ハイロックス大会:ソロ・シングル部門攻略法

カテゴリー:大会攻略|Vol.20

HYROXのシングル部門は、最も分かりやすく、最もごまかしが効かないカテゴリーです。

1kmランを8回。

ファンクショナル種目を8つ。

すべてを自分ひとりで行います。

ダブルスのように種目を分担することはできません。

リレーのように一部だけ担当することもできません。

つまり、ランも、スキーエルゴも、スレッドも、バーピーも、ローイングも、キャリーも、ランジも、ウォールボールも、全部自分で処理する必要があります。

トニーコーチがHYROXで大切にしている考え方は、「全部できること」「穴がないこと」です。

シングル部門は、この考え方が最も強く出るカテゴリーです。

ランが速くても、スレッドで止まればタイムは落ちます。

CrossFit経験者でファンクショナル種目が強くても、8本の1kmランで落ち続ければ全体タイムは伸びません。

シングル部門では、得意なところで大きく勝つより、苦手なところで大きく負けないことが重要です。

この記事では、HYROXシングル部門でタイムを縮めるための考え方、ペース配分、種目ごとの戦略、練習法を、トニーコーチの視点をもとに整理します。

▶ トニーコーチのHYROXシングル攻略動画を見る


目次


HYROXシングル部門とは?

HYROXのシングル部門は、ひとりでレース全体を行うカテゴリーです。

内容は、1kmランとファンクショナル種目を交互に8回繰り返す構成です。

順番は以下の通りです。

  1. 1km Run
  2. SkiErg
  3. 1km Run
  4. Sled Push
  5. 1km Run
  6. Sled Pull
  7. 1km Run
  8. Burpee Broad Jump
  9. 1km Run
  10. Row
  11. 1km Run
  12. Farmers Carry
  13. 1km Run
  14. Sandbag Lunges
  15. 1km Run
  16. Wall Balls

日本語で言うと、1kmラン、スキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールを、すべて自分ひとりで行います。

シングル部門の難しさは、休める場所が少ないことです。

ダブルスなら、ファンクショナル種目を相手と分担できます。

リレーなら、自分が担当する範囲が限られます。

しかし、シングルでは全部自分です。

だからこそ、最初から最後までペース配分が重要になります。

関連記事:HYROXとはどんなスポーツ?


シングルは「全部自分でやる」カテゴリー

シングル部門では、得意な種目だけで勝負することができません。

ランが得意でも、スレッドプッシュやスレッドプルで止まれば、そこでタイムを失います。

スレッドやウォールボールが得意でも、8本のランで毎回落ちれば、全体タイムは伸びません。

トニーコーチが言う「穴がないこと」は、シングル部門では特に重要です。

シングルでは、自分の弱点がそのままレースタイムに出ます。

ランが弱ければ、8回出ます。

握力が弱ければ、ファーマーズキャリーで出ます。

脚の筋持久力が弱ければ、サンドバッグランジとウォールボールで出ます。

スクワットの深さが甘ければ、ウォールボールでノーレップになります。

つまり、シングル部門の攻略は「何か1つを尖らせる」だけでは足りません。

大きな穴を作らない準備が必要です。


最初のランを飛ばしすぎない

シングル部門で最初に注意したいのが、1本目のランです。

スタート直後は気持ちが上がります。

周りの選手も速く見えます。

自分もついていきたくなります。

しかし、シングルではここで飛ばしすぎると危険です。

最初の1kmを速く走っても、その後にスキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプルが待っています。

特にスレッド系は前半の大きな山場です。

最初のランで心拍を上げすぎると、スレッドで脚が重くなり、その後のランにも影響します。

トニーコーチの考え方に沿うなら、最初のランは「勝負をかける場所」ではなく、「レースの流れに入る場所」です。

呼吸に少し余裕がある。

脚が軽く動いている。

スキーエルゴに落ち着いて入れる。

この状態を作ることが大切です。

シングルでは、最初に数秒稼ぐより、後半で数分失わないことの方が大切です。


得意種目で出し切らない

シングル部門では、得意種目で攻めすぎないことも重要です。

CrossFit経験者なら、スキーエルゴ、ローイング、ウォールボールが得意かもしれません。

ランナーなら、1kmランで周りを抜きたくなるかもしれません。

筋力が強い人なら、スレッドやキャリーで一気に進めたくなるかもしれません。

しかし、HYROXは次があります。

その種目で出し切った後、また走らなければいけません。

さらに次の種目もあります。

トニーコーチの配分の考え方は、「その種目だけで終わらせない」ことです。

種目を速く終えることは大切です。

ただし、次のランに入れないほど出し切ってしまうと、全体では遅くなります。

シングルでは、得意種目で勝つより、得意種目で余裕を作る。

その余裕を次のランや後半に残す。

この考え方が大切です。


ファンクショナル種目は、次のランに影響を出さないペースで行う

トニーコーチがシングル部門の攻略で強調している重要な考え方があります。

それは、ファンクショナルワークアウトで頑張りすぎて、次のランに影響を出してはいけないということです。

HYROXでは、ファンクショナル種目はそれぞれ単独で終わるものではありません。

スキーエルゴが終わったら、また走ります。

スレッドプッシュが終わったら、また走ります。

スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジが終わっても、また走ります。

つまり、ファンクショナル種目は、ランとランの間にある“障害物”のようなものです。

そこで全力を出し切ってしまうと、次のランが遅くなります。

特にランが苦手な人ほど、ここを間違えやすいです。

ランが苦手だからこそ、得意なファンクショナル種目で頑張って取り返そうとします。

しかし、そこで頑張りすぎると、もともと苦手なランがさらに遅くなってしまいます。

トニーコーチの考え方では、シングル部門で大切なのは「各種目を全力でやること」ではありません。

大切なのは、次のランに戻れるペースでファンクショナル種目を終えることです。

たとえば、スレッドプッシュで脚を使い切らない。

ローイングで腕を使いすぎない。

ファーマーズキャリーで握力が完全に終わる前に置く。

ウォールボールで最初から大きなセットを狙いすぎない。

このすべては、次の動きに影響を出さないための配分です。

シングル部門では、誰も代わってくれません。

だからこそ、ファンクショナル種目を「頑張る場所」と考えすぎず、「次のランにつなげる場所」として考えることが重要です。


前半のスレッドで脚を使い切らない

HYROXシングルの前半で大きな山場になるのが、スレッドプッシュとスレッドプルです。

トニーコーチも、スレッド系は前半で疲労がかなり大きい種目だと話しています。

スレッドプッシュでは、脚で地面を押しながら重いスレッドを進めます。

ここで脚を使い切ると、その後のラン、スレッドプル、バーピーブロードジャンプに響きます。

スレッドプルでは、ロープを持っているので腕で引きたくなります。

しかし、トニーコーチは「腕ではなく足で引く」ことを強調しています。

2mのステーション内で、足で床を押し、自分の体を後ろへ移動させる。

その力でスレッドを引く。

この動きができると、腕や腰への負担を減らしやすくなります。

シングルでは、スレッドで頑張りすぎると、その後のすべてを自分で背負うことになります。

前半のスレッドは、強く行く必要はありますが、出し切る場所ではありません。

関連記事:HYROX種目②スレッドプッシュ攻略法

関連記事:HYROX種目③スレッドプル攻略法


中盤はリズムを守る

中盤のポイントは、バーピーブロードジャンプとローイングです。

バーピーブロードジャンプは、心拍がかなり上がる種目です。

大きく跳びすぎると、脚と心肺を一気に使います。

小さすぎると、回数が増えて時間がかかります。

シングルでは、自分が最後まで続けられるジャンプ幅とリズムを作ることが大切です。

ローイングは、バーピーブロードジャンプの後に出てくるため、呼吸を整えながら進めたい種目です。

ただし、完全な休憩ではありません。

脚で押し、体幹で力を伝え、最後に腕で引く。

フォームを崩さず、次のランとファーマーズキャリーへつなげます。

中盤で大切なのは、焦らないことです。

ここでリズムを守れれば、後半のキャリー、ランジ、ウォールボールに入りやすくなります。

関連記事:HYROX種目④バーピーブロードジャンプ攻略法

関連記事:HYROX種目⑤ローイング攻略法


後半は完全に止まる前に短く休む

HYROXシングルの後半は、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールが大きなポイントになります。

この3つは、疲労がかなり溜まった状態で出てきます。

ファーマーズキャリーでは、握力が完全に終わる前に短く置くことが大切です。

トニーコーチも、限界まで持ち続けると握力が本当にやられてしまい、次に持てなくなると話しています。

サンドバッグランジでは、下で休まず立って休みます。

しゃがんだ姿勢で止まると、脚に負荷がかかり続けます。

一度しっかり立って、そこで呼吸を整える方が現実的です。

ウォールボールでは、疲れがたまる前に少なめで休みます。

初心者なら5回ずつでも構いません。

トニーコーチも、5回やって1呼吸か2呼吸だけ置き、またすぐ5回やるような分け方が、結果的に早く終わることがあると説明しています。

シングル後半では、「止まらない」ことよりも、「止まりすぎない」ことが大切です。


ウォールボールは早めに割る

シングル部門で最後に待っているのが、ウォールボール100回です。

ここまでに8kmを走り、7種目を終えています。

つまり、ウォールボールに入る時点で、脚も心肺もかなり疲れています。

トニーコーチ自身も、CrossFitでウォールボールをやり込んでいたにもかかわらず、HYROX本番の最後のウォールボールはかなりしんどかったと話しています。

ここで大きなセットにこだわる必要はありません。

重要なのは、ノーレップを出さずに100回を積み上げることです。

疲れてくると、スクワットが浅くなります。

ボールがターゲットに届かなくなります。

ノーレップが増えると、体力的にも精神的にもきつくなります。

だから、疲れが溜まり切る前に早めに割ります。

5回、10回、15回など、自分が確実にできる回数で区切ります。

シングルのウォールボールは、最後の我慢比べではありますが、雑に我慢する種目ではありません。

確実にしゃがむ。

ターゲットに当てる。

短く休む。

また再開する。

この繰り返しで100回を終えることが大切です。

関連記事:HYROX種目⑧ウォールボール攻略法


シングル向けラン練習

シングル部門では、ラン練習が非常に重要です。

HYROXでは1kmランを8回行います。

ただ8kmを走るだけではなく、種目の後に何度も走り直します。

そのため、シングル向けのラン練習では、次の3つを作りたいです。

  • ゆっくり長く走るベース
  • 1kmを安定して走る力
  • 疲れた状態で走り直す力

メニュー例① ゆっくりジョグ

  • 30〜60分
  • 会話できるくらいのペース
  • 目的:ランの土台作り

メニュー例② 1kmインターバル

  • 1km × 4〜6本
  • レスト:1〜2分ジョグ
  • 目的:HYROXの1kmランに慣れる

メニュー例③ 種目後ラン

  • バーピー1分 → 1kmラン
  • スクワット30回 → 1kmラン
  • ランジ20〜30歩 → 1kmラン

シングルでは、疲れた状態でのランが何度も出てきます。

単体のランだけでなく、種目後に走る練習を少しずつ入れていきましょう。

関連記事:HYROX向けラントレーニング|CrossFit経験者が走力を上げる方法


シングル向けファンクショナル練習

シングルでは、ファンクショナル種目もすべて自分で行います。

そのため、各種目を単体で練習するだけでなく、組み合わせにも慣れておく必要があります。

ただし、最初から毎回フルHYROXのように追い込む必要はありません。

トニーコーチの考え方に沿うなら、まずは各種目の動きを正しく作り、その後でランと組み合わせます。

メニュー例① スレッド対策

  • スレッドプッシュ 12.5m × 4本
  • スレッドプル 12.5m × 4本
  • 目的:重さと動き方に慣れる

メニュー例② 後半対策

  • ファーマーズキャリー 50〜100m
  • サンドバッグランジ 25〜50m
  • ウォールボール 5〜10回 × 複数セット

メニュー例③ HYROXコンボ

  • 1kmラン
  • ローイング 500m
  • 1kmラン
  • ファーマーズキャリー 100m

目的は、ただきつい練習をすることではありません。

種目後に走れる状態を作ること。

疲れてもフォームを崩さないこと。

短く休んで再開する練習をすることです。


ランナーがシングルで注意すべきこと

ランナーがシングルに出る場合、ランは大きな武器になります。

しかし、ファンクショナル種目で大きく止まると、ランで作った差が消えてしまいます。

特に注意したいのは、スレッド、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールです。

ランナーは、脚が強くても、重いものを押す、引く、持つ、担ぐ、投げる動きに慣れていないことがあります。

シングルで大切なのは、ファンクショナル種目を完璧に得意にすることではありません。

大きく止まらないレベルまで準備することです。

  • スレッドプッシュで脚を使い切らない
  • スレッドプルは腕ではなく足で引く
  • ファーマーズキャリーの握力を準備する
  • サンドバッグランジはランジとして練習する
  • ウォールボールは5回ずつでも確実に積む

ランナーは、ファンクショナル種目で大きく崩れなければ、ランで強みを出しやすくなります。


CrossFit経験者がシングルで注意すべきこと

CrossFit経験者は、シングル部門で大きな強みを持っています。

スキーエルゴ、ローイング、ウォールボール、ランジ、キャリーなどに慣れている人も多いでしょう。

しかし、HYROXはCrossFitとは違います。

8本の1kmランがあります。

トニーコーチ自身も、CrossFitを長くやってきた中で、HYROXではランの重要性を強く感じたと話しています。

CrossFit経験者が注意したいのは、得意種目で攻めすぎることです。

スレッドで脚を使い切る。

ローイングで腕を使いすぎる。

ウォールボールで最初に大きく入りすぎる。

こうした判断が、後半のランに響きます。

シングルでは、ファンクショナル種目で勝つだけではなく、ランに戻れることが重要です。

得意種目は、出し切る場所ではなく、余裕を作る場所として使いましょう。


本番前に決めておくこと

シングル部門では、本番中にすべて自分で判断します。

疲れている状態で迷うと、判断が遅れます。

だからこそ、事前に大まかなルールを決めておくことが大切です。

  • 最初の1kmをどのくらい抑えるか
  • スレッドでどこまで一気に行くか
  • ファーマーズキャリーをどこで置くか
  • サンドバッグランジで休むなら必ず立つ
  • ウォールボールを何回ずつ分けるか
  • 補給ジェルをどこで取るか

完璧に予定通りにいかなくても構いません。

大切なのは、基準を持っておくことです。

基準があれば、本番で焦りにくくなります。


ウェアと補給の準備

シングル部門では、レースのすべてを自分で行います。

そのため、ウェア、シューズ、補給の小さなストレスも後半に響きます。

ウェアは、走れること、しゃがめること、ずれにくいこと、擦れにくいことが大切です。

トニーコーチもおすすめしているSA1NTのP1 Elite Compression Shortsは、HYROXのようにランとファンクショナル種目が混ざる競技と相性が良いアイテムです。

適度なコンプレッションで脚をサポートしながら、ラン、スレッド、バーピー、ランジ、ウォールボールのような大きな動きにも対応しやすい設計です。

また、P1 Eliteにはポケットがあるため、補給ジェルを1〜2個入れておくのにも便利です。

シングルでは、レース時間が1時間以上になる選手も多いため、後半の失速を防ぐために補給を考えておくと安心です。

本番で使うウェア、シューズ、補給は、必ず練習で試しておきましょう。

▶ トニーコーチおすすめ:SA1NT P1 Elite Compression Shortsを見る

関連記事:HYROXレース向けシューズ・ウェア・ギアの選び方


まとめ|シングルは「全部を自分でつなげる」レース

HYROXシングル部門は、最もシンプルで、最もごまかしが効かないカテゴリーです。

ランも、スレッドも、ローイングも、キャリーも、ランジも、ウォールボールも、すべて自分で行います。

だからこそ、最初から全力で行くのではなく、最後まで動き続ける配分が必要です。

最初のランを飛ばしすぎない。

得意種目で出し切らない。

スレッドで脚を使い切らない。

後半は完全に止まる前に短く休む。

ウォールボールは疲れがたまる前に早めに割る。

トニーコーチが話すように、HYROXでは「全部できること」「穴がないこと」が大切です。

シングル部門では、その考え方がそのまま結果に出ます。

得意種目で勝つより、苦手種目で大きく崩れない。

1つの種目で出し切るより、次のランと次の種目につなげる。

これが、HYROXシングル部門でタイムを縮めるための基本戦略です。


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この記事はSA1NT JAPAN編集部が作成し、CrossFit Uninterruptedヘッドコーチであり、HYROX競技にも挑戦している板谷友弘氏の監修を受けています。

監修

板谷友弘(UFIT Tony Coach / CrossFit Uninterrupted Head Coach)

板谷友弘コーチ UFIT Tony Coach

板谷友弘(いたや ともひろ)氏は、日本を代表するクロスフィットアスリートであり、世界最高峰の舞台であるCrossFit Games Finalsの出場経験を持つ世界レベルの競技者です。

CrossFitはランニング、持久力、筋力、体操競技、ウェイトリフティングなど、あらゆる身体能力が求められる競技であり、その中で世界トップレベルに到達した日本人選手の一人です。

現在は、自身がオーナー兼ヘッドコーチを務めるCrossFit Uninterrupted(UFIT)を運営し、競技者から一般の方まで幅広く指導しています。また近年はHYROX競技にも積極的に取り組み、CrossFitとHYROXの両方を深く理解する数少ない日本人コーチとして活動しています。HYROXはランニングの経験がない中も大阪大会で3位、日本人選手2位に輝きました。

選手として世界レベルを経験し、コーチとして数多くのアスリートを指導してきた経験を活かし、本記事の監修を担当しています。

トニーコーチから一言:

「シングルは全部自分でやるので、どこか1つで出し切ると後半に必ず響きます。最初のランを飛ばしすぎないこと、得意種目でも次のランに入れる余力を残すこと、後半は完全に止まる前に短く休むことが大切です。全部を大きく崩さずにつなげることが、シングルでタイムを縮める一番のポイントだと思います。」

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