ハイロックス種目⑥ファーマーキャリー攻略法

カテゴリー:8種目攻略|Vol.15

HYROXの6つ目のファンクショナル種目が、ファーマーズキャリーです。

ローイングを終えた後、2つのケトルベルを両手に持って200m進む種目です。

見た目はとてもシンプルです。

両手に重りを持って歩くだけ。

しかし、トニーコーチは実際にレースでやってみて、「最初は少しなめていた」と話しています。

普段32kgのケトルベルを持つこともあるし、スクワットのような動作があるわけでもない。だから、レース中に少し休める種目かもしれない。

そう思っていたものの、実際にはかなり辛かった。

理由は、ここまでにすでに6km近く走り、5つのファンクショナル種目を終えているからです。

疲れた状態で重いケトルベルを持って200m進むと、握力、肩、体幹、姿勢保持に想像以上の負荷がかかります。

この記事では、HYROX種目⑥ファーマーズキャリーの基本、よくある失敗、効率の良い持ち方、歩き方、握力対策、レースでの戦略を、トニーコーチの実体験をもとに解説します。


目次


HYROXのファーマーズキャリーとは?

HYROXのファーマーズキャリーは、2つのケトルベルを両手に持ち、200m進む種目です。

ローイングの後に登場し、その後にはサンドバッグランジ、ウォールボール、そして残りのランが続きます。

動作は分かりやすいです。

持って歩く。

それだけです。

しかし、ここまでにすでに、ラン、スキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイングを終えています。

前腕、肩、背中、体幹、脚はすでに疲れています。

その状態で、重いケトルベルを持って200m進む必要があります。

ファーマーズキャリーは、握力だけではなく、姿勢、体幹、肩の安定、歩くリズムが問われる種目です。

関連記事:HYROX種目⑤ローイング攻略法


ファーマーズキャリーの重さと距離

トニーコーチの解説では、ファーマーズキャリーの距離は200mです。

重さはカテゴリーによって変わります。

  • 男性Pro:32kg × 2つ
  • 男性Open:24kg × 2つ
  • 女性Pro:24kg × 2つ
  • 女性Open:16kg × 2つ

数字だけ見ると、筋トレ経験者やCrossFit経験者にとっては「持てそう」と感じるかもしれません。

しかし、HYROXではこの種目に入るまでに、すでにかなりの疲労があります。

普段のジムで32kgを持てることと、レース後半に32kgを2つ持って200m進むことは別です。

この違いを理解しておくことが、ファーマーズキャリー攻略の第一歩です。


「持って歩くだけ」と思うと危ない理由

ファーマーズキャリーは、派手な動きではありません。

バーピーブロードジャンプのように上下動が大きいわけでも、スレッドのように全身で押し込むわけでもありません。

そのため、トニーコーチも最初は「ここは少し休めるかもしれない」と考えていたそうです。

しかし、実際のレースではかなり辛かったと振り返っています。

理由は、重りを持っている間、ずっと体が緊張し続けるからです。

握力は常に使います。

肩は下に引っ張られます。

体幹は左右にぶれないように働きます。

姿勢が崩れると、腰や背中にも負担がかかります。

さらに、200mという距離があります。

短い距離なら我慢できても、レース後半に200mを安定して進むのは簡単ではありません。

「持って歩くだけ」と軽く見ず、事前に必ず練習しておきたい種目です。


ファーマーズキャリーは握力だけでなく体幹の種目

ファーマーズキャリーというと、握力の種目だと思われがちです。

もちろん、握力は重要です。

しかし、HYROXで安定して進むためには、握力だけでは足りません。

重りを両手に持つと、体は左右に揺れやすくなります。

歩くたびにケトルベルが揺れ、その揺れを体幹で抑える必要があります。

体幹が抜けると、肩がすくみ、腰が反り、歩幅が小さくなります。

その結果、同じ距離を進むのに余計なエネルギーを使ってしまいます。

トニーコーチも、HYROXでは「穴がない」ことが重要だと話しています。

ファーマーズキャリーは、まさに小さな穴が出やすい種目です。

握力だけでなく、体幹、姿勢、歩き方まで整えておくことで、200mを安定して進めるようになります。


ファーマーズキャリーでよくある失敗

失敗① 肩がすくむ

重いケトルベルを持つと、肩が上がりやすくなります。

肩がすくむと、首や肩まわりに余計な力が入り、呼吸もしづらくなります。

失敗② 体が左右に揺れる

歩くたびに体が大きく揺れると、エネルギーを無駄に使います。

ケトルベルも揺れやすくなり、握力の消耗が増えます。

失敗③ 限界まで我慢しすぎる

トニーコーチが特に注意しているのが、限界まで持ち続けてしまうことです。

握力が完全に終わってから置くと、次に持ち直すのがかなり辛くなります。

ファーマーズキャリーでは、限界が来る少し前に一度離し、握力を少し回復させてから再スタートする方が安定します。

失敗④ 置いた後に休みすぎる

置くこと自体は悪くありません。

しかし、置いた後に長く休むと、タイムを大きく失います。

置くなら短く、再スタートまでの流れを決めておきましょう。

失敗⑤ 練習しなくても大丈夫だと思う

ファーマーズキャリーは、見た目がシンプルなので練習を軽く見られがちです。

しかし、トニーコーチは「これは練習しておいた方がいい」と話しています。

特に、重さに慣れておくことが重要です。


効率の良い持ち方

ファーマーズキャリーでは、持ち方だけでも疲れ方が変わります。

① グリップを強く握りすぎない

ケトルベルのハンドルを必要以上に強く握りすぎると、前腕が早く疲れます。

落とさないために握る必要はありますが、常に最大の力で握り続ける必要はありません。

② 肩を下げる

肩をすくめると、首や肩が固まり、呼吸も浅くなります。

肩を下げ、胸を軽く開き、姿勢を安定させましょう。

③ 体幹を固める

腹部を軽く固め、左右にぶれないようにします。

ケトルベルが揺れるほど、握力も余計に使います。

④ 腕を体から離しすぎない

腕が体から離れすぎると、ケトルベルが揺れやすくなります。

自然に体の横に下ろし、揺れを最小限にします。

⑤ 視線を前に向ける

下を見すぎると、背中が丸くなりやすくなります。

視線は前に置き、進行方向を確認しながら進みます。


歩き方とリズムの作り方

ファーマーズキャリーでは、速く進みたい気持ちが出ます。

しかし、走るように進もうとすると、ケトルベルが大きく揺れて、握力を余計に使うことがあります。

大切なのは、自分が安定して続けられるリズムです。

  • 歩幅は大きすぎず、小さすぎず
  • 上半身をぶらさない
  • ケトルベルを揺らさない
  • 呼吸を止めない

上級者は、速歩きに近いテンポで進むこともできます。

ただし、無理にスピードを出して途中で何度も置くより、安定したリズムで進む方が速い場合もあります。

トニーコーチも、HYROXでは得意種目で攻めすぎるより、全体の流れを崩さないことを重視しています。

ファーマーズキャリーでも、速さと安定のバランスが重要です。


限界が来る前に一度離す

ファーマーズキャリーで一番避けたいのは、握力が完全に終わるまで我慢してしまうことです。

トニーコーチは、1回持って限界まで行ってしまうと、本当に握力がやられてしまい、次に持てなくなると説明しています。

そのため、限界になる少し前に一度置く。

握力を少し回復させる。

そして、また持って進む。

この考え方が大切です。

ファーマーズキャリーでは、止まらず200m進めれば理想ですが、無理に狙う必要はありません。

自分の握力に合わせて、計画的に短く置く方が安定する場合があります。

  • 100mまで行って一度置く
  • 50mごとに短く置く
  • 握力が危なくなる前に3秒だけ置く
  • 置いたら深呼吸を1回してすぐ持つ

大切なのは、置くこと自体ではなく、置いた後に長く止まらないことです。


ペナルティはそこまで心配しなくていい

ファーマーズキャリーは、スレッドプルやバーピーブロードジャンプのように細かい位置取りやノーレップを強く気にする種目ではありません。

トニーコーチも、ファーマーズキャリー自体には、ノーレップや「ミスしたら最初からやり直し」のようなペナルティを大きく心配する必要はないと話しています。

もちろん、基本的なルールやレース会場での指示には従う必要があります。

ただ、攻略の中心はペナルティ対策ではありません。

重要なのは、重さに慣れること、握力を使い切らないこと、そして200mを安定して進むことです。

「落としたら終わり」と考えて無理に限界まで持ち続けるより、必要なら早めに短く置き、すぐ再スタートする方が良い場合があります。


トニーコーチがすすめる練習方法

ファーマーズキャリーの練習で最も大切なのは、重さに慣れることです。

トニーコーチは、男性Proなら32kgを2つ持って長い距離を歩く練習をしておく必要があると話しています。

もちろん、出場カテゴリーによって重さは変わります。

自分のカテゴリーに近い重さで、実際に持って歩く練習をしておきましょう。

練習① 実際の重さで長く歩く

  • 本番に近い重さのケトルベルを2つ持つ
  • 50〜200m歩く
  • 置くタイミングを確認する
  • 握力がどの距離で厳しくなるかを知る

これは最も本番に近い練習です。

ただ持てるかどうかではなく、どの距離で握力が落ちるか、どのタイミングで置くと回復しやすいかを確認します。

練習② 鉄棒にぶら下がる

周りに本番と同じ重さのケトルベルがない場合は、鉄棒に長くぶら下がる練習も有効です。

目的は、握る力と、握り続ける持久力を作ることです。

完全な代替にはなりませんが、握力と前腕の耐久力を高める練習になります。

練習③ ペットボトルを指で持つ

トニーコーチは、2Lのペットボトルのキャップ部分を指でつかむような練習も紹介しています。

これは、強く握る力を作るための簡単な方法です。

自宅でもできるので、ケトルベルがない人でも取り入れやすい練習です。

練習④ 重いものを持って歩く

ケトルベルがない場合でも、ダンベル、プレート、重いバッグ、水の入った容器などを使って、持って歩く練習はできます。

大切なのは、実際に「握って、持って、歩く」ことです。

ただ握力を鍛えるだけでなく、体幹を固め、姿勢を保ち、歩く感覚まで練習しておきましょう。


ランナーが注意すべきポイント

ランナータイプの人は、ファーマーズキャリーで苦戦することがあります。

走る脚は強くても、重りを両手に持って歩く経験が少ない場合が多いからです。

特に課題になりやすいのは、握力、肩、体幹です。

ランナーが意識したいのは、次のポイントです。

  • 握力を鍛えておく
  • 肩をすくめない
  • 体幹を固めて左右にぶれない
  • ケトルベルを揺らさない
  • 限界が来る前に短く置く

ランナーは、ファーマーズキャリーで大きく止まらなければ、その後のランで強みを出しやすくなります。

ランの強みを活かすためにも、キャリーで時間を失いすぎない準備が必要です。


CrossFit経験者が注意すべきポイント

CrossFit経験者は、ファーマーズキャリーに慣れている人も多いです。

握力や体幹、重いものを持って動く経験があるため、比較的強みを出しやすい種目です。

ただし、HYROXでは200mあります。

さらに、その前に6km近いランと複数のファンクショナル種目を終えています。

普段32kgを持てることと、HYROX後半で32kgを2つ持って進むことは違います。

得意だからといって最初から速く行きすぎると、後半で握力が抜けたり、次のランやサンドバッグランジに影響したりします。

CrossFit経験者は、次の点を意識しましょう。

  • 最初から飛ばしすぎない
  • 握力を使い切らない
  • 本番の重さで長い距離を練習する
  • キャリー後のランを考える
  • サンドバッグランジに体幹と脚を残す

関連記事:HYROXで結果を出せる人の特徴


ダブルスでのファーマーズキャリー戦略

ダブルスでは、ファーマーズキャリーを2人で分担できます。

しかし、分担できるからといって、作戦なしで進めるとタイムロスが出ます。

交代の回数が多すぎると、その分だけ時間がかかります。

一方で、1人が長く持ちすぎると、握力が終わって次のランに影響することがあります。

  • 100mずつ分ける
  • 50mごとに交代する
  • 得意な人が少し長めに持つ
  • ランが苦手な人をキャリーで消耗させすぎない

トニーコーチがダブルスで大切にしているのは、ファンクショナル種目だけでなく、その後のランを一緒に走れる状態にすることです。

ファーマーズキャリーで片方が握力や体幹を使い切ると、次のランでチーム全体のペースが落ちます。

関連記事:HYROXのカテゴリー(シングル/ダブルス/リレー)の違いと選び方


ファーマーズキャリー後のランをどう走るか

HYROXでは、ファーマーズキャリーが終わったら、また1kmランへ向かいます。

このランは、意外と難しいです。

ファーマーズキャリー後は、前腕、肩、体幹が疲れています。

腕振りがぎこちなくなったり、肩が上がったり、姿勢が固くなったりします。

最初の100〜200mは、肩の力を抜き、腕振りを戻し、呼吸を整える区間と考えましょう。

ケトルベルを置いた後、すぐに走り出せるようにすることも重要です。

トニーコーチも、HYROXでは種目の後のランをどう走るかが非常に重要だと話しています。


ウェアと補給の準備

ファーマーズキャリーでは、重いケトルベルを両手に持って歩きます。

HYROXでは、ラン、キャリー、ランジ、ウォールボールと動きが続くため、ウェアは走りやすく、動きやすく、擦れにくいものを選ぶことが大切です。

トニーコーチもおすすめしているSA1NTのP1 Elite Compression Shortsは、HYROXのようにランとファンクショナル種目が混ざる競技と相性が良いアイテムです。

適度なコンプレッションで脚をサポートしながら、ラン、キャリー、バーピー、ランジ、ウォールボールのような動きにも対応しやすい設計です。

また、P1 Eliteにはポケットがあるため、補給ジェルを1〜2個入れておくのにも便利です。

HYROXは1時間以上かかる選手も多いため、レース中盤でジェルを取れるようにしておくと、後半のランやウォールボールに向けたエネルギー補給として使いやすくなります。

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関連記事:HYROXレース向けシューズ・ウェア・ギアの選び方


まとめ|ファーマーズキャリーは甘く見ず、重さに慣れておく

HYROXのファーマーズキャリーは、シンプルに見えて、後半の流れを左右する重要な種目です。

ただ重いものを持って歩くだけではありません。

握力、肩の安定、体幹、歩くリズム、置くタイミング、そしてその後のランへつなげる力が必要です。

トニーコーチ自身も、最初は少し休める種目かもしれないと思っていたものの、実際のレースではかなり辛かったと話しています。

だからこそ、練習では重さに慣れておくことが大切です。

本番に近い重さで長い距離を歩く。

鉄棒にぶら下がる。

2Lペットボトルのキャップ部分を指で持つ。

重いものを持って歩く。

こうした練習で、握る力と持ち続ける力を作っておきましょう。

また、ペナルティを過度に心配する種目ではありませんが、限界まで我慢しすぎるのは危険です。

握力が完全に終わる前に短く置き、少し回復させてから再スタートする。

この判断が、200mを安定して進むために重要です。

トニーコーチのファーマーズキャリーユーチューブ


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この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach / CrossFit Uninterrupted Head Coach)

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Games Finalsの出場経験を持つ世界レベルの競技者です。

CrossFitはランニング、持久力、筋力、体操競技、ウェイトリフティングなど、あらゆる身体能力が求められる競技であり、その中で世界トップレベルに到達した日本人選手の一人です。

現在は、自身がオーナー兼ヘッドコーチを務めるCrossFit Uninterrupted(UFIT)を運営し、競技者から一般の方まで幅広く指導しています。また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして活動しています。HYROXはランニングの経験がない中も大阪大会で3位、日本人選手2位に輝きました。

選手として世界レベルを経験し、コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

トニーコーチから一言:

「ファーマーズキャリーは、僕自身も最初は少し休める種目かなと思っていました。でも実際にレースでやってみると、ここまでに走って、いろいろな種目を終えているので、かなり辛かったです。大切なのは重さに慣れておくことと、限界まで握り続けないことです。握力が完全に終わる前に一度置いて、少し回復させてからまた進む。ペナルティを過度に心配するより、200mを安定してクリアする準備をしておくことが大切だと思います。」

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