ハイロックス種目③スレッドプル攻略法

カテゴリー:8種目攻略|Vol.12

HYROXの3つ目のファンクショナル種目が、スレッドプルです。

最初の1kmラン、スキーエルゴ、2本目の1kmラン、スレッドプッシュ、3本目の1kmランを終えた後に登場します。

つまり、すでに脚も心肺もかなり使った状態で、ロープを使って重いスレッドを引く種目です。

スレッドプルは、見た目だけなら単純です。

ロープを持って、スレッドを引き寄せる。

しかし、実際にはHYROX前半の大きな山場です。

トニーコーチも、スレッドプッシュとスレッドプルは前半で疲労がかなり大きい種目だと話しています。ここでテクニックを知らずに入ると、腕、前腕、腰、脚を一気に使ってしまい、その後のバーピーブロードジャンプとランに大きく響きます。

スレッドプル攻略で一番大切なのは、腕で引くのではなく、足で引くことです。

ロープを持っているので腕の種目に見えますが、実際には腕でゴリゴリ引く種目ではありません。

2mのステーション内で足を使って体を後ろへ移動させ、その体重移動でスレッドを動かす。

これがスレッドプルの基本です。

この記事では、HYROX種目③スレッドプルの基本ルール、2mステーション内での動き方、ペナルティで注意すべき点、足で引くテクニック、ロープ処理、練習方法を、トニーコーチの解説をもとに整理します。


目次


HYROXのスレッドプルとは?

HYROXのスレッドプルは、ロープを使って重いスレッドを引く種目です。

スレッドプッシュの後に登場し、合計50mを引きます。

スレッドプッシュは、自分もスレッドと一緒に前へ進みます。

一方、スレッドプルは違います。

選手は決められたステーション内にいて、そこからロープを使ってスレッドを自分の方へ引き寄せます。

この違いが、スレッドプルを難しくしています。

ただ強く引けば良いわけではありません。

決められた範囲の中で、足、体幹、体重移動、ロープ処理を使いながら、スレッドを少しずつ引いていきます。

トニーコーチは、スレッドプルについて「引き方にいくつもの種類があるというより、基本は一つ。腕ではなく足で引くこと」と説明しています。

この考え方を理解しているかどうかで、疲れ方が大きく変わります。

関連記事:HYROX種目②スレッドプッシュ攻略法


スレッドプルの基本ルール

HYROXのスレッドプルは、カテゴリーによって重さが変わります。

トニーコーチの解説では、男性Proは153kg、女性Proと男性Openは103kg、女性Openは78kgが目安として紹介されています。

スレッドプッシュよりもスレッドプルの方が軽く設定されていますが、それでもかなり重い種目です。

理由は、押すよりも引く方が難しく、足元の踏ん張り、ロープ操作、体重移動が必要になるからです。

距離は合計50mです。

12.5mのレーンを往復する形で進めていきます。

重要なのは、選手がスレッドと一緒にずっと移動するわけではないことです。

スレッドプルでは、選手がいる場所が決められています。

そのステーション内で動きながら、ロープを引き、スレッドを自分の方へ寄せていきます。

このルールを理解していないと、本番で動き方に迷いやすくなります。


2mステーション内で動くことが最大の特徴

スレッドプルで特に重要なのが、2mのステーション内で動くという点です。

スレッドプッシュでは、スレッドを押しながら自分も前へ進みます。

しかし、スレッドプルでは、選手が自由にどこまでも後ろへ下がれるわけではありません。

両端に選手が動けるステーションがあり、その幅が約2mです。

選手は、その2mの中で前後に動きながらスレッドを引きます。

つまり、やることはこうです。

  1. ステーションの前側に立つ
  2. ロープを張る
  3. 腕を伸ばしたまま、足で床を押す
  4. 自分の体を後ろへ移動させる
  5. その体重移動でスレッドを引く
  6. 後ろ側まで来たら、最後に少し腕で引き足す
  7. 余ったロープを処理する
  8. またステーション前側に戻る

この繰り返しです。

ここを理解すると、スレッドプルは「その場で腕だけで引く種目」ではないことが分かります。

2mの中で、自分の体を前から後ろへ移動させる。

その移動そのものが、スレッドを動かす力になります。

この2mの使い方が、攻略の鍵です。


スレッドプルは腕ではなく足で引く

スレッドプルで一番大切なのは、腕ではなく足です。

ロープを持っているため、腕で引く種目に見えます。

しかし、トニーコーチは「スレッドプルは腕を使わない。腕を伸ばしたまま、足を使って自分が移動する」と説明しています。

もちろん、最後に腕で少し引き足す場面はあります。

しかし、メインの力は腕ではありません。

最初にスレッドを動かす力は、足で床を押す力です。

スレッドプッシュと同じで、最初に初速をつけることが大事です。

ステーションの前側でロープを張り、膝を少し曲げて、背中と体幹を固めます。

そこから足で床を強く押して、自分の体を後ろへ移動させます。

その勢いでスレッドを引きます。

腕でロープをたぐるのではなく、足で作った力をロープに伝えるイメージです。

腕だけで引くと、前腕と上腕がすぐに疲れます。

腰だけで引くと、腰まわりに負担がかかります。

足で引くことができれば、スレッドを動かしやすくなり、後半への消耗も抑えやすくなります。


2mの中での具体的な引き方

スレッドプルの動きは、2mの中で決まった流れを繰り返すと安定します。

① ステーションの前側に立つ

まず、2mステーションの前側に立ちます。

ここから後ろへ移動する余地を作っておくことが大切です。

② ロープを張る

ロープにたるみがある状態で引いても、力はスレッドに伝わりません。

まずロープを張り、スレッドに力が伝わる状態を作ります。

③ 腕を伸ばし、背中と体幹を固める

腕を曲げて引くのではなく、腕は伸ばしたままにします。

背中と体幹を固め、足で力を出せる姿勢を作ります。

④ 膝を曲げ、足で床を押す

膝を少し曲げた状態から、足で床を強く押します。

ここでスレッドに初速をつけます。

最初に動き出す瞬間が重いため、この一歩目が非常に重要です。

⑤ 後ろへステップしながら引く

足で初速をつけたら、そのまま後ろへステップしながらスレッドを引きます。

体重を少し後ろへ乗せることで、腕ではなく体全体で引けます。

⑥ 最後に腕で少し引き足す

2mの後ろ側まで来たら、最後に腕を少し使って距離を稼ぎます。

ここで腕を使うのは補助です。

最初から腕で引くのではなく、足で引いた後の仕上げとして使います。

⑦ ロープを処理して前へ戻る

1回引くと、ロープが手元に余ります。

そのロープを踏まないように処理し、またステーション前側へ戻ります。

そして、同じ動きを繰り返します。

スレッドプルは、1回1回止まりやすい種目です。

だからこそ、この流れをテンポよく繰り返すことが大切です。


ロープのたるみとロープ処理

スレッドプルでタイムロスが出やすいのが、ロープの扱いです。

ロープにたるみがある状態で強く引いても、最初の力はスレッドに伝わりません。

まずはロープを張る。

そこから足で床を押して引く。

この順番が重要です。

また、引いた後のロープ処理も大切です。

2mの中で引くため、1回引くごとにロープが足元へ余ってきます。

そのロープを踏んでしまうと、次の動作が止まります。

ロープが絡まると、修正に時間がかかります。

トニーコーチも、ロープが余るため、それをたぐり寄せて処理し、また前に戻って引く流れを説明しています。

練習では、スレッドを引くだけでなく、ロープをどこに置くか、どこへ流すかまで確認しておきましょう。


ペナルティに注意したいポイント

スレッドプルでは、ペナルティにも注意が必要です。

特に重要なのは、2mのステーションから出ないことです。

トニーコーチも、スレッドプルでは選手が動けるステーションから出てしまうと反則になるため、その中でしっかり引く必要があると説明しています。

疲れてくると、無意識に後ろへ下がりすぎたり、横へずれたりすることがあります。

また、ロープ処理に気を取られて、自分の位置がずれることもあります。

本番では、ジャッジの指示を聞きながら、ステーション内で動く意識を持ちましょう。

スレッドプルは、ノーレップが多い種目というより、立ち位置と範囲に注意すべき種目です。

ルールを知らずに反則を取られると、体力だけでなくメンタルも削られます。

練習の段階から、2mの範囲を意識して動くことが大切です。


スレッドプルでよくある失敗

失敗① 腕だけで引く

腕だけで引くと、前腕と背中がすぐに疲れます。

スレッドプルの主役は腕ではなく足です。

失敗② ロープのたるみを取らずに引く

ロープがたるんだまま引くと、力がスレッドに伝わるまでにロスが出ます。

引く前にロープを張ることが大切です。

失敗③ ステーションの後ろへ出てしまう

2mのステーションから出ると反則になる可能性があります。

疲れても決められた範囲の中で動きましょう。

失敗④ ロープを踏む

足元に余ったロープを踏むと、次の動作が止まります。

ロープ処理まで練習しておきましょう。

失敗⑤ 腰だけで引く

腰を反らせて引くと、腰まわりに負担がかかります。

背中と体幹を固め、足で床を押して引くことが重要です。


ランナーが注意すべきポイント

ランナータイプの人は、1kmランを安定して走れる一方で、スレッドプルに苦戦することがあります。

特に、踏ん張る力、体幹、背中、握力、ロープ操作が課題になりやすいです。

ランニングでは、脚をリズムよく前へ運びます。

スレッドプルでは、足で床を押し、自分の体を後ろへ移動させながら、重いスレッドを引きます。

同じ脚を使っていても、運動の性質が違います。

ランナーが意識したいのは、次のポイントです。

  • 腕で引かず、足で引く
  • 2mの中で体を移動させる
  • ロープを張ってから引く
  • 体幹を固める
  • ペナルティにならないようステーション内で動く

ランナーは、スレッドプルで大きく止まらなければ、その後のランで強みを出しやすくなります。


CrossFit経験者が注意すべきポイント

CrossFit経験者は、ロープを使う動きや高強度の全身運動に慣れている人も多いです。

ただし、スレッドプルをロープクライムのように腕でたぐるイメージで行うと、前腕を使いすぎます。

トニーコーチも、ロープを持っていると腕で登るようなイメージになりやすいが、スレッドプルは腕を使う種目ではないと説明しています。

CrossFit経験者は、力があるからこそ、力任せに引かないことが重要です。

足で床を押す。

体を後ろへ移動させる。

最後に少しだけ腕で引き足す。

この順番を守ることで、無駄な消耗を減らせます。

また、CrossFit経験者は得意なファンクショナル種目で攻めたくなる傾向があります。

しかし、HYROXではこの後にバーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールが残っています。

スレッドプルで前腕や腰を使い切らないことが重要です。

関連記事:HYROXで結果を出せる人の特徴


ダブルスでのスレッドプル戦略

ダブルスでは、スレッドプルを2人で分担できます。

ただし、分担できるから楽というわけではありません。

交代のタイミング、ロープ処理、どちらがどの区間を担当するかを決めておかないと、タイムロスが出ます。

スレッドプルは2mステーション内で引くため、交代時も立ち位置とロープの状態が重要です。

ペアで出る場合は、次の点を確認しておきましょう。

  • どちらが先に引くか
  • どのタイミングで交代するか
  • ロープをどこに置くか
  • 交代時にロープを踏まないか
  • 片方がきつい場合に、もう片方がどれくらい多く引けるか

ダブルスでは、ファンクショナル種目だけでなく、その後のランを一緒に走れる状態を作ることが大切です。

スレッドプルで片方が消耗しすぎると、次のランでチーム全体のペースが落ちます。

関連記事:HYROXのカテゴリー(シングル/ダブルス/リレー)の違いと選び方


スレッドプル練習メニュー

スレッドプルを上達させるには、重いスレッドを引くだけでなく、2mの中での動き方、足で引く感覚、ロープ処理を練習する必要があります。

メニュー① 2mステーション練習

  • 2mの範囲を作る
  • 前側から後ろ側へ移動しながらロープを引く
  • 5〜8回反復
  • 目的:ステーション内で動く感覚を作る

メニュー② 足で引く練習

  • 軽めのスレッドプル 10〜15m × 6本
  • レスト:60〜90秒
  • 目的:腕ではなく足で初速を作る

腕でたぐるのではなく、足で床を押して体を後ろへ移動させる感覚を優先します。

メニュー③ ロープ処理練習

  • 軽めのスレッドプル 12.5m × 4本
  • 目的:ロープを踏まない、絡ませない

速さよりも、ロープの置き方と足元の安全を確認します。

メニュー④ HYROXペース練習

  • 12.5m × 4本
  • 本番の区切りを意識する
  • レストは短め

メニュー⑤ ランとの組み合わせ

  • 1kmラン
  • スレッドプル 25〜50m
  • 1kmラン

目的は、スレッドプル後に走れる状態を作ることです。


スレッドプル後のランをどう走るか

HYROXでは、スレッドプルが終わったら、また1kmランへ向かいます。

ここで焦ると、次のバーピーブロードジャンプに大きく響きます。

スレッドプル後は、前腕や背中だけでなく、足、腰、心肺にも疲労が出ます。

その状態でいきなり元のペースに戻そうとすると、フォームが崩れやすくなります。

最初の100〜200mは、リズムを戻す区間と考えましょう。

呼吸を整え、脚の動きを確認しながら、少しずつペースを戻します。

スレッドプルで出し切るのではなく、次のランに入れる状態で終えることが大切です。


ウェアと補給の準備

スレッドプルでは、足元の安定、体幹の固定、ロープを引く上半身の動きが必要です。

さらに、その前後にはランニングがあります。

そのため、ウェアは走りやすく、動きやすく、ずれにくいものを選ぶことが大切です。

トニーコーチもおすすめしているSA1NTのP1 Elite Compression Shortsは、HYROXのようにランとファンクショナル種目が混ざる競技と相性が良いアイテムです。

適度なコンプレッションで脚をサポートしながら、スレッド、バーピー、ランジ、ウォールボールのような動きにも対応しやすい設計です。

また、P1 Eliteにはポケットがあるため、補給ジェルを1〜2個入れておくのにも便利です。

HYROXは1時間以上かかる選手も多いため、レース中盤でジェルを取れるようにしておくと、後半のランやウォールボールに向けたエネルギー補給として使いやすくなります。

本番で使うウェアや補給は、必ず練習で試しておきましょう。

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まとめ|スレッドプルは2mの中で足を使って引く

HYROXのスレッドプルは、腕でロープをたぐる種目ではありません。

一番大切なのは、2mのステーション内で足を使って引くことです。

ステーションの前側に立つ。

ロープを張る。

腕を伸ばし、背中と体幹を固める。

足で床を押して初速を作る。

後ろへステップしながら体重移動で引く。

最後に少しだけ腕で引き足す。

ロープを処理して、また前に戻る。

この流れをテンポよく繰り返すことが、スレッドプル攻略の基本です。

また、2mのステーションから出ると反則になる可能性があります。

疲れてきても、決められた範囲の中で動くことを忘れないようにしましょう。

スレッドプルは、力だけでなく、ルール理解、足の使い方、ロープ処理が問われる種目です。

ここを冷静に処理できると、HYROX前半の大きな山場を安定して越えやすくなります。

トニーコーチのスレッドプル攻略法ユーチューブ


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この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach / CrossFit Uninterrupted Head Coach)

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Games Finalsの出場経験を持つ世界レベルの競技者です。

CrossFitはランニング、持久力、筋力、体操競技、ウェイトリフティングなど、あらゆる身体能力が求められる競技であり、その中で世界トップレベルに到達した日本人選手の一人です。

現在は、自身がオーナー兼ヘッドコーチを務めるCrossFit Uninterrupted(UFIT)を運営し、競技者から一般の方まで幅広く指導しています。また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして活動しています。HYROXはランニングの経験がない中も大阪大会で3位、日本人選手2位に輝きました。

選手として世界レベルを経験し、コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

トニーコーチから一言:

「スレッドプルは腕で引く種目ではありません。2mのステーションの中で、足で床を押して自分の体を後ろへ移動させ、その力でスレッドを引くことが大切です。最後に少し腕で引き足す場面はありますが、メインは足です。ステーションから出ると反則になるので、練習の段階から2mの中で動く感覚とロープ処理を確認しておくと、本番でかなり落ち着いて対応できると思います。」

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