走でレースに近いペースを作ります。

ステップ② ファンクショナル単体を作る

スレッド、ウォールボール、ランジ、ローイング、スキーエルゴなどを、疲れていない状態で正しくできるようにします。

ステップ③ 苦手種目を重点的に練習する

スレッドで止まる人はスレッドを、ウォールボールで崩れる人はウォールボールを、ランで落ちる人はランを優先します。

ステップ④ ランと種目を組み合わせる

ある程度単体の力がついてきたら、1kmラン+スレッド、1kmラン+バーピー、1kmラン+ウォールボールのように組み合わせます。

ステップ⑤ レース形式に近づける

大会が近づいたら、複数種目をつなげて、トランジションや補給、ペース配分まで確認します。

この段階を踏むことで、ただ疲れるだけの練習ではなく、弱点を潰す練習になります。


レース当日に差が出る細かいポイント

HYROXでは、体力だけでなく、細かい準備でも差が出ます。

ルールを確認する

バーピーブロードジャンプの手の位置、ウォールボールの深さやターゲット、ランの周回、入口と出口など、細かいルールを事前に確認しておくことが大切です。

ペナルティやノーレップは、体力以上にメンタルを削ります。

トランジションを雑にしない

種目からランへ、ランから種目へ移る時間もレースの一部です。

どこから入るのか、どこに出るのか、どの順番で動くのかを把握しておくことで、余計な迷いを減らせます。

得意種目で冷静になる

得意だからといって、序盤で飛ばしすぎないことも重要です。

HYROXは最後のウォールボールまで続きます。

前半で作った勢いを、後半で失わないようにする必要があります。

ダブルスなら役割分担を決める

ダブルスでは、ランは一緒に走り、ファンクショナル種目を分担します。

トニーコーチも、ダブルスでは「ランを一緒に走れるように、ファンクショナルをどう分けるか」が重要だと話しています。

その場で臨機応変に変える力も必要ですが、最初の作戦を持っておくことでレースが安定します。

関連記事:HYROXのカテゴリー(シングル/ダブルス/リレー)の違いと選び方


ウェアと補給も「穴を作らない」準備の一部

HYROXでは、ウェアや補給もレース戦略の一部です。

走る、しゃがむ、跳ぶ、押す、担ぐという動きが続くため、ウェアがずれたり、擦れたり、汗で重くなったりすると、それだけで集中力が落ちます。

トニーコーチもおすすめしているSA1NTのP1 Elite Compression Shortsは、HYROXのようにランとファンクショナル種目が混ざる競技と相性が良いアイテムです。

適度なコンプレッションで脚をサポートしながら、動きやすさも確保しやすく、レース中の摩擦対策にもつながります。

また、P1 Eliteにはポケットがあるため、補給ジェルを1〜2個入れておくのにも便利です。

HYROXは1時間以上かかる選手も多いため、レース中盤でジェルを取れるようにしておくと、後半のランやウォールボールに向けたエネルギー補給として使いやすくなります。

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関連記事:HYROXレース向けシューズ・ウェア・ギアの選び方


まとめ|HYROXで結果を出す人は「全部できる人」

HYROXで結果を出す人は、単に走れる人ではありません。

もちろんランは重要です。

しかし、ランだけでは勝てません。

スレッドを押せる。

スレッドを引ける。

バーピーブロードジャンプで崩れない。

ローイングやスキーエルゴで無駄に消耗しない。

ファーマーズキャリーで止まりすぎない。

サンドバッグランジで姿勢を保てる。

最後のウォールボールまで冷静に進められる。

そして、1kmランを8回、大きく落とさず走れる。

HYROXで強いのは、こうした要素を高いレベルでまとめられる人です。

トニーコーチが言うように、本当に強い選手は穴がありません。

得意を伸ばすだけでなく、苦手を見つけて、そこを一つずつ潰していく。

それが、HYROXで結果を出すための一番大切な考え方です。


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この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach / CrossFit Uninterrupted Head Coach)

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Games Finalsの出場経験を持つ世界レベルの競技者です。

CrossFitはランニング、持久力、筋力、体操競技、ウェイトリフティングなど、あらゆる身体能力が求められる競技であり、その中で世界トップレベルに到達した日本人選手の一人です。

現在は、自身がオーナー兼ヘッドコーチを務めるCrossFit Uninterrupted(UFIT)を運営し、競技者から一般の方まで幅広く指導しています。また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして活動しています。HYROXはランニングの経験がない中も大阪大会で3位、日本人選手2位に輝きました。

選手として世界レベルを経験し、コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

トニーコーチから一言:

「HYROXで結果を出すには、ランだけでも、ファンクショナルだけでも足りません。CrossFit Gamesのトップ選手と同じで、本当に強い選手は穴がないと思います。自分がどこで落ちているのか、どの種目がボトルネックなのかを見つけて、一つずつ潰していくことが大切です。全部を高いレベルでまとめられるようになると、HYROXのレースはかなり変わってくると思います。」

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